2012年7月。パイパーエアクラフト社(アメリカ)の軽飛行機は、カナダのバーノン空港を飛び立ちました。しかし、離陸後ほどなくして、近くの運動場に墜落。残念ながらパイロットと乗客の二人は、帰らぬ人となりました。
この事故の原因とされたのが、高温でした。事故当時、気温は33度まで上がっていたのです。
昨日、同じくパイパーエアクラフト社の軽飛行機が、調布市の民家に墜落・炎上。パイロットと乗客、そして墜落した家に住む女性の計3名が亡くなるという、痛ましい事故となりました。亡くなった女性は、今月この家に引っ越しをしてきたばかりだと聞き、とても胸が痛みました。
この軽飛行機に何があったかはまだ明らかになっていませんが、猛暑が墜落の一因であったことは、否めないと思います。現場に近い府中の温度計は、事故が起きた午前11時で33度を示していました。
高温であると、航空機にどのような影響が出るのか。
気温が高いと、空気密度が小さくなります。航空機は、空気を押し出す力で上空に上がるので、気温が高く空気密度が低いと、押し出す力が小さくなり、なかなか上昇しにくくなります。
また、湿度が高いことも影響します。水蒸気をたくさん含んでいる空気の場合は、さらに空気密度が小さくなるのです。それは、空気に含まれる水分子の方が、窒素や酸素といった気体よりもずっと軽いからです。つまり、昨日の高温多湿な環境は、航空機の飛行には悪条件であったと言えます。
高温の時、航空機はどのような対策を講じるのか。
悪条件下でも飛行するためには、離陸までの助走距離を長くすることが必要です。つまり、思いっきり助走をつけるのです。例えば、気温が軽く45度を超えるような砂漠に位置するドバイ国際空港は、他の空港よりも滑走路が長く、約4500mもあります。成田空港は4,000mです。
ちなみに、世界一滑走路が長いのが中国のチベット自治区にあるチャンムド・バンダ空港の5,500mです。ここは暑さではなく、高度が4000mと高く、空気密度が低いため、長く作られています。
こうした暑さに慣れている空港なら、滑走路を長くしたりと、工夫で事故を回避することができます。しかし、なかなか気温の上がらない場所では、そうもいきません。
滑走路が短い所ではどうするのか?
ロンドンシティ空港は、とりわけ高温が原因の事故が起こりやすい場所です。夏でもたいてい、最高気温が20度ほどなので、滑走路を長くする必要がないのです。
しかし、2013年は、異例の熱波となりました。そこで、航空会社は、乗客をおろすなど、機体を軽くすることで対策を行いました。
今回の軽飛行機には、定員6名のところ、大人の男性5名が搭乗。またガソリン満タンであったことから、かなりの重さであったと言えます。
機体が重く、気象が高温多湿であったなど、悪条件が重なったことが一因と言えるでしょう。
亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。
参考文献
http://leehamnews.com/2015/06/12/bjorns-corner-hot-competition-in-middle-east/
http://www.physlink.com/Education/AskExperts/ae652.cfm
http://globalnews.ca/news/316705/pilot-error-weather-may-have-caused-fatal-plane-crash/