観劇前はとりあえず不穏さがあるというように聞いていたのですが、これまでのシリーズと比べるとそこまで心が苦しくなるようなストーリーではなかったかな…?というのが正直な感想です

 

刀ミュと刀ステの違いとして、刀ミュは割と時間遡行軍が歴史改編に成功し刀剣男士達が歴史上の人物に成り代わったり歴史上の人物達と関わっていることが描かれており、尚且つ歴史上の人物達は出会った刀剣男士達のことを忘れることなく記憶している節があります。
対する刀ステでは出会った歴史上の人物達は刀剣男士達との記憶は刀剣男士達がその歴史を離れると記憶から消されると今回改めて明かされました
例外を挙げるとすると前作である科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』改変いくさ世の徒花の記憶で放棄された世界にいた山浦徹さん演じる黒田孝高が別の時間軸である正史のジョ伝にいる黒田官兵衛の記憶を共有していたことくらいかと思います
その例外のことを考えると、もしかすると放棄された世界では本来のシステムが正常に機能していないが故にそういった齟齬が生まれやすいのかもしれないと考えられます

そして次に、今回はメインが本田礼生さん演じる一期一振なわけですが、一期と言えば初演と再演の虚伝では廣瀬大介さんが演じられていたことはもちろんご存知のことかと思います
刀ステのキャスト変更は他の作品とは理由が違うということは、既にこれまでのシリーズで充分に皆さん予習されていますよね
天伝が大坂夏の陣が描かれており次にある大阪冬の陣である无伝では共通して骨喰藤四郎が出演しますが、夏の陣では北川尚弥さんが冬の陣では三津谷亮さんが演じられると言うことで益々違う個体の刀剣男士であるという線が濃厚と考えていいでしょう
その説が有効であるとした上での今回の一期
つまりあの本能寺の変を一度も経験していない一期ということになります
もしかすると円環の中で経験しているのかもしれませんが、虚伝が初演と再演で若干内容が異なっているのは三日月宗近が体験している円環であり毎回結果は一緒だけれども少しずつ過程に違いがあるということだと考えると、あえて2回やったにも関わらずどちらも一期は廣瀬さんが演じられていたということを考慮すると本田さん演じる一期は本能寺を経験していないということが考えられます

原作である「刀剣乱舞」での一期一振ログイン台詞ともなっており、今回本田さんも口にされている豊臣秀吉辞世の句

露と落ち露と消えにし我が身かな 浪速のことも夢のまた夢

豊臣秀吉と言えば数多いる戦国武将の中でも3本の指に入る有名人
しかしほかの織田信長や徳川家康のように生粋の武家生まれ武家育ちという恵まれた立場というわけではなく、足軽からのよく言えば生え抜き、言い方によっては成り上がりとも表現できる
つまりはいくら武功を挙げ太閤殿下と呼ばれるようになっても疎まれることはあり、そしてそんな立場になっても自分が死にゆく時は何も持たず身一つであるという事実に改めて気が付いたとも読めます
秀吉あっての豊臣家も自分が死んでしまえばその権力も武力も家臣達との関係も消え失せ残るはただ1人秀頼だけ
実際、刀ステのストーリーの中でも触れられていますが秀吉は亡くなる直前に自身の家臣達を集めて跡取りである当時まだ幼かった秀頼の行く末を案じその想いを託したとも言われています
一期一振が豊臣家に伝来した説でよく言われるものは3つあるとされています
そのどれもが秀吉が恋い焦がれて手にしたというような内容であり、その為秀吉が一期に対し並々ならぬ強い想いが込められていたことがよくわかります

 

今回織田信長自身は実体として出てはこないものの、やはり戦国武将の中でも群を抜いて才覚を現していた存在ということもあり度々ストーリーでも触れられています

また、虚伝でのテーマは「織田信長とは何者か」でしたが、今回の天伝では「自分とは何者か」だったのではないかと思います

そもそも今回初登場した北乃颯希さん演じる太閤左文字という刀剣がそういった物語を背負った刀剣男士でもあるということですから敢えて新刀剣男士として太閤を選んだのにはやはり意味があるのだなと感じました


一期が護衛することとなった秀頼は正にその織田信長の死後天下人となった豊臣秀吉の息子です
出来すぎた父親を持ち、これまでの戦国武将とは違い血を流して戦うことなく生まれながらに準備された天下という立場に深い葛藤を見せる秀頼
有り体に言ってしまうと二世タレント若しくはコネ入社
そしてそんな秀頼と共に今回の作品でキーパーソンとなっている歴史上の人物・鈴木裕樹さん演じる真田信繁も同じような立場にあります
秀頼と同じく所謂出来すぎた父親を持ってしまった者
ただ秀頼と違うのは秀頼にはそんな葛藤の中でも天下人という恵まれた立場があり更には信頼でき支えてくれる臣下がいた
対する信繁には刀ステの中ではそのような人物は描かれておらず、似たような境遇にある者同士ですが結末がはっきりと分かれてしまったのはその違いなのではないかと思います
 

そして歴史上の人物達が度々口にしていた「間に合った」というワード

父親と同じやり方で父親を超えたかった小松さんの秀頼、父親とは違うやり方で父親を超えたかった鈴木さん演じる信繁、そして自分のやり方で信長を超えたかった松村雄基さん演じる徳川家康
「間に合った」という同じ言葉なのにそれぞれ違う方向に向けた想いが込められており、聞いていて切なさすらありました
結局、史実から見ると誰も「間に合わなかった」のだから

自分自身を見つめ史実を知って尚向き合い続けた秀頼、自身の史実を受け入れきれずに抗った信繁、全てを知らずにこれからの未来に想いを馳せる家康

どれが正解とも言えない辛い三択ですね

鯰尾藤四郎役の前嶋曜さんは正直な~~~~~~~~…

なんで前嶋さんだったのか…

2.5次元舞台の経験が浅い上に演技が上手いわけでも特別殺陣が上手いわけでもない

なんなら真剣必殺のシーンでは1人殺陣が簡素化されているのがありありと伝わってきさえしました

洋装なのだからせめてもう少し動けてほしかったです

気になったのは一期との掛け合いでここをやり直せたら…というくだり

そこで鯰尾は「な~んて思った時もあった」という過去形で話しているという点
観ている時にもの凄くデジャヴだったのですが、虚伝でも廣瀬さん演じる一期と杉江大志さん演じる鯰尾が同じ会話をしていたことを思い出しました
しかもあれは確か遠征で第二部隊が大阪冬の陣へ行っていた時に交わされたもの
別の個体ではあるものの同じ刀剣男士達が同じ場所同じ時代で同じ会話をしている、そのことに深い意味を感じずにはいられませんでした。
「だめだよ、それじゃ敵と同じになる」という一期の台詞もまるで初めて鯰尾に言い聞かせるようでぞわっとしました

骨喰藤四郎役の北川尚弥さんは慈伝ぶりの出演、メインキャストとしてはジョ伝ぶりの出演となります
骨喰は天伝・无伝どちらにも出演するキャラクターということで発表時から注目していましたが、今作ではこれといって重要な役どころを担っているようには見えなかったところが逆に気になりもしました
今回必要だったかな…?くらいの存在感

強いて言えば一期の「兄」という立場にスポットライトを当てるための存在

短刀だと保護者感が出てしまうけれども脇差であれば兄弟感でますしね
また、序伝では顕現したばかりでレベルが低かったことと武子直輝さん演じる同田貫正国が骨喰を守るような動きが多かったですが今作では如伝以上にかなりレベルアップした姿を観ることができましたし、兄弟達に囲まれて今まで観られなかった骨喰の姿が観られたような気もしました
ただ、こいつ全然偵察してないな~と、ずっと思ってました

偵察に行っている間もずっと鯰尾が望遠鏡で見てましたし、ちゃんと仕事してくれ…

あと、殺陣の時の歩き方のダサさたるや

なんだあれは

あの段差を昇ったり降りたりする際必ず手を使うのは何故なんだ

体幹が弱いのか…?

宗三左文字役の佐々木喜英さんは虚伝ぶりということで、およそ4年ぶり
これまで左文字と言えば輝馬さんや瀬戸祐介さん演じる江雪と納谷健さん演じる小夜の計3振り
この3振りの関係性と言えば正に兄弟というか、上2人が小夜を慈しみ守るという挙動が目立ちましたが今回新たに登場した太閤はこれまでの兄弟感とはまた違った関係性が見て取れました
小夜のことは守らねばいけない対象とし、太閤のことは見守っている存在とでも言いましょうか
また、今回は出陣している刀剣男士達の中では唯一のお着物
太閤も和装かもしれませんが、厳密に言うと担当という短刀でショートパンツを着用していることもあり機動力を見ると圧倒的に宗三は分が悪いかと思います

満を持してという言葉が本当にぴったりですよね!!!
刀ステでの初登場である松田凌さん演じる加州清光!!!
劇中の台詞でも「はじまりの刀」と表現されていますが、初期刀として加州を選ばれている方にとっては思い入れも一入…となりますよね
私が正にそれな訳ですが…!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
加州と言えば刀ステでは虚伝にて名前だけは登場していたことは覚えておられるでしょうか?
日替わりにはなっていましたが、遠征から帰ってきた荒牧慶彦さん演じる山姥切国広が主の元へ来た際鈴木拡樹さん演じる三日月宗近に「遠征から戻ったらこちらに来るようにと加州清光から伝達を受けた」と口にしていたシーンが円盤化されていました
そして加州と山姥切が2振りで行動する際の会話から察するに刀ステ本丸では加州は割と初期からいた可能性は大きいかと思います
ただ維伝のパンフレットにこれまで出演した刀剣男士達の名前がズラッと羅列されており、それは顕現した順番なのでは?と言われていましたがその中に加州がおらず、更にはOPにて天伝は如伝の後の出来事であると出ており少なくとも如伝に出演していた刀剣男士の前に名前が入っていてもおかしくないはずなのですが…
悲伝の際に玉城裕規さん演じる小烏丸が自分をも顕現するなんて…というような不穏なことを口にしていたことから予測するともしや円環の中で顕現している刀剣男士が若干違うのか…?とも考えられますが、原作ゲームでも加州は数いる刀剣男士達の中でも顕現しやすいタイプなのでいないとは考えられないのですが…


とりあえず言えることは、爪の色を度々気にしている素振りは最高でした
そして出陣している刀剣男士達の中で1番この先の未来をよく知っている加州と、この時代の覇王でもある家康との命のやり取りは目を奪われるものがありました

家康がつくりあげた江戸幕府のために命を賭けた新撰組の沖田総司

この時代に加州?という疑問もありましたが、あのシーンで納得がいきました

唐突に始まる太閤左文字劇場は本来のキャラクター性ガン無視ではありますが、歴史上の人物の活き活きとした表情は必見です

まぁ、言えることはビジュアルがなぁ…

短期間でのお稽古で殺陣ができてある程度動ける小柄なキャストとなると人選が限られるのはわかります

しかも長期間スケジュールが確保できる人材

でもなぁ…

もっとあったのでは…?

可愛い短刀でこれはキツいものがあった…

刀ステを語る上では外せない存在である荒牧慶彦さん演じる山姥切国広
ステージ上に荒牧さんがおられるだけで安心感があるというか…感謝ですね
加州と共にはぐれてしまった際、骨喰に「あの2人に限って敵にやられることはないと思うけど…」と言われていましたが、同じ部隊の刀剣男士達にもそう思われているのはやはり如伝で改めて小田原を乗り越えたからこそかもしれません
日南田顕久さん演じる弥助との戦いはもう手に汗握るというか…ジョ伝の記憶も蘇ってきて辛いものがありました
今回の弥助の企みに対し、自身達の持つ「逸話」についてかなりの執着を見せた山姥切
そもそも逸話とは「世間や世人にあまり知られていない興味深い話、世人から逸した(逃れた)話」というのが日本国語大辞典の解釈にあります
ところがこの刀ステにおいての逸話は「人から人へ長い年月をかけて語り継がれたもの」という解釈がとられており、もしや弥助達は前者の解釈を持ってして逸話たり得ると考え今回の計画を練ったのではないかとも考えられます
仮に前者の解釈であれば今回のような結末にはならなかったと思うし、刀剣男士達の解釈もそうであればもう少し作戦も変わったのではないかと思います
その為山姥切は弥助から「逸話をつくる」という作戦を聞いてあそこまでの怒りを見せたのかもしれません

そしてもう1つ山姥切が強い反応を見せた「史実」と「諸説」
史実とは歴史上の事実、諸説は色々な説・意見や噂
つまり諸説は史実があった上で発生するものであり、決して諸説が史実になることはないのです
諸説には諸説のロマンがありますが、史実とすり替えることはできません
史実通りに生きるが故に大切なものを失う弥助からの「我々にだけ失うことを強いるのか」という問いに対する「お前たちだけに失うことを強いはしない、失う覚悟は出来ている」という答えはこの後の起こる悲伝のことを思うと涙無しには見られないシーンでもありました…
慈伝前なはずなのに既にその覚悟がこの時にできていたのか…

弥助がまた出てきたのは胸熱だったなぁ…と思います

日南田さんの表情好きなんですよね…

演技がうまいなぁ...としみじみと思います
弥助が作り上げた刀剣男士の声が鵺と呼ばれる役の碓井将大さんの声があてられていたのには驚きました

ここでもまた過去キャストがでてくるかぁ…

そういう演出好きですよね

以前黒甲冑で富田翔さんの声使ってましたし


今回刀ステ史上初のIHIステージアラウンド東京ということですが、正直1幕はあっさりとしておりこの劇場でやる意味あったか?くらいのレベルでした

2幕でようやく劇場の全ての機能を遺憾なく使い切りました!!!という感じ

あえてこのコロナで舞台を全ステージ上演仕切れるかどうかという微妙なタイミングでこの繊細な劇場でやる意味ってありましたかね…?

最後の戦闘シーンは面白かったし、時間遡行軍の新たな形態が見れたのもよかったけど…

う~ん…自己満足感強め…

全員真剣必殺があったのは純粋に好きでした。真顔

 

ラストで阿形と吽形が「如水も喜んでくれるといいねぇ」と言っていたのが、過去形ではないことが気になりました

だってあの2人は時間遡行軍

時を遡ることができる

つまり、あの真田十勇士達の刀を他の時間軸へ持っていくことができる

どこかのシリーズでまた出てくるのか…

タイトルの「天伝」にあるようにラストは爽やかな晴天が映し出され、とても爽やかに終わった…ように見えますけど全然そんなことはなく无伝への布石がありすぎる相変わらずな刀ステ
无伝で出演が発表されている大千鳥十文字槍役の近藤頌利さんと泛塵役の熊谷魁人さんが夏の陣に三日月宗近が来ることを知っていたということは円環の外からやって来た=悲伝以降の時間軸からやって来た説を考えると、无伝でそんな2振りと出会う三日月達は一体どうなるのか…

また、自害してしまった信繁に成り代わると宣言した大千鳥十文字槍

その設定刀ミュでよく知ってる~と思ったのは秘密にしておきますね!

やはりネルケプランニングに譲渡されてから色々とそこの境界線が曖昧になっているのは嫌だなぁ…と思います

別の作品なので

 

それと!!!

また!!!!

九十九刀かい!!!

また!!!!

懐中電灯!!!!

それもう使わないでってあれだけ言ったよね?!?!?!?!

(※言ってない)

シリアスなシーンであの光る棒は笑えてくるので二度と使わないでください!!!!!

金輪際!!!!!!!!!!!!

 

それにしてもジョ伝で川下大洋さん演じる豊臣秀吉と出会った骨喰が「土の匂いがする…」と、匂いで記憶を呼び戻していましたが、今回も同じ本丸の刀剣男士であるということを匂いで判断していた山姥切・加州や秀頼のことを秀吉と同じ匂いがすると表現した太閤

この本丸の刀剣男士達は鼻が良いのか?
 

刀ステの歴史上の人物の人物は割と現代の史実とは異なる部分が多くあるように感じます

もちろんそれが悪いというわけではなく、これはこれで面白く感じます

とりあえず配信と千秋楽の配信待ちです