はじめに

 

医療従事者は、患者さんの命や健康を支える重要な役割を担っています。しかし、その献身的な仕事の裏側には、多くのストレスが潜んでいます。厚生労働省の調査によると、医療・福祉従事者の精神疾患による労災請求件数は、全産業平均の約2倍に達しているという衝撃的な事実があります。

この記事が忙しく働く中で「ストレス」を感じている方、「やる気がでない」と感じている方への一助となれば幸いです。

 

 

ストレスの原因を探る

 

医療系職種の中でも、特にストレスを感じやすい職種とその具体的な原因は以下の通りです。

 

 

1. 看護師

  • 長時間労働・夜勤の多さ:
    人手不足による慢性的な業務過多と、夜勤の負担が心身をすり減らします。

     

  • 患者さんの生死に関わる責任感:
    患者さんの容体悪化や死亡への責任は、精神的なプレッシャーとなります。

     

  • 医師や患者からのクレーム対応:
    理不尽なクレームへの対応は、大きなストレスとなります。

     

  • 人間関係の悩み:
    同僚との人間関係や、患者さんとのコミュニケーションの難しさなどがストレスに繋がることもあります。


     

2. 医師

  • 重大な判断を迫られるプレッシャー:
    患者さんの命に関わる重大な判断を迫られる場面は、精神的な負担が非常に大きくなります。

     

  • 長時間労働・夜勤の多さ:
    看護師同様、過酷な労働環境は心身の健康を蝕みます。

     

  • 医療訴訟のリスク:
    医療行為に伴うリスクは常に付きまとい、精神的な重圧となります。

     

  • 事務作業の負担:
    学会発表や論文執筆などの事務作業は、本来の医療業務の時間を奪い、ストレスを増幅させます。

     

  • 後輩指導や人間関係:
    部下との指導や、同僚との人間関係もストレスの要因となります。


     

3. 臨床検査技師

  • 長時間労働・夜勤の多さ:
    医療従事者全体に共通する課題です。

     

  • 検査結果の誤りによる責任感:
    検査結果の誤りは、患者さんの命に関わる重大な問題であり、大きな責任を伴います。

     

  • 医師や看護師との連携不足:
    円滑な連携が取れないと、業務効率が低下し、ストレスが溜まります。

     

  • 単調な作業の繰り返し:
    同じ作業を長時間続けることは、精神的な疲労を招きます。

     

  • 昇進昇給の機会が少ない:
    キャリアパスが不明確で、モチベーション低下に繋がる可能性があります。


     

4. 薬剤師

  • 調剤ミスによる責任感:
    調剤ミスは重大な事故に繋がる可能性があり、常に緊張を強いられます。

     

  • 医師や看護師との連携不足:
    他の医療従事者との連携がうまくいかないと、業務が滞ったり、ミスに繋がる可能性があります。

     

  • 患者さんへの服薬指導:
    患者の理解度や時間的な制約により、十分な服薬指導ができない場合もあり、ストレスとなります。

     

  • 長時間労働・夜勤の多さ:
    上記の職種と同様に、労働環境の改善が求められます。

     

  • 残業代が出ない場合がある:
    サービス残業が横行している職場も多く、モチベーション低下に繋がります。

     

個人の性格や環境も影響
 

上記で挙げた原因はあくまで一般的な傾向であり、個人の性格や勤務環境によっても、ストレスを感じる原因は異なります。

例えば、責任感が強い人は、患者さんの容体悪化や死亡の責任を背負いやすく、ストレスを感じやすい傾向があります。また、人間関係が苦手な人は、医師や患者さんとのコミュニケーションで悩みを抱え、ストレスを感じるかもしれません。

さらに、長時間労働や夜勤が多い職場では、心身ともに疲労が蓄積し、ストレスの原因となります。人手不足による業務過多や、医療訴訟のリスクなども、大きなストレスとなります。

 

ストレスへの具体的な対策
 

ストレスを完全に無くすことは難しいですが、上手に解消することで、心身の健康を守ることができます。以下に、いくつかの具体的な対策をご紹介します。
 

1. 睡眠と休息を十分に取る

睡眠不足は、ストレス耐性を低下させます。毎日7~8時間程度の睡眠を確保するようにしましょう。また、休暇は積極的に取得し、心身を休めることが大切です。
 

2. 適度な運動を取り入れる

運動は、ストレス解消効果があります。ウォーキング、ジョギング、ヨガなど、自分に合った運動を習慣的に行いましょう。
 

3. 趣味や娯楽を楽しむ

仕事以外の時間には、趣味や娯楽を楽しむことで、ストレスを解消することができます。好きな音楽を聴いたり、映画を見たり、読書をしたりするのも良いでしょう。スポーツ観戦やライブ参戦など、非日常的な体験を取り入れるのもおすすめです。
 

4. 家族や友人と過ごす

大切な人と過ごす時間は、心の支えとなります。家族や友人と会話をしたり、一緒に食事をしたり、楽しい時間を過ごしましょう。
 

5. 新しいことに挑戦する

新しいことに挑戦することで、気分転換になり、ストレス解消に繋がります。習い事を始めたり、旅行に出かけたり、ボランティア活動に参加したりするのも良いでしょう。
 

6. リラックスできる環境を作る

アロマオイルを焚いたり、音楽を聴いたり、ゆっくりとお風呂に入ったりして、リラックスできる環境を作りましょう。


7. 専門家に相談する

ストレスが深刻な場合は、カウンセラーや精神科医などの専門家に相談することをおすすめします。一人で抱え込まず、専門家の助けを借りることで、心身を健康な状態に保つことができます。

 

医療機関の取り組み
 

1. 長時間労働・夜勤の削減

長時間労働や夜勤は、医療従事者の心身に大きな負担をかけています。医療機関は、勤務体制を見直し、長時間労働や夜勤を削減することが重要です。
 

2. 人手不足の解消

人手不足は、医療従事者の業務過多の原因となります。医療機関は、積極的に人材を確保し、人手不足を解消する必要があります。
 

3. 職場内コミュニケーションの活性化

円滑な職場内コミュニケーションは、ストレスの軽減に繋がります。医療機関は、コミュニケーション研修などを実施し、職場内コミュニケーションを活性化することが重要です。
 

4. メンタルヘルスサポートの充実

医療従事者向けのメンタルヘルスサポートを充実させることも重要です。カウンセリングサービスの提供や、ストレスマネジメント研修の実施など、様々な支援体制を整備する必要があります。

 

まとめ

医療従事者は、多くのストレスを抱えやすい職種です。しかし、自分なりのストレス解消法を見つけることで、心身の健康を維持することができます。

また、医療機関も、長時間労働や夜勤の削減、人手不足の解消、職場内コミュニケーションの活性化など、様々な取り組みを進める必要があります。

医療従事者一人ひとりが、心身ともに健康で働ける環境を作ることで、質の高い医療を提供できる社会を実現することができるでしょう。医療従事者の方々に、少しでも役立つ情報になれば幸いです。