第1 設問1(以下特記なき限り条数は行政事件訴訟法を示す)
1本件認可は、取消訴訟の対象となる処分(2条3項)にあたるか。
ここで、処分とは、公権力の主体たる国又は公共団体の行為のうち、直接国民の具体的権利義務を形成し、又はその範囲を画定するものとして、法律上認められているものをいう。
2本件組合の行政主体性
 まず、本件組合が行政主体に当たる場合には、処分性が否定されるという立論をすることが可能である。すなわち、行政主体相互間の行為の行為については、「国民」に対するものといえないからである。そこで土地区画整理組合が行政主体に当たるかにつき検討する。
 ここで、行政主体に相互間の行為に当たるか否かは、主体相互に指揮監督関係が存在するかによって判断する。
 本件では、土地区画整理法(以下「法」という)14条1項、21条は、組合の設立において、都道府県知事の認可を受けなければならないとしている。また、123条は報告、勧告、125条は監督できるを定めている。この場合、行政主体たる都道府県と、土地区画整理組合との間には、指揮監督関係が存在する。したがって、本件組合は、行政主体に当たる。
3もっとも、本件組合が行政主体に当たるとしても、本件認可の法的効果が広く生じることで処分性をみとめることができないかにつき検討する。
(1)まず、C県職員は、条例制定行為に処分性が認められないのと同様に、本家許可が処分に該当しないという。この主張の根拠は、条例のような一般的抽象的法規範の定立は、国民の具体的権利義務を変動させるものではないため、処分性がみとめられないことを法的根拠としてる。
 そして、C県は以下の主張をすることになる。市町村が土地区画整理事業を行う場合には、施行規定を条例で定めるとされている(法52条1項、53条1項)。そして、組合が土地区画整理事業を施行する場合の定款は、市町村が土地区画整理事業を行う場合の条例による施行規則の制定と同様の性質を有していることからすれば、定款の変更についての認可も同様に、処分性が認められないことになる。
(2)上記の主張に対しては、定款変更には、具体的権利変動があると主張することが考えられる。すなわち、本件で定款の変更(法39条)がなされると、組合は、組合員から賦課金を徴収することができ(40条1項)、組合の理事は組合員に対して賦課金を強制徴収できることになる(41条4項)。この場合、組合員は賦課金を強制徴収される法的地位に立たされるため、定款変更によって具体的権利変動が認められる。
そうすると、このような具体的法的効果を、国民たる組合員に対して生じさせる定款変更の認可は処分性が認められる。
第2 設問2
1資金計画の変更について
(1) 適法とする法律論
 21条1項4号にいう「能力が十分」な場合に該当しないという立論が考えられる。
(2)適法とする法律論
逆に、本件組合が「能力が十分」であったと立論することがかんがえられる。
(3)私見
そもそも21条1項4号 の認可の趣旨は、組合が整理事業施行のために十分な能力を持ち合わせていないにもかかわらず、事業を行ってしまうことを、認可を都道府県知事が行うことで防止する点にある。そうすると明らかに「能力が十分」でない場合に、許可することは違法である。
 本件では、楽観的な見通しのもと、今回も含め過去7回も資金計画の変更が繰り返されており、今回資金計画の変更は、本件組合が事業を遂行できるかわからない状況のもとでされたものである。この場合、本件組合が明らかに「能力が十分」とはいえない状況にあった。にもかかわらず、許可した本件許可は違法である。
2書面議決書の取り扱い
 本件では、白紙のまま提出された書面議決書500通が、しゅうけいされることで、定款変更の特別決議3分の2を充足することになっている。しかし、組合員の法的地位に重大な影響を及ぼす定款変更は、組合員出席のもと行う必要がある。
 本件で、組合員出席の機会を設けることなく、諸決議を集計したことは違法である。
以上
再現日 平成25年5月31日 3枚 構成50分 作成70分