課題

「生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の相談業務」

生活困窮者自立支援制度における自立相談支援事業の相談業務と、生活保護制度の相談業務の相違点と課題について、生活困窮者自立支援制度が創設された背景を踏まえて論じなさい。

 

 

参考文献

社会福祉士養成講座編集委員会編『低所得者に対する支援と生活保護制度第5版』中央法規出版2019年

 

 厚生労働統計協会編『国民の福祉と介護の動向』厚生労働統計協会、2019年

 

 渋谷哲編『低所得者への支援と生活保護制度第4版』㈱みらい2017年

 

 厚生労働省 自立相談支援事業の手引き

https://www.mhlw.go.jp/content/000520647.pdf

 

 厚生労働省 生活困窮者自立支援制度について https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/2707seikatukonnkyuushajiritsusiennseidonituite.pdf

 平成27年7月

 

 

本文

生活困窮者自立支援制度が創設された背景には、2012年(平成24年)2月に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」において「生活支援戦略」が盛り込まれ、生活困窮者対策の充実強化と生活保護制度の見直しが打ち出されたことにある。2015(平成27)年4月より施行され、生活保護に至る前の段階の自立支援の強化を図るため、生活困窮者に対する自立の支援に関する措置として、生活困窮者自立相談支援事業、生活困窮者住居確保給付金の支給、その他の事業などを行なう。

 生活保護における相談援助活動の位置づけとして、生活保護制度は、日本国憲法第25条における生存権の理念に基づき、国が生活に困窮している人々に対して、国の責任で生活を保障する制度である。生活保護法の目的である「健康で文化的な最低限度の生活の保障」と「自立の助長」を目指して行なわれるのが、生活保護における相談援助活動である。生活保護における相談援助活動は、生活保護の実施機関である福祉事務所において行なわれる。生活保護法の中で、相談援助と支援は、以下のように位置づけられる。2000年の地方分権一括法に伴う生活保護法の改正において、最低生活保障とそれに伴う指導・支持にかかわる業務は「法定受託事務」、要保護者への相談・助言と被保護者への相談・助言にかかわる業務は「自治事務」として位置づけられる。2005年の自立支援プログラムの導入によって、支援活動も「自治事務」として位置づけられたといえる。

生活相談者が最初に訪れる相談窓口が「自立相談支援機関」であり、全体の流れの窓口ともなるものであり、重要な役割を果たす。「生活困窮者からの相談に応じ必要な情報の提供や助言等を行い、認定就労訓練事業の利用のあっせん、プランの作成等の支援を包括的に行なう自立相談支援事業を実施する機関」と定義されている。自立相談支援機関によって、自立支援計画等がたてられて、あるいは緊急的な支援が必要と判断され、本人の状況に応じた支援が行なわれる。その内容は、本人の状態に応じた就労支援、法に基づく事業、法以外の事業・支援となる。 地域への働きかけとして、生活困窮者が、地域の中で支え合いながら生活することができる「場」をつくり、その中で本人が持つ様々な可能性を十分に発揮できるよう地域への働きかけを行っていく必要がある。このためには、地域の社会資源を把握することが求められる。支援員が一人ひとりのニーズに対応する解決案を提示するためには、その前提として地域で活用できる社会資源を把握するとともに、関係機関といつでも相談できる関係を構築することが鍵となる。地域に様々な社会資源がある場合は、それらをいつでも活用できるようにしておくことや、必要な社会資源が不足する場合は、自治体や関係機関と検討し、開発することが必要である。また、これらの社会資源と連携し、適切にチームによる支援が行えるよう、日頃から地域の中で関係機関・関係者とネットワークを築いていくことが重要である。特に、認定就労訓練事業など多様な働き方の場としての「出口」の開拓と、社会参加のための場づくりは大切である。生活困窮者の受入れに関する企業側の理解の促進を図ることにより、働きやすい環境づくりを目指すことも求められる。新法に基づく事業と生活保護法に基づく事業が連携して、連続的な支援を行うことが重要で、自立相談支援事業において、生活保護が必要な場合には、確実に生活保護につなぐこととなっている。包括的な相談業務にくわえ、地域との連携など幅広い業務内容になっている。生活困窮者自立支援制度における自立相談支援事業の相談業務、その相談にあたる人材は、自治事務である生活保護制度の相談業務と違い、多数、公的身分でないにも関わらず公的な業務を要するという難しい面をもつ。多種にわたる機関と連携可能などの人材育成が必要となる。