時間だ。行くぞ。
金持ちの奴隷はオレにそう言って、車から俺を下ろした。
おはよう!少年。
宮本さんは、オレにいつも飴をくれる。
いつもその飴をポッケにしまう。そして、その飴が8月の酷暑に敗れた時、初めて気づく。
もったいないことしたな...。
失ってばかりだ。なぜ、失ってから気づくのだろう。十五の時に逃げ出した家は、空襲の塵となった。あれだけ憎かった民族主義者の家族も、今では恋しい。あの日、オレがあの場所に残っていれば、一緒に死ねたのに。生きることは、失うことだ。死んだら悲しくなんてない。
自分死ねば、他人は死なない。誰かの犠牲を見なくていいのならば、こんなに幸せなことはあるだろうか。
今日は骨が折れるな。この国は、第三次世界大戦の敗戦国だ。もう二度と同じ過ちを繰り返さない。そう豪語した政治家は、幾千の若者を敵軍の戦艦へと突撃させた。奴らはなぜ生きてるのだろうか。死にたくないのか、死が怖いのか。
オレには到底理解できない。死ぬことは救済だろう。そんなに死にたければ自分達が手を汚せばよかったじゃないか。彼らは、戦犯として処刑されたらしい。死に方くらい自分で選びたい。本当に死にたいな。憂鬱だ。
オレの仕事は、この国を復旧させることだ。戦後すぐに、若者が揃いも揃って召集され、国の復旧と新たな文明の新興を目論むプロジェクトに参加させられた。これに参加しない者は、厳しく処罰された。皮肉なことに、戦時中よりも監視国家の様相を呈してきたのだ。労働環境は最低だ。この国が世界から向けられている目は、憎悪の目だ。誰も手助けをしてはくれない。だから自分たちで造らなければならない。失われた文明を取り返すために、若者が知恵を絞っている。オレたちは、オレたちの知らない敵の尻拭いをしているんだ。