祭りの糸引き(17)
小田が指差した先に居たのは石川だった。案の定,という顔が石川に広がる。瓦屋の顔にも落胆の色が見えた。
「こいつ,ミツなんかじゃない!ミツはこんなヤツじゃなかった!!ミツにそっくりだけど別人なんです・・・っ」
小田は顔を見る見る赤くしてゆく。呼吸のどちらかを忘れているようだ。千石が加勢する。
「そっそうだよ!ミツ,お前なら一人で舞台にいたお前ならアリバイないに違いないよな!?」
千石の言葉に石川は微動だにしない。ソファの脇の観葉植物の葉をいじっている。木津がうう,と低くうめいた。
まただ。背中の辺りにざわざわと物騒な怒りが蠢いている。
葉の焼かれる青臭いような焦げ臭い匂いが薄く立ち昇る。
茶番に付き合う気はないよ,と石川の背中がこちらを脅している。
「ああ,俺のクジャッキー(クジャクヤシ)ちゃんが・・・」木津は隣で情けない声を出している。
(綺麗な顔でこの人は・・・この状況ちゃんと分かってるの?)澪は木津の横顔を咎めるように見やった。
「大体,石川はいつだって俺だけが分かってるみたいな顔で,何でも決めてさ」千石は石川の態度などお構いなしだ。
その間にも健康に育った葉は毒を盛られて穴ぼこだらけになっていく。石川の手からどろどろした液体がポタリと葉に垂れる。しゅっと蛇の舌打ちに似た小さな音を立てて葉から細く紫の煙が上がる。
「そうだよ,あのカメラだってそうじゃないか。結局画像も売れなかったし!お前が独占欲出すからだぞ!貴重な私服が警察に押収されて・・・」
小田が千石の頭をはたいた。気まずい空気が2人に流れる。千石は動揺が表に出ている。カメラの何がまずいのか澪には想像がつかないが,千石は調子付くと喋りすぎるタイプのようだ。
「画像を売る?」瓦屋が聞きとがめる。
「い,いやっその俺たち演劇部の劇は毎年好評で・・・」千石の顔色がまた変わる。
「そうか?しかも私服っつったろうが」瓦屋の高い声に巻き舌が加わる。これは立派にチンピラのお手本になる。
島が無言で千石の前に進み出た。Tシャツの上からでも肢体についた筋肉が伊達じゃないことや場慣れした雰囲気が千石に伝わったようだ。千石は怯えた表情で首を竦めて島を見返した。が,すぐに目を逸らした。
「いいじゃないか?小遣い稼ぎくらいしても!あんたら目立つんだよ!有名税ってやつだろ?!」
千石が開き直る。澪は一体何を言い出したのか意味が分からなかった。
「俺たちがどんなに望んでもその顔も体格も手に入らないんだよ!今更親に産んでもらった事を文句言ってどうなるもんでもないんだよ。だから!ちょっとやっかむ位いいだろ?!」
小田が小さく溜め息をついた。石川は目を閉じて呟いた。クジャクヤシの葉は2,3枚焼け焦げてしまっている。
「くだらないね」
「分かってるよ!モモが殺されたのに,こんなこと言ってる自分がワケ分かんないよ・・・俺はやってない!俺は」
千石が半泣きで右拳を振り上げて自分の左手平に打ち下ろした。
「やってないんだ・・・っ」
泣き崩れた千石を見かねて小田が休ませてほしいと言い出した。
「何か飲むといいよ」
良餡と東尾が立ち上がって食堂に2人を連れて行く。
澪は追いかけるべきか冬木の顔を見たが目を合わせた瞬間,竦んで動けなくなった。
冬木の目には冷たい色が浮かんでいる。体の内から凍てつくような寒さが突き抜けて澪の胸に穴を穿つ。
何も言えないのに何も言われていないのに,その視線は全てを物語っていた。
澪は進んでロビーと食堂へと続く廊下のドアを固く閉ざした。
きまぐれ風見鶏
のF.Kikui様が先日,お誕生日を迎えたのです
おめでとうございます
ブログで言ってらしたリング
は予想以上に可愛かったです!!それにしても久々に誰かをお祝いするとあって,プレゼントを選ぶのが楽しくてそいでもって難しくて。。。結局,こじろーちゃんとお散歩に行って欲しいな,という気持ちだけ・・・ いつかそのうち一緒にまたお出かけできるといいなーーー
kikuiさんと居ると眠くても元気が出るのです。。。っはしゃいじゃう