ご近所の彼女からの手紙
先日、昨年度の打ち上げを兼ねて飲んだとき
隣に座って言葉を交わした彼女から、突然 手紙が届いた。
私の体を気遣ってのことと、末っ子の不登校について、優しい言葉が綴られていた。
末っ子は2学期の後半から突然学校に行きたがらなくなってしまった。
毎朝、行きたくないと言って、ベッドから出ようとしない。
理由を話していると、感情が高ぶるらしく、泣き叫ぶ。
「私は何もできない。良いところがひとつもないの!」
「皆は授業の答えが全部わかるけど、私はひとつもわからない」
「先生はがんばって、って言うけど、それは私ができてないからでしょ?」
「友達が今まで仲良しだったのに、無視するんだよ」
「行かない、行かない、学校には行かない!!」
いつからこんなに自分を卑下するようになってしまったんだろう。
彼女の感情が落ち着くまで待ってみたり
ときには、「人の話もきいてよ」と話しかけたり。
「ランドセルは嫌。リュックサックで学校に行きたい」 と言い出したので、
リュックを新調したり。
1時間遅れたり、2時間遅れたり。
あきらめることなく交渉して、とにかく毎日登校するようにした。
一緒に教室まで行くと、同じクラスの子供の反応はさまざま。
黙ったまま受け入れてくれる子供がいれば、「○○ちゃん」とそばに来てくれる子もいる。
そして私が一番気になったのは、そんな友達に対する彼女の態度だった。
「皆が私を無視する。イジメをするんだよ」
彼女がそう言ったとき、私はそれまでとは態度を変えた。
「どういうイジメをするの?」
「話しても、何も言わないで向こうに行っちゃう」
「皆が?」
「そう。皆が」
「そんなわけないでしょう」
彼女は私を黙って見ている。
「一緒に学校に行ったとき、友達が おはよう、って挨拶してくれたよね」
「あなたはなんて答えたの?」
「黙っていたよね」
「無視してるのは、あなたじゃないの?」
「友達は一人じゃない。あなたに優しくしてくれる子はいっぱいいるでしょ」
「もっと周りをよく見てごらん。そして、まずは挨拶してごらん」
「何もできないんじゃない。まずは、挨拶から」
「それをしても、まだイジメをするなら、そのときはお母さんに言いなさい」
彼女が自分で壁を作っているような気がしたのだ。
目の前のものだけを見ようとしている。
私は、うつむいている彼女の顔を上げてもらいたい、と思った。
彼女の良いところを繰り返し話しかけ、
勉強も、とことん付き合った。
そして少しずつ、彼女は正面を向きだして
ある日、「私、またランドセルで学校に行く」 と道具を入れ始めたのだ。
お酒の席で、その話を手紙の送り主は目を真っ赤にして聞いていた。
「あの丸々とした笑顔のあの子が、苦しんだんだね・・」
彼女のお子さんも、不登校の経験がある。
「よかったね。二人とも、がんばったね」
うん、がんばった。
がんばったけど、ちょっとチカラを使いすぎたかもしれない。
これからは少しのんびりしてね、と書かれてある手紙を読みながら、
私もひとりじゃないんだよね、としみじみ思った。
