こんにちは、潮野香路です。

 今回とりあげる『螺旋階段をのぼって』は、氷室冴子さんの小説化されていない漫画原作です。

 中高生の時に読んでピンとこなかったのですが、今回このブログを書くにあたり中古で買い求めました。

 酷評してしまった『ラブ・カルテット』と違い、氷室さんを感じる作品です。

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 高校入学と時を同じくして父が再婚することになった民子。

 幼くして母を亡くしていた民子にとって、新たな家族は楽しみだったけれど、そこには3か月だけ年上の健と、小5の雪絵という兄妹がいた。

 いくつかのトラブルを超えて健を信頼するようになった民子だったけれど、健には踏み込ませてくれない壁があり・・・。

 

 中高生の時ピンとこなかったのがなんでだろ?という素敵な作品です。

 家族の中で一人疎外感をもった民子が、家を飛び出し、追いかけてきた健と語らうシーン。

「お母さんか・・・・ 結局無理なのよね こういうのって

あんたたちだけがどんどんお父さんと仲よくなって あたしはダメで・・・ひがんじゃって

料理ぶっこわして少しスッとしたわ・・・ やな子よ」

 こういうセリフが氷室さんだなーと思うのです。

 民子が怒るの、当然だと思うのですよ。

 父一人子一人で支えあってきたと思ってたのに、父親はすでに何年もかけて健たち家族と仲良くして新家族を営んでた。

 あまつさえ、民子に結婚の了解をとる前に、再婚の入籍まで済ませていた。

 それらを納得しようと努力しているに、雪絵は懐いてくれない。

 健たち家族は地元のまま、民子だけが引越して友達もいない。

 たった15歳の民子には、あまりに辛い現実だと思います。キレて当然だし、料理どころかなんもかんも壊したくなるというものです。

 でもそういう悲劇のヒロインに酔わせる一方で、すごく客観的にみている視線がある。

 私だったら、料理を壊して号泣しながら親を責めることで落とし前をつけてしまうけれど、「やな子よ」と言わせる冷静さ。

 この視線は氷室作品に一貫して流れていると思います。

 

 

 

 私は現在子どもが2人おり、母親業をしているため、親目線で民子と健をみているのですが、15歳の少女少年にとっては、シンドい環境ですよね。

 2人ともしっかりしているため母親業父親業を背負わされている。

 もっと甘えていいんだよ、あなたはまだ子どもなんだよ、と言ってあげたくなります。

 

 でも氷室作品では、どんなピンチの時でも、そこで泣いてひねくれて終わりにはしない。

 泣きながらも次の作戦を練る。

 

 恋愛物としてはハッキリさせない、されどこれ以上ないラスト。

 氷室さん自身がお気に入り作品と挙げるだけあります。

 絶版状態のようですが、これは文庫化等で復刊してくれないでしょうかね?