<設問3>

第1 免責債権該当性

1 Aとしては、DAに対して有する損害賠償請求権(以下「本件債権」)は、破産債権(25)であるから、平成252月の免責決定(2531)によって自然債務になる。そのため、Dの請求は認められないと反論することが考えられる。

 Dとしては、本件債権は、Aが「悪意」(25312)で加えた不法行為であるから、非免責債権に当たると反論することが考えられる。

 では、本件債権は非免責債権にあたるか。

2 ここで、25312号の趣旨は、破産者の悪性の強い行為から生じた損害賠償請求権については、破産免責の対象から外す点にある。そうすると、「悪意」は悪性の強い場合に限定するべきであるから、「悪意」とは、単に債権者に損害を与える認識にとどまらず、積極的に債権者を害する意図を意味するというべきである。

3本件では、ADからの預り金をDの承諾を得ることなく、勝手に自己の返済に流用している。しかし、Aは、Mについて1200万円の償還があるから、Dに対して損害を与えることがないと考えていたのである。本件でDに損害が生じたのは、たまたまMの投資先が償還期限前に突然倒産するという偶然の事情から発生したものであって、AにおいてDに損害を与える意図があったわけではない。したがって、Aには積極的にDを害する意図はなく、「悪意」があったとはいえない。

4よって、本件債権は非免責債権にはあたらない。

第2 取戻権(62)に係る主張

1 Dとしては、本件債権は、実質的には預り金500万円の返還請求権と同じものであり、預り金についてDAに「破産者に属しない財産」(62)として、取戻権を行使できるから、Dは手続外で500万円の権利を行使できると反論することが考えられる。 

 これに対して、Aは本件債権は取戻権には当たらないと反論できる。

2 ここで、取戻権は物権的な権利ついて成立するのであり、債権ついては取戻権は成立しない。

3本件では、金銭の所有は、占有と一致するので、ADから500万円を預かった時点で、Dの金銭に対する所有権は失われる。したがって、DAに損害賠償請求権という破産債権を有するに過ぎない。したがって、Dには取戻権は認められない。そして、本件債権につき、Aは知りながら破産債権者表に記載してないが、DAの破産を知っているため、本件債権は非免責債権(25316号カッコ書き)にあたらない。

4よって、Dの請求は認められない。 以上 

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