父親の認知症 繰り返された万引き事件

 

宮本宏さんの父親 宮本一郎さん(82歳)はまさかの万引きを繰返し、二度も警察のお世話になりました。

 

では、家族がどんな対応をしておけば、今回の万引き事件は防げたのでしょうか?

 

 

「あっ 宏か?悪いがちょっと金を貸してくれないか?」

 

「お父さん、こんな夜にどうしたの?」

 

「いや、キャッシュカードを盗られたみたいなんだ。いつもは財布の中に入れているんだが、財布ごと盗られたみないなんだ。銀行から出金出来なくて困ってるんだ。」

 

母親が亡くなって半年後。

ある日の夜、宮本宏さんは父からの思いがけない電話に驚きました。

 

「盗られたって誰に?」

 

「分からん。最近、玄関ドアの鍵をかけたはずなのに開いてることがあるんだ。」

 

「えっ、物騒だな。わかった。明日の夜、そっちに行くから。お金はその時でいいかな?」

 

「ああいいよ。悪いけど頼む‥‥」

 

翌日の夜

 

実家を訪ねた宏さんは、現金を手渡します。

 

「とりあえず3万円持って来たよ。盗られたって財布、いつもどこに置いてたの?」

 

「いつもこの引き出しの中だよ。3日前から無いんだ。」

 

実は‥‥。

 

この時から認知症は始まっていたのです。

 

盗られたという財布は週末に訪れた香さん(宏さんの奥さん)が見つけました。

 

洗濯機の中、汚れたズボンのポケットに押し込んであったのです。

 

    ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 

決められた曜日にゴミ出しが出来ず、玄関口に積まれた生ごみ入りのビニール袋。

 

冷蔵庫に賞味期限の過ぎた鮨弁当。そして、レンジの中には加熱後忘れられた茶碗蒸しがそのままの姿で……。

 

「家の中、ゴミだらけだよ。週末、掃除に来ようか?」

 

あまりの有様を案じた宏さんの言葉です。

 

「自分でやるからわざわざ来なくていいよ。掃除は後でしとくから‥‥。」

 

『子どもの負担にはなりたくない!』

 

実は、こんな気持ちが見え隠れしていたのです。

 

後日になりますが、宮本一郎さんの状況が要介護レベル1の認知症だと分かります。

 

認定後、週3回の通所介護。そして宮本香さんが洗濯や掃除の世話をしています。

 

「財布を盗られた‥」

 

 

こんな電話があった当時、しっかりした対処をしておけば警察のお世話になることもなかったのでは‥と思い起こされている宮本宏さんご夫婦です。

 

 

※父親宮本一郎さんの万引き事件については、当ブログ『親の終活とその家族③』をご覧ください。