「対義語」

何となく仲の悪さを感じ

共存を拒む

その3文字




 

「気持ち良い」の対義語は「気持ち悪い」

「頑張る」の対義語は「へこたれる」


 

たいていの場合

どちらかが良い意味で

どちらかが悪い意味


 

親の期待を一心に背負い、有名大学から有名企業に進んだ兄と

親に早々に見捨てられ、高校を中退して悪しき道に進んだ弟

 

生まれた家は一緒なのに・・・

 

 

なんか、そんな不公平感を感じる


 

対義語にそんな不公平感を抱く私が

対義語のアーティステックな現場に遭遇した話を聞いてもらいたい








 

昼休みに私は、ほとんど毎日、会社の近くの洋食屋さんでカレーを食べる

私的には東京で1番旨いと思うカレーを食べる


 

いつかあの子に食べさせてやりたいな

と思いながら

スパイスの効いたカレーを

汗をかきながら食べる



 

食べ終わると

たまにコンビニに行き

アイスコーヒーと

コンビニスイーツを買う

 

これが、私史上

最高級の贅沢だ



 

不幸せの対義語は幸せ

幸せの類義語はカレー

幸福へのスパイスはスイーツとアイスコーヒー



 

今日はその幸福のフルコースを味わおうと決めていた日だった

 

 

 

午前中から鳴る、お腹からの空腹の合図は

幸せへと続くファンファーレに聴こえ


 

脳髄を刺激するスパイスの拘束的な匂いを妄想し

時計の針の規則的な周遊をもどかしい思いで眺める


 

そして昼休みになり

カレーを完食した私は

コンビニ向かった


 

決めていたスイーツを手に取り

レジに並ぶ


 

スイーツを

20代と思われる女性の店員さんに渡し

「アイスコーヒーのSサイズを一つください」

と告げた









 

店員さんは言った













 

「アイスコーヒーのホットですね」






 

時、止まりけり







 

ぬるめのコーヒーなのですか?

 

それは

誰かが15分だけ座っていた後の座布団くらいの

ぬるめのコーヒーなのですか?


 

店員さんも明らかに動揺している


 

己が

「対義語の共存」という

日本語の根幹を揺るがすチャレンジを

無自覚に行ったことを理解しているようだ





 

しかし

大丈夫だ

 

そこは私だ

スマートに返してあげるのが私だ


 

ハハハ、と

3笑いほどした後に言った



 

「では、小ライスの大盛りも一つお願いします」




 

ドヤっ

と顔に書いた表情も優しく添えて

フォローという名前のプチギフトをお届けした










 

すると店員さんは






 

 

 

「え?」

 

 

と答えた。





 

私はあなたをフォローしているのだよねぇ


 

 

 

 

 

「あ、すいません。アイスコーヒーのSください。」

 

 

 

 

 

なーんで

私が謝らなきゃならんのだよ





 

そうだ、私は足が短いのだった

 

だからこんな返しをしてはいけなかったのだ。。

 

やってしまった。

 

完全に変な空気になる



 

しかし

日本語の根幹揺るがそうチャレンジに失敗した店員さんは

何となく動揺している


 

 

 

 

 

「袋はいらないですね?」






 

いや、いらんけど





 

「レジ袋どうなさいますか?」

が正解で

 

少し譲ったとしても


 

「袋はいらないですか?」

だと思う。





 

なぜ、あなた側が

私のコンビニの袋需要をコントロールするのだ


 

「あ、はい。」


 

と答える。

 

そこでまた店員さんは

再び自らの日本語のミステイクに気づいたようだ。



 

ここまでミスが重なると

トラウマにならないか心配になるが

そこは、このミスを乗り越えて強くなってもらうことを願うしかない






 

最後に私は

「ペイペイで」

とキャッシュレスサービスで支払いを行うことを伝えた








 

「かしこまりました。

 

 

 

 

ペイパイですね。










 

おいおいおい

かしこまるな


 

早急に

今のかしこまりを取り下げなさいよ、あなた


 

1番噛んではいけない


 

確かに私は男性として生きているのでパイが好きだ


 

しかし

ペイしてまでパイしない





 

「あ、ペイペイで。」

フォローの意味を込めてもう一度言った












 

「はい、大丈夫ですよ。」









 

あなたが大丈夫じゃなかったから

私があえて言い直しているのだがね!



 

 

 

 

 

 

 

 

少しの憤りを感じながらコンビニを出る。

 

完全に私がミスをしてしまったみたいな空気の渦の中に

一瞬だけ迷い込んでしまった。



 

しかし

今はこのことをここに記せたので

その店員さんに感謝している。




 

憤りをおかずに感謝というコメを食べた気分だ。






 

対義語の共存。

悪い出来事に少しだけお化粧をしてあげて

小さく湧き出る幸せくらいの良い意味に変える。


 

共存なんてできないと思うようなことでも

工夫ひとつでは可能なのだと知った。


 

店員さん、元気でやってくださいね、これからも。









 

木々の呼吸の音すら聞こえない煩すぎるくらい静かな夜に

たとえ僕の不幸と引き換えでも あなたの幸せを祈る


 

白橋 昌磨












 

追伸

その後食べたコンビニスイーツは

パイパイのように

ふんわりしていて美味しかったです。