読書時間：9.0h
一読：あり
再読：なし（長い）
R指定：なし
著者：渡辺京二
刊行：2005年9月
価格：1900円＋税
出版：平凡社

異邦人の文献をもとに、江戸末期から明治時代の日本を描く

ある文明の幻影
陽気な人々
簡素とゆたかさ
親和と礼節
雑多と充溢
労働と身体
自由と身分
裸体と性
女性の位相
子供の楽園
風景とコスモス
生類とコスモス
信仰と祭
心の垣根

江戸末期に日本を訪れた異邦人らは、日本をユートピアと表現した。
楽しく暮らしている人々が印象的だったようだ。

下級者からみれば、異邦人は役人と同じ上級者なので、礼節をわきまえるところだが、当時の日本人は違ったようだ。
茶屋に寄ろうものなら人だかりができて、話しかけてくる。
無邪気といえばそうだが、イザベラ・バードは、はしたなさ、厚かましさは、無神経の域に達することがあったという。

火事と喧嘩は江戸の花と言われるくらいだから、街で笑いが絶えないというのは信じがたいが、ぼんやり見えてきた。
納期とかノルマとか、何かに追われるようなものが何もない。

籠を担ぐ順番を間違えても「おめぇ今度は前だろう？間違えてるやん、あっはっは～」のように、笑ってチャラにする寛容さがある。
杙打ち作業では紐で杙を引っ張るときに労働歌を唄う。エドワード・シルヴェスター・モースは、杙打ち作業の10分の9は歌を唄うのに費やされていたという。
納期に間に合うか気になってしまうところだが、遅れても気にしないか、あってないような納期だったのかもしれない。

何かに追われない理由の一つに、生活費もある。
都会 2円75銭/月、農村 20円/年で足りていたらしい。現在の10000円程度
本書に価値の記載はないが、異国の人が「安っ！」と感じるくらいの金額だったことは間違いない。

バジル・ホール・チェンバレンが「貧乏人は存在するが、貧困なるものは存在しない」と表現するように、稼げない人もとりあえず食えていた。
ほんの一例だが、頭の弱い人にも寛容な記述もある。

なんと寛容な．．江戸の寛容さに惚れました。

ジェンダーレスの日本史　古典で知る驚きの性

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性犯罪は泣き寝入りのことが多かったし、著者の言うようにダークサイドはある。
それでも江戸時代を見てみたいと思うのは、誰でも受け入れてくれそうな寛容さを体感してみたいから。
自分にも実利主義的西欧産業社会に在ることの疲労感があるのかも

逝きし世の面影