1 はじめに
敗因分析の方法に関する後半は、敗因分析の際に注意するべきポイントを説明していきたいと思います。
2 現状分析をやめない
多くの2回目以降の受験生は、成績が返ってきて出題趣旨がでると、友人の合格者等に再現答案を見てもらうなどして、敗因を探求していきます。この時点では、ある程度現状分析が進んでいるものと思います。
大切なのは、現状分析をした後、自分の立てた対応策が効果を生んでいるのか常に確認することです。これは、答練を受けたり、合格者に聞き続けるなどして、確認し続ける必要があります。不合格を生じさせた欠点は、これまで数年にもわたる法律の勉強の中で、変えることができなかった欠点なので、そう簡単には直りません。治らなかった場合は、現状やっている改善策に変更を加えて、手を変え品をかえ、欠点が改善するまで、改善し続ける必要があります。
たとえば、短答が苦手というような欠点であれば、コンスタントに短答模試を受けるなどして、現状の実力をチェックすることができます。弱点の中で、特に苦手な部分(例えば民事系の中でもいつも民訴で点が取れていない、民法で点が取れていないなど)が浮かび上がってくれば、弱点克服はもうすぐではないでしょうか。
僕の場合は、答案が答練でも4枚、5枚しか書けないというのが最大の欠点でした。答練ですら4、5枚ですから、問題が難しく、緊張・疲労も段違いな本試験ではもっと悲惨なことになります。具体的には、2回目の本試験の際には、3枚程度になってしまったりしました。後で、僕がとった筆力改善の方法は、記事にするつもりですが、今回は、9月から、筆力改善を続け、翌年の5月まで、他の方のブログ等も参照したり合格者に相談したりしてながら、常に自分の起案している答案の枚数を記録して、現状を把握しつつ、いろいろな方法をためしました。その結果、各科目平均1枚程度分量を増やすことができました。正直いってそれでも、受験生の平均よりも少ない分量だと思うのですが、完全に弱点が克服される以前の段階、言いかえれば多少改善された程度の状態で合格点を超すに至りました。
ちなみに、2年目では、2か月くらいいろいろ試して、うまくいかなかったので、分量を増やすのをやめました。当時は、特に自分の書いた枚数の記録などもしておらず、現状分析も不完全なものだったと思います。
3欠点から逃げない
たしかに、今振り返ってみれば、なかなか直らない欠点というのは、本当に目をそむけたくなる現実なのであって、できれば蓋をしておきたいものです。よく短答が苦手なのに、短答模試を一切受けない方というのが周りにいました。客観的に見れば、そのような人こそ短答模試をうけなければならないのですが、なぜか逆の行動をとっていました。自分のだめさ加減を突きつけられるので、受けるのがためらわれ、自分のやるべき行動と逆の行動をしてしまうのだと思います。その気持ちは非常に理解できるのです。しかし、現状から目を背け続けた結果、5月には結局結果を出せず、模試で凹む以上の、深手を負うことになるのです。どうせ凹むなら、5月や9月に凹むのではなくて、早い段階から少しづつ凹んでいきたいものです。これは、短答に限らず、論文模試、日々の起案にもいえる話だと思います。
4 2回目受験性の注意点
短答式に通過した次回2回目の受験生は、初めて法務省から成績を貰います。そこで、すべての科目がわることもありますが、多くの場合、よい科目と悪い科目とがあります。この場合、悪い科目が、不合格の直接の原因になのは明らかです。なので、点数の悪かった科目について、ケアを厚くするのは当然です。しかしここに2回目受験生を待ち受ける大きな落とし穴があります。それは、前年度できた科目の点数が急落することです。実は、この失敗は、多くの受験生が経験しており、前年度それなりに良い成績だったのに、2年目も不合格になる受験生の典型的な不合格パターンだと思います。
僕も、一年目は94点程度とれていた公法系が、2年目は67点でした。一年目は、民事系が110だったので、かなりの時間と意識を民事系に投下しており、公法系のケアがかなり手薄になっていしました。特に年明けから、公法系の時間がかなり減ってしまっていました。67点だったのは、2年目に憲法の判例の読み込みを怠ったというのも大きいと思っています(ちなみに2年目の民事系は143に上昇)。結局のところ、前年度よい科目も、コンスタントに努力を積み重ねなければ、実力は劣化しています。このような事態を防止するために、特に年明けからは、ある程度すべての科目に均等に時間と労力を割り振っていった方がよいと思います(今年はそのことをかなり意識して、年明けから科目に割り振る時間を均等にしました。)。
法律というのは、恐ろしくて、勉強を続けないと劣化してしまいます。足りなかった部分を埋める勉強だけではなくて、足りなかった部分に加えて、今までやってきた部分をもくりかえす勉強をしなければなりません。そのことを忘れると、僕のように足をすくわれてしまうおそれがあるので注意が必要です。
補論 模試から逃げない
この話と少し関連するのですが、直前期の全国模試についても、逃げずに受けたほうがいいと僕は思っています。これは、模試をコンスタントに受ける受験生には関係ない話なので、そのような受験生は読み飛ばしてください。
さて、直前期の全国模試(特に辰巳)は、完全ではないものの、合格率とかなり強い相関を示しています。そのため、直前模試でD判定、E判定を貰おうものなら、かなり凹んでしまいますし、場合によっては精神的に参ってしまいマイナスな影響を受けてしまうこともあると思います。確かに、3振制度がなくなった今、受け控えという選択はなくなり、直前期に実力を判定する必要はそれほど高くないかもしれません。そうすると、わざわざ凹まされるリスクを負ってまで模試を受ける必要はないとも考えられます(もちろん、自分の性格を考え抜いたうえであえて模試を受けないという選択をするのはありです。)。ただ、D、E判定がでても、実際には落ちたわけではないですし、現に周りにもD、E判定から逆転合格した人もたくさんいます。所詮模試なのだから、悪かったら、直前期においては、気にしなければよいだけの話です。また悪かった箇所をしっかり反省すれば、直前期でも欠点を埋める強い動機付けになり、その年の合格にとってプラスになるでしょう。また、いうまでもありませんが、模試でよい点数を取れれば、気分よく本試験を迎えられて、大きなアドバンテージになります。このように考えると、当年度の合格にとっても、模試を受けることは、よいことづくめなように思います。
一方で、模試を受けないというのは、それ以上に万が一落ちてしまったときにおける自己分析のツールを失うことになるのが地味に痛い事態だと思っています。単純に、最終的に翌年以降も含めたどこかの時点で合格するという観点から見たときに、マイナスだと思います。たとえば、模試を受けないで短答で不合格になるとします。そうすると、論文について、全国レベルで自分の実力を図る機会は、本試験において採点を受けることができない以上失われてしまいます。そうすると、その一年間やってきた勉強の成果が全く確認できないことになってしまい、今後の方向性を考えることができなくなります。それは、最終合格という観点から見たときに、とても大きなディスアドバンテージを背負うことになります。来年は、短答がとても激戦になり、受験生の半分程度が短答で不合格になってしまうわけなので、短答不合格の受験生の中でも、模試を受けて論文の実力判定をしてきた受験生とそうでない受験生の間で、不合格時点において差がついてしまうように思います。
また、短答に合格している場合でも、本試験論文不合格時における実力判定の資料が増えてよい影響があると思います。僕は、2回目に落ちたと年の全国模試の刑事系の点数が悪く、本試験でもあまり伸びなかったことから、刑事系が根本的に間違っていたと思った記憶があります。
確かに、不合格時を考えて、模試を受けるというのは、本末転倒なような気もするのですが、模試を受けること自体は、最終合格という観点から見た場合に、大きなプラス要素になると思うので、上記のような観点も頭の片隅に置いてもよいと考えています。