<設問1>(以下特記なき限り条数は破産法を示す)
1Bの届け出の可否
(1)Bは、一般調査期間(31条1項3号)経過後に届け出(111条1項)を使用している。この届出は、112条1項との関係で届出が認められるか。
(2)ここで、112条1項の趣旨は、調査期間満了後の債権届出を例外的に認める点にある。したがって、「責めに帰することができない事由」とは、届け出をなすことができないやむをえない事情を意味するというべきである。
(3)本件では、BはAの破産の時点において、外国に長期滞在しており、Aの破産手続きにおいて届け出をなしうる状況ではなかった。しかも、Bと内縁関係にあったCの関係は悪化しており、CからAの破産手続き開始を知らせてもらえる状況にもなかった。以上からすれば、本件では、Bには届出をすることができないやむをえない事由があるといえ、「責めに帰することのできない事由」が認められるというべきである。
(4)よって、Bは届け出をなすことができる。
2 Xがなすべき認否
(1)本件では、XがCの届け出た債権を認め、かつ、ほかの債権者も異議を述べていないことから、AのBに対する貸付債権は確定し(124条1項)、「破産者全員に対して確定判決と同一の効力」、すなわち既判力を生じているといえる(124条3項)。そうすると、Xとしては、CがAに対して1000万円の債権を有していることを前提に認否しなければならず、Bの債権については否認しなければならないのが原則である。
もっとも、BはCの届出に際して、異議を述べることができず、手続保障が与えられていないのであるから、Bに対して前記の既判力を及ぼすべきではないのではないかが問題となる。
(2)ここで、破産手続きにおいては、破産債権の存否については、破産債権者間で合一的に確定しなければならない。また、121条3項も「破産債権者全員について」としており、合一的確定を予定しているといえる。したがって、債権の確定による既判力は破産債権者全員に及ぶというべきである(民訴法40条1項参照)。
(3)本件では、Bは破産債権者であるから、前記のCが債権者である既判力が及んでいるといえる。したがって、Xとしては、Bの債権が存在しないことを前提としなければならないので、XはBの債権を否認するべきである。
<設問2>
1前述のように、BとC間には、CがAに対して1000万円の債権を有している点につき、Aの破産手続との関係では既判力が生じている。もっとも、BがCに対して、不当利得返還請求(民703条)をするにあたっても、BはCに対して前記の既判力に拘束されるのか。
2 ここで、既判力は対立当事者間で発生するところ、破産手続きおける破産管財人と破産債権者との関係は、対立当事者関係にあるから、既判力が発生するといえる。一方、破産債権者間の関係は、共同訴訟人に類するものであるから、既判力は発生しないというべきである。
3本件では、BとCとは破産債権者であるから、BとCとの間には既判力は発生しない。よってBはCに対して、自らがAの債権者であることを主張できる。
4よって、BはCに対して債権の帰属を主張できる。