#001
パーティーは進み、ホール横のステージでは、宮廷楽団が上流階級で流行している古代の音楽を優雅に演奏し始めている。普段であれば心地よく聴き入るクルーマリ皇女であるが、今は、賓客たちの注意が多少自分からそれたのをありがたがらずにいられなかった。
「ちょっと失礼いたしますわ」
クルーマリは会話がひと段落着いた諸侯の一人に会釈すると、周りの人々にも軽く会釈しながら、ホールの出口までの長い道のりを進んでゆく。
途中で話しかけられる度に立ち止まり、笑顔で挨拶をしている彼女の額の汗はますます目立つようになってきた。気づいた者は少数だったが、踝までの豪華なロングスカートの中では、彼女は卵のような膝小僧がしきりに擦りあわされていた。
彼女は、出口に控える礼服姿の近衛兵がかしこまろうとするのを軽くたしなめる。恭しく開けてもらった扉をくぐり、背後でそれが閉められると、ホールの喧騒と音楽は突然彼方に追いやられた。
廊下には幸運なことに人気はない。クルーマリは一瞬緊張がほぐれて行くのを感じたが、すぐさまそれどころではないことを思い出す。
『ああ…っ オシッコしたい!』
パーティーが始まった頃から、彼女はオシッコがしたくて仕方が無かったのだ。普段はそれほどトイレが近いわけではないが、今日の尿意は異常に切迫していた。今まで少々酒精の入った飲み物でも、ここまでの尿意を催すことはなかったのに。
艶やかに黒光りする強化繊維入炭素製の床の上で、彼女のピンヒールの音があわただしく反響してゆく。彼女が目指すのは廊下の先をさらに曲がったところにある、専用の控え室だ。
ホール内にも、化粧直しができる豪華なパウダールームとトイレは用意されているのだが、クルーマリはそこで用を足す気になれなかった。他人の使ったトイレを使うのが嫌なわけではなく、人々の注目を集めながらトイレに入ってゆき、パウダールームで貴婦人たちに挨拶をし、個室に入ってゆく自分の姿を想像すると、顔から火が出るほど恥ずかしいのだった。
『あら、クルーマリ姫、あんなにあわてて、よっぽど我慢してたのね』
『ほら、あんなにお尻をクネクネさせて。 もう漏れそうなのよ、きっと』
『あれだけ可愛いんですもの、殿方も中々離してくれなくってよ』
単なる妄想なのは自分でも分かっている。なぜか不安で仕方がない。自分が扉を1枚隔てたところでお尻を丸出しにし、勢いよくオシッコしているところを、外で待っている貴婦人たちが想像しているに違いないと思ってしまうのだ。
『普段はあんなにお上品なのに、まあはしたないこと』
『ほら、聞いてよあの音。 すごい溜まってたみたいね』
『あの勢いだと、便器の外まではみ出しちゃってるんじゃない?』
廊下を小走りに走りながらも、自分の尿意が人々に悟られていなかったかどうかが気になっていた。スカートの上から切迫した箇所を押さえながら、どうにか彼女は廊下を曲がってゆく。
普段は社交的であまり物怖じしないクルーマリ皇女だが、なぜか排泄に関しては子供の頃から敏感で、人一倍羞恥心が強かった。思春期と言うには少し早い時期から、彼女の興味と羞恥は非常に強いものになっていた。
ようやくのことで控え室にたどり着く。転がり込みたいのを精神力で押さえ込み、扉横の指紋認証、眼球認証で扉のロックを解除する。必死に平生を装って扉を開けると、中では子供の頃から友達のように育った、メイドのリーニャが迎えてくれた。
「姫様、どうされました? 顔色が悪いですね。ご気分がすぐれないのですか?」
取り繕っていても、さすがに普段から世話をしているリーニャには分かってしまうようだった。崩壊しそうな膀胱をかばっているクルーマリは、コクコクとうなずくのが精一杯であった。
「ちょっと失礼いたしますわ」
クルーマリは会話がひと段落着いた諸侯の一人に会釈すると、周りの人々にも軽く会釈しながら、ホールの出口までの長い道のりを進んでゆく。
途中で話しかけられる度に立ち止まり、笑顔で挨拶をしている彼女の額の汗はますます目立つようになってきた。気づいた者は少数だったが、踝までの豪華なロングスカートの中では、彼女は卵のような膝小僧がしきりに擦りあわされていた。
彼女は、出口に控える礼服姿の近衛兵がかしこまろうとするのを軽くたしなめる。恭しく開けてもらった扉をくぐり、背後でそれが閉められると、ホールの喧騒と音楽は突然彼方に追いやられた。
廊下には幸運なことに人気はない。クルーマリは一瞬緊張がほぐれて行くのを感じたが、すぐさまそれどころではないことを思い出す。
『ああ…っ オシッコしたい!』
パーティーが始まった頃から、彼女はオシッコがしたくて仕方が無かったのだ。普段はそれほどトイレが近いわけではないが、今日の尿意は異常に切迫していた。今まで少々酒精の入った飲み物でも、ここまでの尿意を催すことはなかったのに。
艶やかに黒光りする強化繊維入炭素製の床の上で、彼女のピンヒールの音があわただしく反響してゆく。彼女が目指すのは廊下の先をさらに曲がったところにある、専用の控え室だ。
ホール内にも、化粧直しができる豪華なパウダールームとトイレは用意されているのだが、クルーマリはそこで用を足す気になれなかった。他人の使ったトイレを使うのが嫌なわけではなく、人々の注目を集めながらトイレに入ってゆき、パウダールームで貴婦人たちに挨拶をし、個室に入ってゆく自分の姿を想像すると、顔から火が出るほど恥ずかしいのだった。
『あら、クルーマリ姫、あんなにあわてて、よっぽど我慢してたのね』
『ほら、あんなにお尻をクネクネさせて。 もう漏れそうなのよ、きっと』
『あれだけ可愛いんですもの、殿方も中々離してくれなくってよ』
単なる妄想なのは自分でも分かっている。なぜか不安で仕方がない。自分が扉を1枚隔てたところでお尻を丸出しにし、勢いよくオシッコしているところを、外で待っている貴婦人たちが想像しているに違いないと思ってしまうのだ。
『普段はあんなにお上品なのに、まあはしたないこと』
『ほら、聞いてよあの音。 すごい溜まってたみたいね』
『あの勢いだと、便器の外まではみ出しちゃってるんじゃない?』
廊下を小走りに走りながらも、自分の尿意が人々に悟られていなかったかどうかが気になっていた。スカートの上から切迫した箇所を押さえながら、どうにか彼女は廊下を曲がってゆく。
普段は社交的であまり物怖じしないクルーマリ皇女だが、なぜか排泄に関しては子供の頃から敏感で、人一倍羞恥心が強かった。思春期と言うには少し早い時期から、彼女の興味と羞恥は非常に強いものになっていた。
ようやくのことで控え室にたどり着く。転がり込みたいのを精神力で押さえ込み、扉横の指紋認証、眼球認証で扉のロックを解除する。必死に平生を装って扉を開けると、中では子供の頃から友達のように育った、メイドのリーニャが迎えてくれた。
「姫様、どうされました? 顔色が悪いですね。ご気分がすぐれないのですか?」
取り繕っていても、さすがに普段から世話をしているリーニャには分かってしまうようだった。崩壊しそうな膀胱をかばっているクルーマリは、コクコクとうなずくのが精一杯であった。