地方でのロケを終え、最終便の飛行機乗り込んだ。田舎者が故に地方で仕事をすると、その景色の何処かに故郷を重ねてしまう。


 僕は故郷がどうしても好きになれなかった。冬は雪が降るから嫌い。鈍臭くて、絶妙にダサい街が嫌い。地元以外を知らずに死んでいく事に、何の違和感も感じていない人が嫌い。ただなんとなく大人になっていくだけの街。僕は死んでもそれが嫌だった。


 いつの間にか寝落ちしていた。夢を見た。


 僕の人生の一番最初に訪れた地獄の夢。

「残さず食べましょう週間」

 僕は小学生の時、人よりもご飯が食べられなかった。勿論、残さず食べることは正しい。ただ、正しいが故に、プレッシャーで普段よりも食べられなくなってしまう。昼休みの時間が近づくと、クラスメイトは続々と食器を片付け始め、男子の一軍は校庭へ。女子はたむろして何処かへ消えていく。昼休みになっても僕は食べ終えられない。先生の目が気になる。もうちょろまかして残すことも出来ない。しかし、一口だって進まない。

「どうして僕はみんなが当たり前に出来る事が出来ないんだろう」

 校庭からはクラスメイトがキックベースをしている歓声が聞こえる。僕は教室に取り残されたまま、目の前の残飯をぼんやり眺めていた。


 そこで目を覚ます。機内アナウンスが東京の気温を伝えている。窓のカーテンをあげると、煌びやかに光る街並みが見えた。他人同士が繋がり一つの魂を紡ぐ。そんなありふれた景色が、あの光なのだ。


 その光、一つ一つに人生がある。


 僕は相変わらず皆が当たり前のようにこなしている様を、窓外の景色として捉えている。数年前、何もかもが嫌になって故郷を飛び出した。そこからは本当に色んな世界を見た。地元に残っていたら見れなかった景色や出会いが幾つもあった。それなのに、僕は未だあの頃の教室に取り残されたままでいる。