飲み会の最中にヒロインちゃんンの肩に


倒れてきた綾人くん


ふふふ( ̄▽+ ̄*)


さぁさぁ


続きどうぞ~



「さ、桜庭さん?」

桜庭綾人「ZZZZ………。」

桜庭さんはそのまま私に身を預けるようにして、静かに寝息を立てている。

(驚いた…寝ちゃったのか…)

(桜庭さん、追い込みで忙しかったから当然か)

「…!?」

桜庭さんの香水とシャンプーの香りが漂い、私は思わず背筋を伸ばした。

(どうしよう?こんなの緊張しちゃうんだけど…)

(このまま寝かせてあげよう…)

(毎晩遅くまで頑張ってたから、疲れてるんだろうな)

桜庭さんは私の肩に頭を乗せたまま、少しの間眠っていたが――、

やがてすぐに、パッと目を開いてしまった。

桜庭綾人「…?」

「…起きました?」

桜庭綾人「…ああ…。」

桜庭綾人「…え? ……あ……!」

桜庭さんは私の肩に頭を乗せていることに気付くと、

寂しくなるくらい慌てて、ガバッと上半身を起こした。

桜庭綾人「………。」

(何もそこまで慌てなくてもいいのに…)

桜庭綾人「………ごめん。」

桜庭さんは小さく、私に向かって頭を下げた。

「…いえ、いいんです。気にしないで下さい。」

(私も…気にしてないから)

(桜庭さんが女嫌いで…私もその女の一人だってことは分かってるから)

桜庭綾人「…ごめん。」

私が微笑みを向けると、桜庭さんは照れ臭そうにもう一度、頭を下げた。

(なんなに何回も謝られると…少し寂しくなるな)



假屋崎蓮「あれ、もう終わりなの?」

松尾リュウジ「これから面白くなりそうだったんだけどな?」

顔を上げると、みんながニヤニヤしながらこっちを見ていた。

「な…なんですか?」

ヴィクター「Oh、 こっちのことは気にしないで! 壁があると思って!」

一宮若葉「フィッティングルームでも行けば? 今ならだれもいないよ?」

一宮若葉「ここじゃうるさくて、2人でまったりできないでしょ~?」

「う、いえ、けっこうです!」

桜庭綾人「………。」

隣にいる桜庭さんも、私と同じように頬を赤く染めていた。


そして、飲み会は楽しく終了し――。

假屋崎蓮「○○さん、終電間に合う?」

「はい、まだ大丈夫です。」

松尾リュウジ「明日は晴れ舞台だ。くれぐれも遅刻なんてするなよ?」

「はい…あれ?桜庭さんは?」

松尾リュウジ「さあ、あいつのことだから、もう帰ったんじゃないか?」

(何だか寂しいな…もう少し桜庭さんとおしゃべりしたかったな)

假屋崎蓮「大丈夫。」

「大丈夫? 何がですか?」

假屋崎蓮「綾人はああ見えて、 きっと○○さんと同じ気持ちだから。」

「…え?」

假屋崎蓮「お休み。明日、頑張ろうね。」

「…はい、お疲れさまでした。」

(蓮さん、何だかお見通しって感じだけど…)

(桜庭さんが同じ気持ちだなんて…あるわけないよね)



駅に向かって5分ほど歩いたところで、私はふと立ち止まった。

(あっ、ボタン…! 忘れてきちゃったかも?)

慌ててポケットの中やバッグの中を探るが、どこにも見当たらない。


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

桜庭綾人「前に…あんたが入社してすぐの頃、繊維街に行っただろ?」

桜庭綾人「…あの時、俺も同じものを買ってたから。」

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

(桜庭さんから貰った大事なボタン忘れちゃった…)


(明日はハニコレ会場現地集合だから、このままだと…)

(お守りみたいなものだから明日、もってたいんだよね)

私はケータイを取り出して時間を確認する。

(よし!ダッシュで戻れば何とか間に合う!)

私は来た道を、走って引き返した。


――息を切らしながら工房まで戻ってみると、

すでに誰も居なくなって照明も落とされていた。

(まあ、誰もいるはずないよね…)

さっきまであれほど賑やかだったのが嘘のように、静まり返っている。

(ええと…私の席は…)

急いで自分の席まで行こうとして、私はピタリと足を止めた。

おそるおそる薄闇に目を凝らすと、私の席に誰かが座っている。

(あれは…? え…?)

桜庭綾人「………。」

(…桜庭さん?)

(こんな時間に一人で…どうしたんだろう?)

(それも…)

(私の席に座って…)

私は何も言えず、ただ桜庭さんの背中をじっと見つめていた。


明日はいよいよ、PuppyROSEの命運を決めるハニコレの日。

それなのに、今の私の頭を占めているのは――、

ハニコレではなく、パートナーの桜庭綾人。

それも仕事のパートナーとしてではなく、一人の男性として――。

――果たして運命の女神は、こんな私に微笑みかけてくれるのだろうか?




いやはやいやはや(●´ω`●)ゞ




少しずつ歩み寄る綾人くんとヒロインちゃん




じれったくなる気持ちを抑えつつ




続きどうぞ~






――私達は衣装の細かい調整に入った。


「私たち」と言ったが、実際に調整するのは桜庭さん一人だ。


モデルさんの体型や個性に合わせ、桜庭さんがミリ単位で微調整する。


モデル「このワンピース、タイトで可愛いんですけど、ちょっとだけ肩が窮屈な気がするんですよね。」


桜庭綾人「…採寸をやり直してみる。」


「あ、私がやりますよ。」


メジャーを取ろうと、私は道具箱に手を伸ばす。


「!?」


同時に桜庭さんも手を伸ばしていて、私たちの手が一瞬触れ合う。


桜庭綾人「………!」


「あ…すみません!」


桜庭さんは素早く手を引っ込めて、気まずそうに咳払いした。


桜庭綾人「………。」


――桜庭さんは何事も無かったかのように、採寸を続けた。


(距離が縮まったと思ってたけど、ここまで拒絶するってことは…)


(あの日、私を押し倒したんじゃなくて…)


(真剣に、「私に興味はない」って言おうとしたんじゃ?)


(思い返せば、慌てて私から手を放そうとしていたし…)


(「カン違いしないで聞いて」って言っていたし…)


真剣な眼差しで、仕事に打ち込む桜庭さん――。


その瞳の中に、私の姿は映っていない。


(女嫌いの桜庭さんが…私に好意なんて持つはずないか)


桜庭綾人「…チャコペン。」


「あ、はい。どうぞ。」


私は沈んだ気持ちを奮い立たせ、現実に戻って仕事に向き合った。






ハニコレまで、残り1ヶ月――、


私と桜庭さんの間に仕事以外の会話はなかったものの、


仕事は順調に進み、1ヶ月はあっという間に過ぎて行った。


――そして、ついに迎えたハニコレ前夜。


ガールズ工房で明日の景気付けにと、


蓮さん主催で簡単な飲み会が行われていた。


桜庭綾人「………。」


桜庭さんは一人、ソファに腰を下して缶ビールに口をつけていた。


会話に入るでもなく、ただ静かにお酒を飲んでいる。


(桜庭さん、あまり飲み会とか好きじゃないのかな)


私はそんな桜庭さんの隣に座り、同じく静かにお酒を飲んでいた。


(隣と言っても、50cm以上離れているけど…)


(もう少し近くに座りたいけど…きっと桜庭さんはいやだよね)


假屋崎蓮「ハニコレ、いよいよ明日だね。」


蓮さんと松尾さんがビールを飲みながら、しみじみと語っている。


假屋崎蓮「まったく、リュウジがガールズやるなんて夢にも思わなかったな。」


松尾リュウジ「ああ、オレもだ。 ったく、慣れないガールズは疲れるぜ。」


ヴィクター「No、No! リュウジは後半の方しか手伝ってないじゃない!」


一宮若葉「まっくん、ナイスツッコミ!その通り!」


松尾リュウジ「おい! ハニコレ前夜に、テンション下がること言うな!」


假屋崎蓮「確かに…。」


假屋崎蓮「リュウジは最後の方に出てきて、余計な口出ししてただけだったね。」


松尾リュウジ「うるせぇ! 蓮だって最初は、ガールズなんて嫌がってただろ!」


ヴィクター「ちょっと皆サン、飲みすぎじゃない!」


ヴィクター「ケンカはやめましょう! 両成敗だよ!」


松尾リュウジ「うるせぇ! 何が両成敗だ!お前が一番飲んでるだろ!」


一宮若葉「まあまあ落ち着いてよ。みんな分かってると思うけどさ…。」


一宮若葉「一番頑張ったのは…あの2人だからね♪」


全員の視線が、部屋の隅で無言で飲んでいる私と桜庭さんに注がれた。






假屋崎蓮「しかしまぁ…今夜の主役なのに、地味に飲んでるね~。」


松尾リュウジ「危うく存在を忘れかけるところだったな。忘れてたけど。」


桜庭綾人「…騒々しいのは苦手だから。」


そう言うと、桜庭さんは缶ビールを深く傾けた。


ヴィクター「haha…アヤトらしいね!」


松尾リュウジ「ヴィクター、うるせーからアッチでまったりと飲んでろよ。」


ヴィクター「Oh! そのセリフ、リュウジにそのままノリをつけて返すよ!」


松尾リュウジ「ノリじゃなくて、ノシだろノシ!」


――さらに騒がしくなってきたところで、工房の扉が勢いよく開いた。


黒木大成「うるせぇ、静かにしろ!」


黒木社長の一声で、場が一気に静まり返る。


黒木大成「…とまぁ、いつもなら言うところだけどよ。今日だけは勘弁してやる。」


黒木社長の背後から、梓さんも顔を出す。


白川梓「みんな、今日までよく頑張ってきましたね。」


白川梓「いよいよ明日は本番です。今日は英気を養って下さい。」


黒木大成「ただし飲み過ぎんなよ!ほどほどにな!」


黒木大成「ほどほどにしないと、5年前の俺みたいに…。」


白川梓「その話は別の機会に。話が長くなりますから。」


黒木大成「それもそうだな、辛気臭くなっちまうし。」


黒木大成「じゃ適当に、ほどほどに泥酔する程度に楽しめよ!」


社長と白川さんは私たちに笑顔を向けて、出て行った。


松尾リュウジ「さて、うるさいおっさんたちがいなくなったところで口直しだ!」


假屋崎蓮「みんな、まだまだいけるでしょ?」


(まだ飲むのか…みんな元気だな)


(桜庭さんはどうするんだろう)


私が桜庭さんの様子をうかがう――と。


桜庭綾人「………。」


桜庭さんの頭がゆっくり倒れてきて――、


私の右肩に桜庭さんの頭がちょこんと乗った。


「えっ? ちょ、ちょっと…!」