先日の記事「岸辺のアルバム」 に関連して、山田太一さんの対談記事を見つけましたので、ご参考までに転載します。
1977年11月1日の新聞記事。
===以下、新聞記事===
テレビ人語録 山田太一氏
汚いことも出したい
近ごろのドラマは厚化粧だという。「大作というと、なぜか主人公はえらい人ばかりで、役者もいっぱいそろえる。そうしなけりゃあ、当らないと思っているんですねえ」。
あなたならどんなものを作りますか。「平凡な一家、三、四人の物語で三時間というのをやってみたい。ちゃんと感動をさせられると思う」
主婦の不貞を描いて話題を呼んだ「岸辺のアルバム」(TBS)の作者である。十一月に放送する「男たちの旅路」(NHK)も好評にこたえて三たび目の登場だが、ねらっているのは「偏見でもいいから意見のある人間を出すことだ」という。
「テレビドラマに常識的な人間ばかり出てくることがおかしいと思う。現実にはみんないろいろ意見を持っている。若者には理解があるような顔をしている中年だって内心では、若いやつは礼儀知らずで、人生をナメてやがると思っているかも知れない。それを書きたい」
_きびしいんですね。
「一般にテレビは温かすぎるんじゃないですか。世の中は汚いこともある。きれいな生活をしている人でもグロテスクな面もあるということを書く。しかしその半面、必ず救いのあるようにしているんですが...」
_それ、局側の注文ですか?
「いいえ、注文は話の進行をもっと早くしろ、役者をもっと多くしたらどうかといったこと。たいてい、にぎやかにしたがる」
_それじゃあ、ショーを作るようなもんじゃないですか。
「そういうものもあっていいけれど、みんな同じような注文だから困る。ドラマ作りはもっと多様性がないといけない。制作者は個性的なドラマツルギーを持つべきじゃないですか」
去る四十年に松竹助監督をやめて放送作家生活。書くのは週に一本だけで、かけ持ちはしない。しかし精魂こめて書いても一回の放送で消えてしまう。
はかないと思いませんか。「それが放送作家をダメにしてしまう」。
小説家に転向する人もいますね。「損得からいうと、その方が得だけれど、僕はテレビが好きなんです。小説とは比較にならないほど多くの人に見てもらえるし、すぐ反響がありますからね」。
一年先まで執筆予定がつまっている。
四十三歳。(洋)
===以上、新聞記事===