<設問1>
1B県知事が要綱にいう保証人要件をAが充足していないことを理由とした拒否処分は適法か。
2採石法及び規則と要綱の関係
B県知事が、要綱7条1項の跡地防災保証は許可要件に当たるとして、Aの申請を却下するためには、採石法が要綱によりB県知事において許可要件を定めることを許容していることが必要である。本件において、採石許可は特許としての性質を有しているので、県知事には許可(採石法(以下法という)33条)の許可に際しては広い裁量があるといえる。そこで、B県知事が要綱で許可要件を定めることが、採石法が県知事に与えた裁量権を逸脱濫用するかにつき検討する。
まず、前述のように、採石許可は、法が「採石権」であるといっていること(法1条)からしても、特許としての性質があり、県知事には広い裁量が認められているといえる。また、許可に際して、法は33条の4の他は、申請に際して具体的な要件を定めていない(法33条3の第2項・規則8条第2項12)。また、法は許可に際して、県知事に条件を付する権限を与えている(法33条の7)。これらの規定からすれば、法は県知事が、要綱によって新たな許可要件を付することを許容しているというべきである。したがって、B県知事が、要綱に基づき跡地防災保証を要件として定めたことは、法の与えた裁量権を逸脱濫用するものではない。
3要綱の法的効果
前述のように、要綱は33条の許可の要件なのであるから、要綱の記載に基づき許可できるという効果がある。
4 Aの反論
Aとしては、経営状態が良好な会社は跡地防災計画を実現できる資金力があるので保障を受ける必要がないし、保障をうけるとしても他の採石業者から保障を受けることができれば十分であると反論することになる。
ここで、行政庁は、形式的に処分の要件を充足する場合であっても、具体的事例に応じて個別審査をするべき場合がある。もっとも、行政庁が個別審査するべきなのは、個別審査をしなければ、処分の相手かたに重大な不利益が及ぶ場合に限られる。
本件では、仮に現実に跡地保証をCとの間で締結できる状態にあったのであるから、Aのために個別審査をしなくても、Aに重大な不利益が生じたということはできない。したがって、Aに対して個別的な審査をする必要はないので、Aの反論は失当である。
5以上の検討により、B県知事は、要綱に基づきAに不許可処分することは適法であるというべきである。
<設問2>
第1 法33条の13に基づく緊急措置命令
1B県としては、法33条の13第1項に基づく緊急措置命令のとして、Aに採石の中止命令をすることが考えられる。
2中止をなすための要件は、「災害防止のため緊急の必要がある」ときである。
3本件では、そもそも採取計画と保証書は一体となって跡地防災措置が確実になされることが担保されている。そして、本件においては、AはCとの跡地防災保証契約を解除してしまっており、Aにおいては跡地防災保証がない状態となっている。この場合、仮に跡地防災保証がないとすれば、土砂災害が発生してしまうおそれがある。そうすると「災害防止のための緊急の必要がある」といえる。
4よって、法33条第1項に基づく中止命令ができる。
第2 法33条の12の第1項に基づく許可の取消
B県としては、Aが法33条の8に違反したとして、許可の取り消しをするべきである。
<設問3>
1Dとしては、法33条13第1項に基づく中止命令の義務付け訴訟(行訴法3条6項1号)を提起するべきである。この訴えは適法か。
2「重大な損害を生じるおそれ」(37条の2第1項)
Dは、本件採取場の下方の土地に、森林を所有しており、跡地防災保証が行われない状況が続けば、土砂災害によって被害をうけるおそれがある。そのため「重大な損害を生じるおそれ」があるといえる。
3補充性
本件では、Aが跡地防災保証を締結しないので、行政が処分をしなければ、損害が避けられず「他に適当な方法がないこと」の要件を充たす。
4 原告適格(37条の2第4項)
(1)Dは、「法律上の利益を有する者」にあたるか。
(2) ここで、抗告訴訟の主観訴訟的性格から、「法律上の利益」とは、法律上保護された利益を意味する。この場合「法律上の利益を有する者」にあたるかは、処分の根拠法規が、不特定多数の具体的利益を、専ら一般公益に吸収解消させるにとどめず、個々人の個別的利益として保護する趣旨を含むかによって判断するべきである。
(3)本件では、Dが有している利益は財産権である。
では、処分の根拠法規たる、法33条13の第1項は、Dの財産権を保護する趣旨を含むか。
法33条13は、災害の防止ための規定であり、周辺に財産を有しているものを保護する趣旨を含む。
また、法33条の7の許可は、許可制度により土砂災害により被害受ける者を保護しているといえる。
以上の検討より、法33条の13は、採石場の周辺で土砂災害により財産権に被害を受ける者の利益を個別的に保護する趣旨を含むといえる。
よって、本田では財産権を有するDは、「法律上の利益を有する者」に当たる。したがって、Dには原告適格が認められる。
4 よって、Dの訴えは適法である。
以上
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