がん治療への応用が期待される銅の放射性同位体「銅67」を大量生産する手法を、量子科学技術研究開発機構などが開発した。マウスの実験で、銅67ががん細胞に集積することも確認しており、新たな治療薬開発が期待される。成果は28日付の日本物理学会欧文誌に掲載された。
放射性同位体を含む薬剤を服用し、がん細胞を体内から攻撃する治療法は、外科手術よりも負担が少なく注目されている。銅67は、投与後にがん細胞に集まっているかを知る手掛かりとなるガンマ線と、がん細胞を直接攻撃するベータ線の2種類の放射線を出すため、治療薬に最適と考えられてきた。しかし、従来の製造法では大量生産が難しく、実用的ではなかった。
量研機構の橋本和幸上席研究員らは、加速器で重陽子(陽子と中性子が結合した粒子)をベリリウムの板にぶつけ、飛び出した高速の中性子を「亜鉛68」に衝突させることで、銅67を生成する新たな方法を開発。従来の100倍の効率で、高純度の銅67を取り出すことに成功した。
この銅67をがん細胞を移植したマウスに投与したところ、がん細胞に集積しやすいことも確認。研究チームは今後、がん細胞への効果や安全性などを調べる。

 

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