Sは女とペルー料理を食べていた。

「ペルー料理って多分一番スペイン料理の影響を受けてるんじゃないかな」

Sはいつものように軽い蘊蓄を語っていた。
女は微笑みながら聞いている。

大陸に渡ってきたスペイン人、奴隷として連れてこられた黒人、移民で渡って来た日本人、そして先住民。さまざまな民族の多様性を受け入れながら、この国の料理は独特の成長を遂げて来た。

おそらく一品づつに壮絶な民族間の闘いの歴史が眠っている。
それをSと女は順に口に入れていく。

「私は食わず嫌いなの」
「そーだね。でもこれから色々挑戦しような」

女は自分でも気づかないうちに少しづつ成長している。
料理という歴史の延長線上にある「物語」を口にしながら、女の顔は少しづつ美しくなっていく。
二人の物語と料理の物語が少しづつ重なり合っていく。
二人で新たな食に出会うとはそういうことだとSは思っていた。