電力不足は「DR」で解消できる、奇妙な政府・関電の“試算”
村上憲郎のグローバル羅針盤(35)
2012/5/8 7:00 日本経済新聞web刊


村上憲郎(むらかみ・のりお)
元グーグル日本法人社長兼米本社副社長
1947年大分県佐伯市生まれ。70年京都大工学部卒。日立電子、日本ディジタル・イクイップメント(DEC)をへて、米インフォミックス、ノーザンテレコムの日本法人社長などを歴任。2003年から08年までグーグル日本社長を務める。

5日、日本国内の商業用原子力発電所のすべてが停止し、過去42年間で初めて「稼働原発ゼロ」となる事態に陥った。いよいよ夏に向けて電力需給逼迫が懸念されるなか、先週4日、大阪府市の特別参与を仰せつかっている私も委員を務める「大阪府市エネルギー戦略会議(第8回)」が開催された。

今回は、4月10日に開かれた第6回の会議で関西電力が4月末までに提出すると約束した「原発再稼働なしで、今夏の電力需給逼迫を乗り切る計画」が聞けるはずだった。

だが、読者の皆さんもすでにニュースなどでご存じのように、残念ながらそれを聞くことはできなかった。それどころか、4月10日の会議の直後に政府が再稼働を決定した、関西電力大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)の、その2機の合計発電総量236万キロワットをはるかに上回る「495万KWが不足する」という報告がなされたのだ。

 これは、誠に奇妙な話である。政府の(大飯原発3、4号機の)再稼働決定の理由は「今夏の電力需給が逼迫しているから」だった。ところが、関西電力が今回提出した需給見通しでは、前述したように、再稼働して得られる電力の2倍以上が足りないので、結局、再稼働しても足りないというのである。

 自分で言うのは適切ではないと思うが、ここは、言ったほうが良いと思うので、あえて言及させてもらう。私は、人が何か秘めた悪意を持ってことを進めようとしているといった風には、考えないタイプの人間である。その私が、今回だけは、この成り行きにある奇妙さを感じているということを、公にしておきたい。

・・・中略

一連の事態を想定していた私は、大阪府市エネルギー戦略会議の第3回の「DRの導入」、第4回の「メガワット+ネガワット取引市場の創設」をより具体化した提案を第8回の会議で行った。

 結論だけをいうと、この提案を実行すれば、現在、関西電力が「495万キロワットが不足する」としている今夏の電力需給は、「278万キロワットの余裕」に転じることができるという提案である。

 本来は、関西電力から同様のDR実施提案(原案)が示され、それに対して、私が対案をぶつけて議論を展開し、双方納得できる最終案にたどり着き、その後は、時々刻々と迫りくる夏に向けて、一丸となって危機を乗り切る準備作業を始めたかった。
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ね、関西電力と民主党の謀略だということがわかったでしょ?