その地区での営業を開始した或る日、料理屋のようでもあり、しもた屋のようでもある、しゃれた日本家屋の呼び鈴を押してみました。
その家は門から玄関までが10m以上もあり、玄関先の庭をドーベルマンとシェパードが3匹ほど走りまわっていました。
この犬たちには彼はめずらしく吠えられました。
すると台所らしき戸が開き、割烹着姿の女性が四~五人飛び出してきて、犬を押さえてくれました。
「どうぞ」といって台所を通され、しばらくしてから応接室へ行くように指示されました。
指示された部屋へ入ろうとすると、床から虎が牙をむいてにらんでいました。
彼は虎の毛皮から離れたソファーに座りました。
しばらくして大きな鰐皮のバックを持った小柄のご婦人が入ってきました。
彼女は彼の前にいきなり100万円の束を4,5個置き、
「担当がかわったんか?」と不振な面持ちで訪ねました。
彼はあわてて「福○銀行の原田です。日掛けのお願いに参りました。」
といって名刺を出しました。
ご婦人「住○銀行さんと違うんか?日掛け言うたら何や?」
原田「毎日100円づつ掛けて1ヶ月で2000円、10ヶ月で2万円を借りる権利ができます。」
すると小柄の婦人は、プッと拭き出し「気の長い話やなぁ」
しばらくして
ご婦人「1日1万円ほど積み立てするわ。」
彼は小躍りして
「そしたら10ヶ月で200万円たまります。ありがとうございます。」
と、少し興奮気味に契約の手続きをして喜び勇んで支店に帰り支店長に報告いたしました。
支店長はじっと契約者の住所と名前を見て、いきなり
「あほ!返して来い!」
彼はわけがわからず
「何でですか?」
支店長「こっこれはY組の若頭やないか!」
原田「若頭ってなんですか?」
支店長は今にも泣き出しそうな声で、
支店長「ヤクザ屋さんの専務、いや、副社長!!」
原田「上品なご婦人で、お金持ちのようでしたけど。」
とよわよわしく反論しました。。
しかし『虎の敷物』の話はしないほうがよさそうたったので、伏せておきました。
支店長と彼のやり取りをニヤニヤして聞いていた古参の一人が、
「はーちゃん、その奥さんに謝って返しといで」
といわれました。
返すなら早いほうがいいと彼は早速福原まで取って返し、
原田「ヤクザ屋さんとは掛け金契約できないそうです。すみませんでした。僕は大口の契約が取れてうれしかったんですが・・」
すると、
ご婦人「今直ぐ支店長に電話し。うちが話したげる。」
原田「エエッ!!・・・」
姉さん、ニッコリ笑って「別状(べっちょ)ない、別状(べっちょ)ない、まかしとき。」
そこで彼は電話しました。
原田「支店長、今Tさん宅に来ています。今奥さんとかわります。」
支店長「かわらんでええ~!かわらんでえええええ!!」
彼はその支店長の声が耳に届きましたが、聞こえなかったふりをして受話器を姉さんに手渡しました。
姉さん「支店長さんですか?お金貸してくれとは言いませんから、日掛けとか、月掛けとかいう契約してくださいな。毎日1万円を無いもんとして積み立てるのん面白いさかい、お願いします。」
と言ってくれました。
彼に再び電話が返され、
支店長「もらって帰って来い!!」
というわけで彼は大口の契約を取ることができたのです。
To be continue・・・