引き続き前の記事 から。
■定番のナレーションはあるか
初期は以下のナレーションが入っていた。(語り:横内正)
およそこの世のしくみというやつは
悪党ばかりに味方するなら
地獄 極楽 裏表
歯車ひとつでその仕組み
ひっくり返せぬものでもあるまい
このおかしな連中の胸のうちにあるものは
言ってみればそんな思いだろうか
途中からナレーションは以下のように変化している。
地獄 極楽 裏表
右も 左も 賽の目も
裏を返しゃあ 丁が半
それがこの世の仕掛けなら
金も力も何のその
歯車ひとつで 天と地を
ひっくり返してみせようか
また、定番のナレーションがドラマの中盤あたりに流れるのは、他の例を知らず、珍しく感じられた。
■決め台詞はあるか
番組の途中から、いよいよ敵方に対して、超法規的措置を取るとき、次のような決め台詞をメンバーが代わる代わるに口にしている。
私利私欲のために世間を欺き
闇から闇への極悪非道
どっこい闇には闇のお白洲がある
三途の河原を引き回し
冥土へ追放
地獄へ遠島 申し渡す
■隠し目付に協力者はいるか
第一話を見る限り、明らかに協力者の潜在はいる。
前述の通り、鉄五郎が役人姿で奉行所に出入りした上で、調書を閲覧できるのも、協力者がいたからこそ、かも知れない。
■からくり師として、春楽のプライドに火がついたか
「オランダ人形は人間仕掛けのカラクリか」の回で、オランダ製のからくり人形が登場する。
大きさは等身大で、ぎこちないものの、人間のようなレベルの動きをする、という実に精巧なもの。
春楽はさぐってみたが、謎は深まるばかり。
春楽自身は三太を作って、江戸随一のからくり師としての誇りを持っていたが、このオランダ製のからくり人形を目にして、遂行すべき業務を忘れるほど、そのからくりの秘密を知りたいとやっきになる。
いつもは冷静に事を運ぶ春楽だったが、この時ばかりは、動揺し、悔しさを隠し切れないという、人間味のある人物として描かれており、興味深い。
■悪の正太郎君はあらわれたか
ある回で、三太が敵方に奪われた。
詳しい事には触れないが、三太と言えども意思は持ち合わせてはおらず、操作する者によっては悪用されてしまうのである。
これは、「鉄人28号」や「ジャイアントロボ」でも同じようなエピソードがあり、その点で「キカイダー」で設定された「良心回路」という概念は卓抜していると感じた。
■出演者のスケジュール調整は困難だったか
隠し目付は全員で六人だが、勢ぞろいするケースはめったに無く、通常は四人程度。三人のときもあり、これは流石に忙しい。
そういう時は菊次の芸者仲間のお春(千代恵)に助力を請うことが数回あるが、彼女は隠し目付の存在を知らない。
手伝いはするものの、いつも大変な目に遭うため、最後のほうでは「関わるとろくなことはない」と及び腰になる。
キャストされた役者さんは、当時みなさん引っ張りだこで、スケジュール調整が難しかったことが伺える。
■最終回のラストシーンにはびっくりしたか
驚きの最終回。人智を超えた内容。さらにラストシーンは、まさか時代劇でこのようなものが見られるとは、というもの。
■エンディングの映像はどんなものか
暗闇に、朝陽が少しづつ昇ってくる映像。
■音楽はどうだったか
主題歌は「愛のめぐり逢い」。
作詞:山口洋子
作曲:猪俣公章
編曲:小杉仁三
唄 :愛川由美
(ワーナーパイオニアレコード)
劇伴はほとんどが主題歌アレンジだが、印象的なものはフォルクローレを連想させるアレンジのもの。
■サブタイトルには特徴があるか
「天にのぼったか地にもぐったか」
「吉原は燃えているか」
など、すべて疑問形のサブタイトルで統一されている。
■このドラマは何かから影響を受けているか
他の方の記事を拝見すると「大江戸捜査網」の作風に似ているということで、これが代表的であり定説であると言ってよいと思われる。
他にどうかと無理やりにこじつけてみると、以下のものはどうかと夢想してみた。
・秘密戦隊ゴレンジャー
オープニングシーンのところでも少し触れているが、メンバーの一人一人のキャラクターが色づけされている(九十九内膳正は除く)。
ちょうどこのドラマが放映される前年に放送開始された、「秘密戦隊ゴレンジャー」がお子様の間で大好評。
このドラマに当てはめると、以下の通り。
春楽 :ミドレンジャー
菊次 :ムラサキレンジャー
鉄五郎:チャレンジャー(美しきチャレンジャー)
お駒 :ダイダイレンジャー(またはオレンジャー)
左吉 :アオレンジャー
もっとも、キャラクターを色で表現するのは過去にもあり、例えば「科学戦隊ガッチャマン」にも明確ではないにしろ、その要素が見られるし、「仮面の忍者赤影」「キャプテンスカーレット」等、洋の東西を問わず例を挙げ出したらキリがないかもしれない。
しかし、子供社会の中とは言え、ゴレンジャーは大ブームだったことは事実であり、その要素を巧く取り入れたのではないかと推測するのは、あながち的外れでもなさそうに思われる。
・海外スパイドラマ/映画
マスクの部分でも触れたが、あのマスクを作ったり、顔からはずしたりするシーンを見ると、どうしても「007シリーズ」や「スパイ大作戦」を連想する。時代劇の中に、そのテイストを取り入れたのではないかと推測。
・鉄人28号/ジャイアントロボ
からくり人形・三太が敵方に悪用されてしまい視聴者をはらはらさせるというのは、ロボット(このドラマでは、からくり人形)物の定番かも知れない。
・マジンガーZ
三太の攻撃能力の一つである、両拳の発射はマジンガーZの「ロケットパンチ」そのものだ。
ということで、いろいろなジャンルの面白いものを時代劇の中に大胆に取り入れようとしたという、意欲に満ちた作品である可能性は高そうだ。
■どなたか深い研究をして下さる方はいらっしゃるか
記事冒頭(最初の記事)で記しましたとおり、最初は斜に構えて観ていましたが、そのうちに面白くなって、この番組の再放送を観るのが楽しみになってきた程でした。
好き勝手なことを長々と記してきましたが、面白いと思ったことは一通り挙げました。
ただ、残念ながら私は研究者タイプではないので深堀した記事を投稿することができません。
もしどなたか、研究者タイプの方がこの記事をご覧になったら、この私の記事をきっかけにして、学術論文のようなレベルの高いものを作って、ご紹介いただければ、喜んで読ませていただきます。
例えば、このドラマでは「改易」「お家再興」を背景にした回が多くありますが、「文化」の時代に実際にどれほどの「改易」があったのかを調査した上でこのドラマを考察する、とか。
もう少し広げて、「毎日放送制作枠4作品」のテレビ史の中での評価、というのも面白そうです。
(あるいは三船プロダクション制作番組の研究、など)
私にはとてもできそうにありませんので、どなたかお願いします。
(丸投げ)
注)2007年3月15日に、マジンガーZの記述を追加。