第1 設問1(以下断りなき限り条文数は民法を示す。)
1小問(1)
Fは、Eに対して、甲土地の所有権が自己にあることを主張できるか。この場合、Aが、Bから完全な所有権を取得し、その所有権をFが相続したかが問題となる。
 まず、もともと、甲土地の所有権は、Cのもとにあった。その後、Cは死亡して、DとEが甲土地を2分の1ずつ相続したのである(896条、900条4号)。そして、Dが死亡することで、Bが甲土地の2分の1の持分を相続した。Aは、この2分の1の持分をBより買い受けたのである。そうするとAが取得した持分は、2分の1に留まり、Fは甲土地の持分を2分の1しか取得できないことになる。他方、Eは、甲土地について、2分の1の持分を有する。そこでFはEに対して、2分の1の持分のみFに対して主張できることになる。
2小問(2)
(1)下線の事実は、取得時効の要件を論ずる上で、どのような意味を有するか。Fが、Aの占有を併せて主張する(187条)ことで、20年の時効を主張する場合の、下線部の事実の法律上の意義が問題となる。
(2)ここで、取得時効(162条)の要件は、①所有の意思、②平穏、公然と、③20年間、④土地の占有を継続したことである。
(3)本件において、下線分の事実は、所有の意思の存在を推認する間接事実としての意義を有する。なぜなら、売買(555条)においては、「財産権を相手方に移転することを約」するとされており、賃貸借契約を締結する場合とは違って、売買契約を締結すること自体から、相手方の所有権を取得する意思をもって、占有を取得することが推認できるからである。
(4)よって、下線部の事実は法律上の意義を有し、その意味は所有の意思を推認する事実としての意味である。
第2 設問2
1 請求の根拠
(1)Gは、Hに対して、寄託(657条)した和風だしを、法662条に基づき返還請求することが考えられる。
2 Hは、「和風だし」の半分がもはや存在しないこと、残りの1000箱を引き渡せば、Fの権利を侵害することを理由に引渡しを拒んでいる。このHの主張は認められるのか。
(2)ここで、寄託契約書(以下「契約書」という)3条においては、寄託者が他の寄託者の寄託物と種類・品質が同じものを保管する場合において、受託者は混合保管が可能であるとされている。そして、混合保管物においては、寄託した物の数量の割合に応じて、寄託物の共有持分権(契約書4条)を有するとされている。
(3)本件では、FとGは、それぞれHと、和風だしをそれぞれ1000箱ずつ寄託している。この場合、和風だしは、種類・品質及び包装が同一であるから、混合寄託物にあたる。そうすると、FとGは、それぞれ、1000箱ずつHに寄託したのであるから、1対1の割合で、寄託物たる「和風出し」について、共有持分権を有することになる。本問においては、和風だしのうち、1000箱が盗まれて、倉庫内には1000箱のみの「和風だし」が現存している。この場合、FとGは、1対1の割合で「和風だし」に対して共有持分権を有することになる。そうすると、Gは、500箱について、共有持分権を有することになる。そうすると、500箱については、Fの持分を侵害することはない。
(4)よって、GのHへの請求は500箱の限度で認められる。
第3 設問3
1 Fは、「山菜おこわ」がHが施錠の忘れにより盗取され、Qに出品できなくなったことについて、Hに損害賠償請求できるだろうか。
2ここで、損害賠償(415条)の要件は、①債務不履行、②帰責性、③因果関係、④損害があることである。以下、各要件につき検討する。
3(1)まず、債務不履行はあるか。
確かに、Fは「山菜おこわ」を丙建物おいて、無償で保管することを約しており、自己物に対するのと同様の中義務(659条)のみを負う様にも思える。
 しかし、本問で、「山菜おこわ」が、寄託されるに至ったのは、Hにおいて、既に「和風だし」の寄託を受けて丙建物が有効活用されていること、また、丙建物にはなお保管場所に余裕があることを理由とするものである。この場合、「和風だし」の契約が存在するから、「山菜おこわ」の寄託が行われたものであって、「山菜おこわ」の契約は、「和風だし」の契約とは一体と、みることができる。そうすると、「山菜おこわ」についても、Hは善管注意義務を負うというべきである。この場合、Hは施錠をしっかり行う義務を負っていたというべきである。しかし、Hは、施錠を忘れて、その義務に反しているから、Hには善管注意義務違反が認められ、債務不履行が存在する(①)。
(2)Hは、漫然と施錠を怠っているから、過失が認められる(②)
(3)では、損害と因果関係はあるか。
ここで、法416条1項は、相当因果関係がある損害について賠償を認め、同条2項は相当性の基礎となる「特別」事情について規定したものである。
 本件では、FはHに対して、「和南の味を広めるチャンスだ」などとつげていて、HはQに出品できなくなると損害が生じることが予見でできたといえる。
 よって、本件では、損害と因果関係が認められる。(③④)
4よって、Fの請求は認められる。
                       以上

4.25枚


5月28日作成 再現率90%



失敗した点
・設問2で、6条について触れることが出来なかったこと悔やまれる。
・設問3は、債務不履行を中心に書いてしまったが、債務不履行の記述を抑えて、損害の論述を充実させるべきだったと思う。出題意図としては、損害論に配点がより多くなされているように思う。
・いつもの答案練習よりも分量がへってしまった。

よく出来た点
・難問と言われる設問1に深入りせず、後ろの問題に時間を温存できたこと。
・いつもより、分かりやすい日本語で表現できたと思う。また、3段論法も堅守できたと思う。