こころを解く
母の知り合いが経営しているお店に行ったとき。
そこで働いている若い娘さんと、母が話していた。
その娘さんの父親は、すでに亡くなっていて
彼女は、母親をひとりにはさせたくない、自分が一生、母親の面倒をみていきます、と
ちょっと悲壮な感じだった。
「そうなの。一生懸命だね。えらいね。」
私の母は言った。
その言葉は、彼女にとっては聞きなれていた言葉だったのだろう。
何事もないように母の言葉を聞いていた。
普段は、そこで会話が途切れているのかもしれない。
だが、母は言 葉を続けた。
「ひとりで一生背負うのは大変なことだよ。あなたはまだまだ若い。
これから先、心の優しい男性をみつけて、ふたりでお母さんをみていけばいいんじゃない?」
すると、娘さんの目から涙があふれた。
泣きながら、彼女は言った。
「こんなに優しいことを言われたのは初めてです。」
気丈にしていても、どこかに無理をしていたのかもしれないね
帰り道、母はよかった、というようにつぶやいた。