スワンレイク荘殺人事件 第二話 「マサキ」の死因は?
皆さまいかがお過ごしですか?
私ソデッチの住む、新潟市でも全国同様、異常気候に悩まされています。
寒暖差の大きさに体調を崩されていらっしゃる方が周りで大勢います。
気候変動は大きな社会問題になっていますね。
こんな私が書くような小説もどきですが、皆さまの疲れが少しでも癒されることを心より祈ってやみません。
登場人物
リク(28歳)人気男性ボーカルグループ「アサヒ」リーダー、ハイトーンヴォイス六オクターブの音域を持つ。高声部担当
トキヤ(27歳)中声部担当
ケイジ(30歳)グループ最年長、絶対音感の持ち主、中声部担当
マサキ(25歳)グループ内最年少だがしっかり者、低声部担当 何者かに殺害される?
サキ(40歳)マネージャー兼世話役係、母親的存在
あらすじ
十代、多感な時期を音楽を通しそれぞれの絆を紡いできていたはずだったが…。
グループ最年長「ケイジ」突然の脱退宣言は思わぬ形で影響を与えた。「サキ」の機転で「スワンレイク」荘で話し合いが持たれたが、紅茶を飲んだのち、グループ最年少「マサキ」が居間に倒れ込む。「ケイジ」が脈が触れていないとその死を告げるが、不運な事に時は真冬、外は猛吹雪な上に全員が乗り合わせてきた「リク」所有ランクルの鍵や全員のスマホも無くなっている。「マサキ」の亡骸と、メンバーそして「サキ」は、完全に外界からシャットアウト状態。互い不信感は募るばかりであった。
第二話 「マサキ」の死因?
カフェインが苦手な「サキ」は全員を見渡せることが出来る(逆に、全員も見渡せられる)大広間の奥にある、キッチンで自らが飲む為のインスタントコーヒー(ノンカフェイン)入れていた正にその時「ケイジ」の叫び声が聞こえてきた。
「救急車、呼んでくれ!」だが、時すでに遅し、「マサキ」は僅か25歳という若さで生涯の幕を閉じていた。
だらっと、力なく垂れていた右腕の先には割れる事はまぬかれていたティーカップからこぼれ落ちる紅茶が意味もなく「スワンレイク」が一望出来る大きな窓から差し込む夕日に照らされている。
「なんで、マサキがこんな目に合わなくっちゃいけないんだ。俺(リク)とケイジさんが言い争っているのを黙って見守っていてくれていただけなのに。」
リクの言葉に全員が凍り付く。
「なあ、紅茶からなんか匂いしないか?」
全員とサキはマサキのティーカップに近づくが僅かに甘い香りがしている。
「マサキ、甘いものには目が無いからテーブルの上にあるシュガーポットから砂糖入れてたよな?俺(リク)、トキヤ、ケイジさん、マサキ、の順でサキさんがトレーに載せてきた紅茶が注いであるカップを取ったよな。」
皆が、疑心暗鬼となっている。
「ソーサーとティースプーン付きで、その後直ぐにキッチンからサキさんが、トレーにシュガーポットとミルクポットを持って来てくれたはず?」
リクの言葉に反応するように皆がうなずくと同時に全員の目はサキにそそがれる。
「私、何もしていないわ、ただ、ケイジさんとリク君との間にある行き違いは前から感じていたし、口論になるとも思っていたから、落ち着いてもらう為に皆がここに到着した時、直ぐ、紅茶の用意はしたわ。お湯沸かして、缶から紅茶出して、来る前に買い物してきた中にあった、生クリームを銀製のミルクポットにいれ、砂糖をシュガーポットにうつしたわ。ここで紅茶をカップに注いだ。そして持っていっただけ。」
感の良い彼女なら想像にし難くもないと皆が思った。
「誰も、貴方が毒いり紅茶をマサキに入れたなんて思っちゃいませんよ。皆の好み(リク、トキヤは砂糖ミルク無し。ケイジは胃弱な為ミルクのみ。マサキは甘いもの好きで砂糖入り。)は全員知っていたし。」
だが、トキヤが発するその声は乾いていて、明らかにサキを疑っているようにグループ全員は感じた。
「買い出しの時全員車から降りて、参加した。皆それぞれ好きなもの買うために。サキさんがカートに紅茶の缶を入れたの覚えているでしょ。」
自身の語りに付け足すようなトキヤの言葉はただ、空に飛んでいったようなだけで虚しさが残る。
「シュガーも生クリームもだったね。皆が大好きなステーキ肉も、ピザも、吹雪が凄かったから、買い出しに行かないように、一週間分の食料調達した。」
「本当に、私何もしていないから。」
トキヤの話をさえぎる様にサキがまるで独り言のようにつぶやく。
サキは今回の話し合いに賭けていた。
以前からリクとケイジとの間にあるすれ違いには気が付いていた。
多方面に働き掛け、なんとか一週間程の休み貰う事がどれだけ大変だったか…。
なんとしても、ケイジの脱退を阻止せねばならない。
それほど、ケイジのコンポーザーとしての才能は測れ知れない。
「こんな事でアサヒの名を傷つけてはならない。何人にも邪魔させない。」
強い思いが彼女を支配しているが、はたして一見して無関係なマサキを手にかける必要があっただらろうか?
「なに、これ!」
トキヤの指さす方、マサキの亡骸に皆の視線が注がれた正にその時、ズボンのポケットから、白いカプセルの先がちょこんと顔を出しているではないか。
マサキが穿いている白いチノパンの左脇ポケットから、半分それは顔を出している。
先ほどまでは見えなかったのに、おそらく、ケイジがマサキを抱き上げ、脈を調べる時に僅かに掛った力の作用で、白いカプセルが顔を出したのであろう…か?
はたまた、マサキが穿いている、チノパンの白と同化していた為に目立たかったのか?
どちらにせよ、白いカプセルの中身を調べる必要があるに違いない。
トキヤは思い切って、その、白いカプセルをポケットから取り足すや否や、「甘い香りがする。」と言い放った。
「青酸カリだ!」
トキヤの言葉に再び全員が凍り付く。
トキヤはキッチンへダッシュして急いで手を洗った。
「マサキから離れろ!」
白いカプセルはトキヤの手から離れて床に転がり、スワンレイクが一望できる、大広間の窓から差し込む既に力が無くなってきている夕日にかろうじて照らされている。
「まさか、マサキ、そんなことするわけない。アイツだけが冷静だったのに。」
リクの唇から言葉が漏れる。
と同時に、皆の視線の先、マサキの口元から泡が吹いている。
「窓開けろ!」
トキヤが叫んだ。
サキが大広間にある、窓を開けようとしたが、そこから雪まじりの吹雪が入り込む。
しかたなく、サキは窓を閉めた。
「無理みたい。」
外界は猛吹雪で完全に孤立している。
「青酸カリは何か物質に反応して微量だが、有毒ガスが発生すると聞いたことがある。」
放心状態のトキヤが言った言葉は宙に舞った。
はたして、マサキは自ら死を選んだのか?はたまた、何ものかに、亡き者にされたのか?
絶体絶命、完全孤立、スワンレイク荘到着から、僅か一時間程でこのような事態に陥るとは。
人生とは、人の心とは、なかなか他人には分からないようで。
つづく
最後までお読みいただきありがとうございました。
ソデッチでした。