週末パキスタンの最大都市カラチに熱波が襲い、少なくとも224名が亡くなりました(情報元:BBC)。特に土曜日は、今年最高気温となる45℃を記録。これは15年ぶりに最も高い気温となりました。実はカラチは平年6月が最も暑いのですが、それでも、最高気温の平均は33℃です。土曜日は、これよりも12度も上回り、異様な暑さに見舞われたことが分かります。
なぜこの時期が特に暑いのかと言うと、6月は雨季の前の最後の月だからです。本来ならば北半球では真夏に気温が高くなりますが、パキスタンでは7月から雨季なので、毎日のように雨に降られ、気温が下がります。このため、最も暑い月は6月となります。
下記の図が、現在のモンスーンの状況です(インド気象庁より)。インドのムンバイは、先週約一週間遅れで雨季に入りました。すでに、先週木曜から600ミリを越える大雨が降っています。
(緑の線以南がモンスーン入りしている場所。カラチは7月中旬頃。)
パキスタンはと言うと、例年だと7月に雨季に突入します。カラチは中旬頃。しかし、今年のモンスーンは、エルニーニョの影響で遅れるとの予想が出ています。
さて、パキスタンはこのモンスーンの季節を前に、危険な熱波に襲われることが度々あります。特にひどかったのが、2010年5月26日。パキスタン、及びアジアの過去最高気温となる、53.5℃を叩き出しました。遺跡で有名なモヘンジョダロでの記録です。このときの死者は18名と言われています。
しかし、今回、カラチでは40℃台の気温で220人以上と言う大勢の犠牲者が出ています。なぜなのでしょうか。
それは、カラチ周辺が人口が多いこともありますが、やはり、ラマダンの時期に熱波が到来したことが一番の要因と言えます。
ラマダンの期間は、食べ物のみならず、水も絶つのです。
私はラマダンの時に、たまたま(知らずに)アラブ首長国連邦のアブダビを旅したことがありますが、観光客ですら現地の人に配慮して、隠れて飲むように指示されました。
観光客も気を付けなければならないほど、断食は肉体的、そして精神的に相当な苦痛を与えることがあります。在パキスタン日本大使館のホームページにはこう書かれてあります。
<ラマダン期間中の注意事項等について>
ラマダン期間中の夕方頃はイフタール(日没後にとる食事)のため、家路を急ぐあまりスピードの出し過ぎ、注意力の散漫等が相まって、交通事故が多発する傾向にあります。更に、交通事故が発生した場合、双方の運転手はもとより、野次馬までもが異常な興奮状態に陥り、過去には集団で暴行を加えて死傷事件に発展したケースもありました。(中略)運転手を雇用している方は、運転手の精神状態、仕草、様子をよく観察し、興奮している場合には諫める必要があります。
また、ラマダン中には、交通事故のみならず、テロや一般犯罪が増加するとも書かれてあります。
こうした精神状態の中で、45度の熱波が襲ったのです。さらに悪いことに、暑さのため電力消費が集中し、停電が起き、屋内の気温の調整が行えなかったことも、被害を一層拡大させたと言えます。
ただ、月曜日からは気温が30℃台まで下がりました。今週は同じような気温のまま推移するようです。ひとまず、これ以上の事態の深刻化は免れそうです。
