お久しぶりです。

ソデッチです。

世の中、戦争や演説中に起こった首相襲撃事件、物騒な世の中になったようで不安の中皆さまいかがお過ごしですか?

我が家は、主人が前立腺がんに罹患し、すったもんだの日々です。

更新や「いいね」が出来ず歯がゆいですが、自分なりに頑張っています。

よろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

登場人物

渡部幸子(わたべ こうこ60歳)独自の直観力の持ち主。また、噂好きで社交的な一面もあり、嫉妬深い性格。

渡部昭(わたべ あきら65歳)幸子の配偶者 地方銀行の行員。

渡部弘明(わたべ ひろあき25歳)幸子の一人息子。弁護士資格を取るために勉強中だったが、柳井まどか(やない まどか22歳)アパレル社員 を一方的な思い出殺害してしまう。

詳しくは前回までの小説「噂好き」をお読みください。

皆川祭(みながわ さい61歳)真面目で責任感の強いタイプ。同居する長男夫婦に孫が出来るが、生活苦に陥る。

南 洋子(みなみ ようこ 55歳)若くして夫を亡くし、「タクミ」でのバイト代でなんとか生計を立て、息子を大学まで出す。苦労人で「タクミ」に対しての思いが強い。

藤貝都さん(ふじかい みやこ 46歳)「タクミ」の夜間専門バイト

道見 翔(みちみ しょう 70歳)藤貝と交代でシフトに入っている夜間専門バイト

 

あらすじ

スーパー「タクミ」で発生した「現金喪失事件」バイト含め社員が出退勤を入力するPCが置いてある事務室に置いてある金庫から売上金が盗まれていた。

いつも売り上げを取りに来る二人組銀行員がコロナの濃厚接触者。

代わりに一人でやって来た銀行員が見つけた事件。

何故に彼は売上金が足りないと分かったのか?

「地方銀行による不正融資か?

物語は幸子独特の直観力で少しづつ真実に近づいていく。

第五話は鷹匠の経験があった、故人、戦後日本で起こした地銀創業者の葬儀から始まる。

 

第五話 雅(みやび)

雅にやるためのウズラを俺は丁寧に解体する。

小屋の中で静かに訓練を待つ雅の顔面はいつもより逞しく俺の目に映る。

雅の名前は俺がつけた。

鷹匠だった祖父が俺に命名させてくれた。

雅は俺の左腕から新鮮なウズラの肉のかけらを口にし、空を一直線に飛び再び戻ってくる。

どうやらうたた寝していたらしい。

今年で93になるのだから仕方が無いがこの頃やけに眠い。

戦後のどさくさに紛れて起こした銀行もなんとか持っているらしいが。

このところの状況はとんと分らん。

息子や孫達に任せっぱなしだが、このご時世で銀行が危ないとかなんとか。

親族で回している地方銀行だから、集まれば銀行自体の存続が危ぶまれる話をしているのがいやでも耳にする。

「かそうつうか」この言葉を彼らは度々口にする。

いったい、その「かそうつうか」とやらは何の目的で政府は作ったのか?

アメリカの属国でしかないのだろうか?

融資先の焦げ付きが膨らんでいるのだろうか?

だまって寝ているだけでよいはずの身分だが心配事ばかりでいやでも暗くなっちまう。

どうしたんだろう、また強い眠気が襲ってきた。

年貢の納め時か、俺も雅のところへ行くのか。

目を閉じる瞬間、机の上の棚に飾ってある社員バッチの鷹がキラリと光った。

 

葬儀は厳かに行われた。

来るもの皆伏し目がちだったが故人の年齢が故に安堵の表情もその瞳に宿す。

社葬の形を取っていたが、故人の人となりのわりに規模はいたって小さい。

生前の希望だったので致し方ないのだが、中には不満を漏らす親族もいた。

それにしても驚いたのは会場外に並ぶ花輪の数。

県知事、県会議員、市会議員、果ては建設省大臣の名まで連ねてある。

むろんスーパー「タクミ」の社長の名もあった。

地方紙でも大きな記事で取り上げられていたが、はたして故人の希望通りになったかは定かではない。

 

勿論、幸子もテレビや新聞で故人の訃報を知っている。

祭にラインをしてみたが、仕事の最中か既読がついておらず、いささかイライラしている自身に気付く。

が、ほどなくして返信が送られて来る。

「タクミでも大騒ぎ、今日も例の若い行員さんが4時過ぎに売り上げを取りに来ると思うけど、どうやら社長が葬儀に出席したらしいわ。噂が立っている。今日南さんシフト入っているし、これから会えると思います、情報があったら追って連絡します。」

一安心だったが幸子は嫌な胸騒ぎを感じていた。

一時間程経った頃だろうか、祭のラインが入っている。

「大変です。南さんの話だけど、どうやら本格的に県警の捜査が入るらしいです。今までも警察官の姿は何度か見かけたけど、どうやら帳簿を全て調べるとの事、社長含め上層部かなり焦っています。またラインするわ。ともかくタクミはすったもんだの大騒ぎ、社長の自宅にも国税局の職員が入るって。また後で」

祭からのラインで想像を絶する状況は十分過ぎるくらい伝わった。

まさか、会長死後にこんなにも問題が浮き彫りになるなんて…。

直観力だけは誰にも負けないつもりだった幸子の瞳に影が走る。

突然と思い出したのだが、南洋子がタクミの倉庫で出くわした幽霊…。

はたして、何だったのか?

しかも、タクミの新聞チラシに走り書きで「もうこれ以上追求するな」脅しにも似た文言が書いてあった。

引っ掛かる。

自信を失いかけたがやはり幸子の直感力は、まだまだ…。

その、機能は十分に発揮する事となる、「タクミ」の運命と共に。