キューピー人形
函館の実家にいくつか置いてある人形には
母の手作りの服が着せられている。
不器用で面倒くさがりの私とは正反対に
母は、なんでも手作りしてしまう女性なのだ。
「ねえねえ、おばあちゃん、ここにある人形、もらってもいい?」
末っ子が甘えてみた。
「いいよ。だけど、これだけはダメね。」
母は、古くなって色黒になってしまったキューピー人形を指差した。
そのキューピー人形は
私が小学生の頃、母の誕生日に贈ったもの。
私が思った以上に母はとても喜んで、以来三十数年、
いろいろな服を着せて飾ってくれているのだった。
子供の頃は、母がそれほどに感激して喜んでくれるのに
ちょっと戸惑いを感じたものだった。
だって、そんなに高価な品物ではないし。
でも、今なら わかる。
「大きな人形があったら、この余り生地で服を作って着せられるのに」
そんな普段の何気ない呟きを聞きとめて、忘れないでいてくれたこと。
お小遣いをそのために使ってくれたこと。
そのころ、反抗期だった私の意外な行動だったこと。
何十年も大事にしてくれているということが
こんなにも嬉しい、ということを
教えてくれている母親に、感謝。
