このシリーズはこれまで多くの方に馴染みのある曲を取り上げてきました。
私にとっては伊藤咲子さんの「冬の星」
もメジャーな曲なのですが、こちらは予想以上に知られていないようでしたので、ちょっと淋しい感じもいたしましたが・・・。
でも、今回はシングルカットもなく、アルバムの中にひっそりと収められている曲なので、ご存じの方はますます少ないことでしょうね・・・。
あがた森魚さんの「冬のサナトリウム」。
1972年9月発売のアルバム「乙女の儚夢(ロマン)」に収録されている曲。
前に「薔薇瑠璃学園」 や「秋の調べ」 を記事にしましたが、その曲もこの「乙女の儚夢(ロマン)」に入っています。
「儚(はかな)い夢」と書いて「ロマン」と呼ばせているところがロマンあふれるところですが、このアルバムには全体として希望に満ち満ちていた乙女の軌跡をテーマにしているのだと思っています。
あがた森魚さんの制作意図とは別に、楽しみ方をファンの個人個人の想像に任せていただけるとするならば、このアルバムには大河とも言うべき本流となるテーマが流れていて、その中にいくつもの支流が存在しているように感じています。
その一つの支流が「春の調べ」「薔薇瑠璃学園」「秋の調べ」そしてこの「冬のサナトリウム」ではないかと。
「春の調べ」では希望を胸いっぱいに膨らませていた少女が迎える結末。
それが「冬のサナトリウム」。
「薔薇瑠璃学園」は途中の曲ながら全体を俯瞰して、そして将来を暗示しているかのような曲。
私の感性はズレているような気もしますが、それなりにいろいろと想いをめぐらせることができるのは楽しいところです。
サナトリウム。
堀辰雄さんの小説に出てきそうな舞台設定ですね。
しかも冬。誰も訪ねては来ない。
ピン、と張った冷たい空気の中で、いっそう鋭敏な感覚を呼ぶ孤独。
もし機会があれば、このアルバムを通して聴いてみていただくといいと思います。
9’Club
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◆冬の訪れ