長引く不況の影響か、モラトリアムの極致・大学にも「就職不安」が蔓延して久しい。

旧来の、のんべんだらりと人生の猶予期間を浪費する学生は少なくなり、その代わりに現れたのが「意識の高い学生」である。彼らは、サークルやアルバイトを就職活動の要素の一つとして考え、いち早く行動することでその他大勢と差をつけることを目的に行動している。

いわゆる、「大学一年生から既に就職セミナーに参加する」タイプの学生だ。

それは結構なことなのだが、彼らの「意識の高さ」は研究室選びにも累を及ぼしている。わたしの大学だと学部生の研究室配属はB3の秋であり、研究室訪問などは夏休み以降に行われるのが通例である。しかし、「意識の高い」学生たちは配属のはるか手前の学年で研究室訪問に訪れる。

おそらく、「早めに研究室所属学生の進路状況などを把握することで、就職に役立つ研究室を選ぶ」ことが目的なのだろう。しかしながら、悲しいかな状況は常に変化している。彼らがリサーチした時点で就職に有利な研究室があったとしても、実際に彼らが就職活動をするときにも有利であるかどうかはわからない。逆もまたしかりだ。

そもそも、大学の研究室という機関自体が浮世離れした世界であり、一般に言う就職とはだいぶ距離がある、ということを彼らは理解していないようなのだが……

何が言いたいかといえば、「意識の高い学生」が群れになって研究室を訪問した場合、彼らの対応をするのはほぼ院生の仕事になる、ということである。

研究室の概要、自分の研究、先輩方の進路etc…もろもろの説明が常に実験を抱えて右往左往している院生=わたしの肩にのしかかる。これはなかなかラブリーな展開である。


絶叫ハーモニクス

地獄の営業マン キュゥべえさん

このように地獄への片道切符的な感じで研究室のネガティブキャンペーンを行ったにも関わらず、今年のB3は5名と大漁である。

厳しい環境にもめげず、当研究室を希望した彼らには是非とも良い研究生活を送ってもらいたい…と同時に、いつの間にか彼ら全員のお世話係になっている自分の意志の弱さに嘆息する日々である。