予備校の有効性
僕は、過去三年間所属ロースクールの答練グループ申し込みの幹事をしていました。全体的感想としては、答練をやっていた人の合格率は、答練を申し込んでいない人の合格率よりも高いものだったと思います。しかし、答練を漫然と受ければ、エスカレータ式に合格するわけではありません。あくまで答練は、実力を向上させるためのツールであり、そのことを意識しないまま、漫然と受け続けることは時間の無駄になるばかりが有害です。
答練に行っている人のほうが合格率が高いのは、真実だと思いますが、行かなくても十分合格できるし、行っている人の大半は不合格になっているという事実も見過ごすことはできないのだと思います。
以下僕が、過去した失敗と最後の一年間の答練の利用法を記しておきたいと思います。
失敗した利用法と受け方の改良
ロースクール在学中からT予備校の答練を受け始めました。当時は、合格者が答練を受けていたという漫然とした理由から受け始めました。僕は未習者コースでそもそも答案の書き方自体わかってなかったので、答案の型を知るという意味ではある程度意味がありました。しかし、当時は、漫然と答練でいい点を取ろうと思って受けに行っていましたし、目的意識が薄弱だったように思います。
当時、なぜ答練を受けに言っているのかと行かれたら、書く練習と山当て、知識の補充、自分の実力チェックくらいの感覚だったと思います。しかし、その目的は完ぺきな間違えではないものの、合格に直結するものではないと考えています。その理由は、これらの目的を達成するためには、より効率的な手段が存在するからです。書く練習であれば友人とゼミでも組んで、起案すればよいですし、なにも答練の問題を使わなくても、過去問という最高の教材が存在します。山アテをするにしてもあとで問題だけ、もらって答案構成すればよく実際に書かなくても構成のみに止めれば、もっとたくさんの問題を解くことができます。知識の補充も自分で問題演習をしたり、判例を読んだりした方が、効率的にできます。実力のチェックについては、日ごろの答練は一定の指標にはなるものの、全国模試と異なり、採点者ごとの採点枚数が少ない等の事情から、必ずしも実力が正確に反映できるものではありません。
2年目も、同様の目的で答練をこなしており、余り効率の良いものではなかったように思います。
1,2年目の間、答練は休まず受けに行っており、復習もしっかりしていましたが、特に答練に向けての勉強はせず、漫然と受けていました。この利用法の結果、最終的には、模試、本試験を通じて合格ラインに入る実力をつけることはできませんでした。答練を単なる問題演習の教材として使う利用法は効率的ではなかったからだと思います。
3年目は、答練の活用法を変えました。変えたきっかけは、3回目で、300番で合格した先輩が、答練で、逐一目的意識をもって、弱点を克服していたことにあります。その先輩のやり方は、自分の欠点を書いたチェックポイントシートを作って、答練の前に読み込み、答練のあとに、どれだけ達成できたかを検証するものです。チェックポイントシートを作る前提として、自分の弱点をしっかり把握しないといけないので、自己分析が必然的要求されます。しかも、文章かするとシビアにできたできない等がわかるので、結構凹みます。以下に、僕のチェックシートを上げますが、全科目共通の項目と、科目ごとのチェックポイントを作っていました。何度も、すべての項目をチェックすることで、自然に特に意識しなくてもチェック項目を外さないようにできるよう努力しました。もはや、重点は答練自体で問題をこなしたり、知識を得たりすことではなく、弱点の克服という目標に向けられていました。
しかも、3年目受講したLECでは、公法→民事→刑事の順番に、答練が行われて行きました。そこで、答練に合わせて、毎回科目全体を外観できるように計画をたてて、勉強してきました。これにより、何度も科目全体を繰り返すことになったので、記憶の定着効率が一気に向上しました。
このような方法によってすぐに欠点が解決されたわけではありませんが、目的意識をもって答練を苦しみながら受けた結果、徐々に弱点が克服されて行き、模試の点数も伸びていきました。模試の3年目の成績の伸びが一番よかったですし、自分の実感としても力が伸びているのがわかりました。
答練は通学で
僕は、答練は通学で受けなければ意味がないと思っています。上記のような、チェックポイントを本試験同様の環境で受けて、弱点が本試験で現れないように訓練するのですがから、できるだけ本試験と同様の雰囲気の場所で受け手こそ意味があるのだと思います。
通信では、120分以上の時間かけてしまうのこともありうるので受講効果が高くないように思います。
どの予備校を選ぶか。
上記のような目的意識を持った学習は、別のどこの予備校の答練でもできると思います。だから、どの予備校を選ぶかとう点については、好みということになります。
僕は、去年までは、工藤先生がいたレックが値段、問題の質、カリキュラムの点から一番すぐれていたと思いますが、今年は工藤先生がLECの答練をしていないので、どこの予備校も似たりよったりになったと思います。
今年は、伊藤塾が安いらしいので、少しおすすめかもしれない程度です(ただ、僕は伊藤塾を受けたことがないので、問題の感じはよくわからないです。)。
ただ、答練は通って、他の受験生がいる場所で、本試験と同様の環境で受験してこそ意味があると思うので、通えない場所にある予備校は検討対象から外すべきでだと思います。
なお、添削についてはどこも似たりよったりではないでしょうか。どの予備校にもおそらく適当な採点をする人はいるし、そもそも採点を受けたから自分の本質的欠点が露見するということはそんなにないので(本質的欠点は自分でうすうすわかってるはずです)、有益な指摘を受けられていたらラッキーくらいに思っておけばよいと思います。
答練に行かなくていい人
最初から、事務処理能力が高くて、答練に行かなくても時間が管理ができ、バランスの良い答案を賭ける人も一定数いるようで、そういったひ人は、行かなくても好いと思います。ただ、そういった人は、まれにいますが、そんなに多くはいない気がします。 特に対策なく、8枚答案書けてしまうような猛者もいらないと思います。これも、全受験生のごく一部ですが。
チェックポイントリストの例(失敗するごとに書き足して行きました)
①問いに正面から答える。問いの構造を把握して、問いが要求する答案構成を見定める。ここでしくじると、点が取れない。問題文が長い。複雑。指示があるとき、省略があるときなどは特に注意。項目が分かれていたり、数字が分けられていたら、項目ごとに書くことを考える(H24憲法等H25憲法)。←分けてだめなことは分量が増えるくらい。分けろ!
問題の所在を先に書いてから、問題になる理由を書く。逆は、厚ぼったくなる。
冒頭のリードには、点がないし、くどい答案になる危険があるので、端的に書く。
(例:H19商法 …という措置を取るべきである。なぜなら・・・)
(× ‥‥である。そして、…である。だからという手段を取るべきである。点にならないし、くどい)
②最後の問題は、しっかり時間と分量を割いて、丁寧に書くこと。ここで合否が決まる。筆力不足は実力。
③両極の事情がある問題は、かならず両方触れる。
そのために「確かに・・しかし・・」と常につぶやくようにする。
消極方向・積極方向の事情がたくさんある場合には、項目を分けて検討する。
規範的要件は特にねちねちする。
→反対事情を上げたあとの意味づけを忘れない。
④リスクヘッジ:論点書くか迷ったら、必ず短めに触れる。周りの受験生が書いてくるか考える。自分だけ、書かなかったら、それだけで死亡事由。検討事項自体を思いつくが、どれかはわからないときは、一本に絞らず、すべて他の構成について、短く答案に載せる。
→例えば、3つ書くことがあって、2つ書いた時点で、スペース時間を使い果たしていても、3行くらいで、結論と理由は書く(結論→理由。事実を全部、拾うのはあきらめる)。前提的基本事項は必ず。(セミ:強制処分、訴因変更可否)
⑤当たり前のことは、短く書く。ここで点にならないことを書くと、点を取るべき個所で書けなくなる。触れるだけの論点は、結論と理由だけ。3段論法を使わない。
⑥時間管理は、設問検討事項ごとに。ここで使った5分は、あとの5分より価値があるのか考えよ。5分のオーバーは後まで響く。各設問終了5分前には、着地準備。1枚目は、汚い文字で早く書く
⑦結論の妥当性は担保されているか、非常識な結論を出していないか。常に注意。
⑧3段論法堅守:条文文言→趣旨→規範→事実適示→評価→規範で立てた後と一言一句一致させる。自分で立てた、規範には責任を持つ。事実に【必】【相】などを記載。使ったらチェック。結びは一段下げて、よって・・・といえる。
⑨現場思考問題は、条文、基本原則(判例)の趣旨にさかぼって、短く書く。規範を立てるときには、事実関係を拾える規範を立てる。
考えたことがない問題は、既知の論点とつなげるまえに、まず原理原則から処理せよ。
⑩当初した答案構成を間違えたと思ったとき。本当に間違いなのか。消す間に確認(間違いが勘違いの時がある。) 落ち着いて。その後の時間管理が適当にならないようにする。
⑪要件は、メリハリを付けつつ、全部検討する。問題にならない要件は、結論だけ。
⑫主張反論の当否検討問題。
主張のあてはめを聞いている場合には、主張自体の当否はあまり書かずに、端的に検討する。
⑬判例の射程問題:判例において重視された事実関係における要素を念頭に判例の背後にあるルールを提示し、事案にあてはめる。
(ⅰ射程→ⅱ判旨の理由の妥当性)
⑬誘導の中の問いの見抜き方…すべて問いをピックアップした上で、誘導内部で答えが出ないもの、説明が不十分なものが問いであり、答案に載せるべき事項
科目別のチェックポイントリストの例:
会社法
①取締役会、株主総会決議が出てきたら、特別利害関係を疑え。
触れるときは、本当に短く。
②取締役会決議が出てきたら、利益相反を疑え。
③利益供与は常に疑え、(以上、隠し論点3兄弟) ★
親子会社関係の時は特に注意。
④株式比率は隠されているの、書きだす。実は全員の同意があることがありうる。
⑤条文を引き負けるな。
⑥訴訟要件は、あっさり全部検討
⑦差し止めが出てきたら、仮処分の条文を指摘する。
⑧多額の借財と、利益相反の観念競に注意。両方検討する。★
本当に落とし易い。先に利益相反書いて、重過失を検討して、その論述を多額の借財に流用するくらいの方がいい。
⑨株主総会の目的の範囲か。取締役会設置会社の株主総会は、309⑤を疑え ★
⑩取消の訴えが出てきたら裁量棄却を疑え
⑪会社法における時系列=出訴期間との関係でチェック。
株主総会決議から3か月の期間を書きこむ。★
⑫問いがいつの時点の話なのかを明確に意識する。
⑬362条1項1・2号該当性明らかなときは、コンパクトに。価額と割合程度であっさりとかく。その際は、考慮要素を削る。趣旨は短めに2行以内で書く。
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