まだ見ぬ波を求めて ~West Javaへの旅の記録~
ことが出来たら、おそらくその人はコアなサーファーだと思う。
インドネシア・ジャワ島西部、通称ウエストジャワ
への旅の記録。長編大作。
お時間あればお付き合いください。
DAY1&2
14時に自宅出発、成田へ。
目的地ジャワはちょうど満月。
満月と新月は、引力の影響で最も潮の干満差があり(日本でいう大潮)、
海が動き大きな波が打ち寄せるため、今回は満月に狙いを定めた。
準備は入念に。
⇒怪我対策・蚊の対策は必須です。
分身となるサーフボードも普段は使わない大波用を用意。
ここまでの準備は完璧。
18時55分 成田発 JALでジャカルタへ。
ジャカルタまでは空路約8時間。日本との時差は-2時間。
JALはシートピッチも広く、毎回軽いエコノミー症候群に悩まされる自分と
しては大変ありがたい。機内で日本語が使えるのもノンストレス。
音楽で気持ちを上げ、映画を見まくり。。。


ほぼ眠らず
現地時間深夜1時30分(日本時間3時30分)、ジャカルタ着。
ジャカルタはインドネシアの首都、人口1000万人近く、ジャワ島にある。
インドネシアは、スマトラ島、ジャワ島、バリ島などが有名だが、もとは
14000近い島からなる共和国。
そして世界最大のイスラム系国家。
観光でインドネシアに行くなら皆バリ島だろう。。。
ジャカルタに降り立った日本人はごく少数。
迎えの車に大荷物を押し込みここから更に陸路(悪路)5時間。
チマジャという小さな町を目指す。
運転はもちろん、東南アジア特有の
悶絶!絶叫!ノンストップフルスロットルバトルで。。。
もはやこのスピードとハンドルさばきとクラクション攻撃に何の違和感もない。。。
慣れって怖い・・・苦笑
ジャカルタ市内の高速を抜け、ガタガタ道を進み、山を越え川を渡りジャングルを抜け
身体が激しく前後左右に揺れ、お尻が浮き上がりながら結局あまり眠れず。。。
現地時間6時30分 (日本時間8時30分) ついに到着。
泊まる宿はこのエリアの一応中心拠点。
築20年らしい。。。古いがサーファーの宿などこの程度。
壁に這うたくさんのゲッコー(緑色のヤモリ)がお出迎え。
ゲッコーは部屋の壁にも普通にいるので爬虫類が苦手な人は、
インドネシア旅行は厳しい。。。
ちなみにこのゲッコーは、「幸せを呼ぶ神の化身」として
知られているので、ギャーギャー騒いだり、追い払ったりするのは
モラル違反です。
部屋の鍵を受取り、部屋に荷物を降ろし、すぐに波チェック。
ここからチマジャビーチまでは徒歩4分。
このジャングル感がいかにもジャワ。。。
獣道を抜けるといきなり海が開ける。
小走りで波チェック!
「・・・・」
「・・・・」

「うそ? 満月でしょ??」
そこに待っていたのは頭サイズの美しい波。
日本で考えれば極上の波。
ただ、飛行機で8時間、陸路5時間もかけて、
日本でも乗れる波に乗りにきたわけではない。。。
言葉を失う。。。苦笑
座り込んで友人とその場にいるとガイドが話かけてきた。
ガイド「今日は波、Baguse(最高)じゃナイネ。ホリデイだから人もManyネ」
私「もっといいとこ連れてってよ。。。」
ガイド 「Up to you (あなた次第)ネ!」
英語・日本語・インドネシア語がまじりあう会話で交渉し、滞在中フルケア
してもらうことに。(ちなみにこのガイドの実弟はバリの超有名なプロサーファー)
朝7時過ぎ。
私達はより大きな波を求めて移動を決定。
旅先では決断スピードも重要。天気や風、潮の動きで海は七変化する。
ここから車で1時間半ほど走ったサワルナというポイントを目指す。
5時間走った後に、更に1時間半ガタガタ道をぶっ飛ばす。。。
もう体が揺れ過ぎて何だか分からない・・・苦笑
気が付けば揺れに任せてお尻を浮き上がらせながら爆睡。。。
慣れって怖い・・・苦笑
着いたと起こされると、何やらざわついた場所。
海、見えないけど・・・
ここから吊り橋を渡らないといけないため、車はここまで。
原付バイクが寄ってきてその場で値段交渉(往復200円くらい)。
サーフボードを脇に抱え、バックパックを背負い、バイクの後ろで
更に10分程走る。
吊り橋は、幅1メートル程度。隙間だらけ。。。怖すぎる・・・。
すれ違う人がたくさんいるのにバイクは普通にクラクションを鳴らし暴走。。。
やっと遠目にビーチが見えてきた。
到着。ポイントの全貌が明らかに。
「・・・・」
私、全開でニヤニヤ・・・。
そこには圧巻の光景が待ち受けていた。
波のサイズはダブル(デカい)。。。
素晴らしいレフトの波が規則正しくブレイクしていく。
ただ海底はギザギザのリーフ(珊瑚とロック)
こすっただけでも多分アウト・・・。見るからに浅い・・・。
ワルン(休憩小屋兼屋台)に荷物を降ろし、バイクの兄ちゃんが
見張り番。彼らは帰るまで一緒にいる。
ガイドと一緒にすぐにパドルアウト。
乾いたリーフの上を着水ポイントまで歩かなければ
ならないが、とがっていてメチャクチャ痛い・・・。
ローカルサーファーの足裏は角質が厚く固いのでどんどん歩いていく。
サーフジャンキーの私、
足裏のひ弱さを露呈・・・苦笑。ホントに痛い。。。
蜂の巣状のとがったリーフ。出来ればお相手したくない。。。
海の中は、
インドネシアン、オージー、ジャパニーズの混合、7人くらい。
危険なシチュエーションとは裏腹に、海の中はとても和やか。
波に乗れる奴で順番に回す。
私は1本目からその波の質に惚れ込み、思うままにサーフィンする。
やりたい放題の波。
海底のギザギザリーフが透けて見えるが、
ぎりぎりの浅瀬までカービング主体に切り刻む。
気付けば3時間以上、徹底的にやり込み疲れ果てて上がる。
ローカルに
「トラディショナルシャワー」
と言われ、
連れてかれたのはただの井戸・・・。
バケツを放り込んで、衛生面を気にしながらも、ばっさばっさとかぶる。。。
ワルンでビンタンビールとインスタントのミゴレン。
波音を聞きながらうたた寝。
初回から最高の波ゲット。
夕方はチマジャに戻り、日暮れまでメローな気分でサーフィン。
まあ、チマジャも波は普通にいいんです。。。ハイ・・・。
放牧牛・・・。
昼間サワルナにいたオージーたちが話しかけてきて
そいつらと譲り合いながらまったりと波をシェアした。。。
夜は近所のレストランで。
食事できる場所は2か所のみ。
他に地元民が利用する屋台系の店があるが、
日本人は衛生面で無理だろう・・・。
イスラム圏なのでお酒は
ツーリスト向けの限られた店でしか飲めません。
必需品は徒歩10分近くにある
小さなスーパーマーケットが生命線。
ペットボトルの水、菓子類などを買い込む。
(缶コーヒーはBLACKでも甘いのが辛い・・・)
店の出口でコンビニあるようなコーヒーマシーンを
ふと見つける。。。
「やった!」
と思い、マシーンのふたを開けると、
アリの大群。。。
無言で若干のけ反るものの、カフェイン中毒の私。
甘くないコーヒーの誘惑に負け、30円払い、
アリをどけ、粉コーヒーに熱湯を注ぐ・・・苦笑
DAY3
5時30分起床。
というより4時くらいから大音量のコーランが町中に
響き渡り、寝ていられない・・・苦笑
甘い缶コーヒーは目覚めが悪い・・・。
開いてたら今日もアリコーヒーの店に寄ってもらおう。。。
今朝のチマジャは更にサイズダウン。ノーチェック。
外のフロント前で出発準備をしていると、夫婦で来ていた
2人が便乗依頼。快く引き受け、旅のメンツが4人に。
今日も目指すはサワルナ。ガタガタ道を突っ走る。
実はこの夫婦、
奥さんが泣く子も黙るトップアマだとか(存じ上げずスミマセン。。。)
千葉の大きな大会で優勝後に乗り込んできた!
今日は若干サイズを下げたが、波はオーバーヘッド。
すぐに入水。今日も私は絶好調。攻め込む。
乗り終えると、ワルンからヒューヒューと口笛を貰う。
一方、さすがトップアマ。
Tさん(妻)も同じポジションからガンガン波に乗る。
ここまでビビらず行けたらそうとなレベル。
男顔負け。本物です!
旦那さんは、沖の浅さにびっくりしながらも慎重に波を選んで乗っていた。
一度上がり、ワルンで食事。今日もインスタントのミゴレン。。。
夫婦は衛生上、食べたがらない・・・。旅先でお腹を壊すことが多いらしい。
でも空腹に負けて、旦那さん、
ミゴレンチャレンジ。
まあ、大丈夫。インスタントだし。。。食器の衛生面は、、、
知りません・・・。苦笑
ロータイドに差し掛かるとともに、海は誰もいなくなる。
でもいい波。。。絶対誘ってるだろ?おい・・・
見るからに浅いが、海の危険な誘いにのり、もう1ラウンド。
私の連れと、なんとTさんも付いてきた。。。
3人のみで海に入る。
岸寄りの水深は膝くらい。
沖のテイクオフポジションでも胸以下の水深しかない。。。
波はデカい。
でもひるんだら動作が遅れ危険なだけ。
行くと決めたら行く。
私は一切ためらわない。
ぎりぎりの水深のところまで自在に乗り込んでいく。
Tさん、1本目でテイクオフに失敗、リーフに叩きつけられ、
心が折れそうになったらしい。。。
でも再び沖へ。ただでは転ばない。さすがトップアマ。(痛々しい傷が・・・)
私の連れは数本のノルマを達成。早々に退散。
Tさんも納得のいくライディングが出来たと言って上がる。
1人になったが、すぐにシンガポール在住のニュージーランダーが入ってきて、
彼と沖でくちゃくちゃ喋りながらやっていた。
そんな私、
調子に乗りすぎて
行ってはいけないところまで乗り込んでしまい、
岸のリーフに叩きつけられ、背中を引きずられる。。。
同じ場所にいると次々と波を喰らって危険すぎるので、
安全な場所まで全力でパドル、そこでしばらくうなだれる。。。
気を取り直して沖に戻り、とどめの何本かの波に乗り、ニュージーランダーに
上がる事を告げる。彼も不安がってすぐに上がる。
このシチュエーションで一人は危険だ。
サーファーズスラングで、リーフで体に刻んだ傷のことを
「ライムタトゥ」
という。
インドネシアでは、
「オミヤゲ! オミヤゲネ~」
と言って笑われる。
リスクを背負って波に乗っている以上、
致命傷ではない傷のことなど
笑いのネタ
にしかならない。
でも最高のいい波に乗った。
気分上々、最高。
帰り際の夕暮時、皆の要望で安全なビーチブレイク(海底が砂)ポイント
をチェック。波が良くないので私はノーサーフ。
ガイドと史上最強のくだらない話で盛り上がる・・・。
(日本語・英語・インドネシア語のバトルロイヤルで・・・)
夜は、同じ店でゲッコーを眺めながらビンタンビールで乾杯。
そしてミゴレン。
もういいだろ、、、ミゴレン・・・。苦笑
DAY4
5時半起床。
今日も4人で。
ガイドの提案で今日はシークレットポイントへ。
まずは車で30分程度、小さな漁村に到着。
ここからアウトリガーのような船に乗り換える。
出航後、更に船で1時間くらい揺られる。
島に沿って突き進む。。
島は手つかずの自然。
ジャングル。
道などない。。。
ガイドが
「Oh ~ !!!」
大声で指をさす。
着いたらしいが、波のサイズもよく分からない。
既に1隻の船が到着している。一部のオージーたちだ。
実際にサーファーが入ると正確な波のサイズが分かる。。。
デカいかも・・・笑
私は一番長い板をセットアップ。
インサイドはやはりギザギザのリーフ。
浅そうだ。。。
ジャングルを従えて、船から飛び込み波に乗る。
ワイルドウェストジャワ。
この旅のハイライト。
岸寄りはバレル(チューブ)になる波。
私は、沖から波を乗継ぎ、タイミングを合わせて高速バレルに
突っ込んでいく。
バレルを抜けると勝手にガッツポーズと雄たけびが。。。
44歳オッサン、異国の地で狂喜乱舞・・・苦笑。
途中、バレルに潰されもみくちゃになっていると、
「あれっ??」
足が軽い。。。引っ張られない。
水面に出て、
「あー、折った~!」
板が折れたと思い、リーシュコードを引き寄せると、
折れたのではなく、リーシュコードが切れていた。。。
板は、遠く波打ち際まで流され・・・。
私、
問答無用で泳いで岸に行き、ドライリーフに打ち上げられた
板を取りに行くはめに。。。
足裏の弱さ、再び露呈(苦笑)。
よちよち歩き。。時々四つん這い。。。苦笑
幸い、板は無傷。リーシュコードを変え再びサーフィン。
強度のあるリーシュが切れる。これぞワールドクオリティ。
バレルをゲットした私はそれでも上機嫌。
船上で昼食休憩。
今日は、ガイド持参のナシゴレン。
私、
ついにミゴレンの呪縛から解放される・・・笑。
米パワーをもらいもう1ラウンド。
貸切の海で4人とガイドで。
最高に楽しかった。
2ラウンドをきっちり終え、帰港。
夕方に宿到着。
最終ラウンドは軽めにチマジャセッション。
実質今日が最終日。
悲しい・・・。
私たちが最終日なのでガイドたちに
BBQやろうと誘われたが夫婦チームなど衛生面で不安ありで
レストランに変更。
ビンタンで乾杯。
ガイドに感謝を込めて御馳走する。
締めの食事。
結局ミゴレン。。。(人生でこんなにミゴレンを食べることはもうない)
お土産屋などは皆無。
体に刻んだオミヤゲこそすべて。
ひるまず勝負した勲章とする。
宿に戻り身支度。
出発は22時。
ガイドたちと連絡を交換。ハグをして別れを惜しむ。
夫婦チームとも再会を約束。
トップアマとサーフィン出来て光栄でした!
3日間フルでサポートしてくれたガイドのOTOYさん、
金勘定は毎回ごまかしてポケットに入れようとするけど、
憎めないいい奴だった!ありがとう!
波・仲間・人々ともにバーグーース!な旅だった!
ありがとうウエストジャワ!
お約束のように30分以上車が遅れて出発。
疲れ果て車に乗り込んだ記憶すらない。。。
DAY5
2時30分 ジャカルタ空港着。
まだ空港ゲートなど開いていない。
人もまばら。
飛行機の出発時間は 6時50分・・・。
「早えよ・・・」
そんな私達。。。
重い荷物を引きずりながら、そそくさと空港入口付近のベンチを数台確保。
速攻寝る。
貴重品だけは抱きしめて・・・(笑)
16時30分 成田着
無事に今回の旅をメイク。
今回の目的は、
「いい歳しても攻める」
目標はクリアできた。
そしてまだ全然やれることを自ら証明した。
2011年の大震災。
積みあがる瓦礫の山々を目の当たりして以来、私の価値観は180℃変わった。
モノや金、そして健康だって失う時は一瞬だ。
でも経験だけは、自身の記憶の中にて生き続ける。
そしてそれは、己の人格さえも形成する。
今回もたくさんの事を学ばせて頂きました。
関わって下さったすべての方々に感謝します。
どこまでデカい波と格闘できるかはよく分かりませんが、
これからも出来る限りやってやろうと思います。
ここまでお付き合い頂きありがとうございます。
皆様も良い旅を!
帰国後。。。
真っ先にそばを食べた私。。
「やっぱり麺かよ・・・苦笑」





















