目が覚める。


いつものように、たくさんのモノに埋もれている。本当に死んでしまいたいと思う。骨と皮だけの自分。本当にどうしようもない自分。

そしゃくして、噛んで、味を知って、出して。その、繰り返し。何の実にもなっていない。

何も前に進まない。後退もしない。さみしい。かなしい。世の中で、独り。ひとりひとり。涙って、何度出しても、どれだけ出しても乾いたりなくなったりしない。どうして…?

涙の蛇口が開きっぱなしだ。


目が覚めると。何かが顔に乗ってる…。何? こんぺいとう…。なんか、ひさしぶりに、見た。


買ったっけ、こんなの…?!


うーん。色が、きれい。とてもとても、きれい。赤、青、黄、みどり、オレンジ、ピンク、紫…全部。色彩がすべてつまってる…あ、虹?


いいな。これ。…少しにおいをかいでみる。…大丈夫みたい。と、いうのは。時々気づくと賞味期限がきれているものがあったりするので。自己防衛。ここまできても。一応。


むかし、こんぺいとうの作り方を本で読んだことがある。大きな大きな釜の中に、けしの実をいれて、お砂糖の液を上からかけていく。大きな大きな釜の中でずーっと、混ぜていく。それを、一日9時間、10日。続けていく。続けていく。


幸せだと思った。こんな色した金平糖、見たことがない。小さな、小さなうちの豆電球(うちはいまだに豆電球なのだ)の下でも本気で輝いていて、どうしようもなく美しくて、ここ2年半で見たものの中で一番美しいものだった。


見るものを美しいと感じる感性が私に残っていたことに、びっくりした。嬉しかった、ありがとう。

食べちゃうのもったいない…でも、でも、でも。舐めてみる。少しだけ。


…甘酸っぱい。


金平糖って、あまくなかったっけ?


…甘酸っぱい。


あの、なつかしいいちごミルクの飴に似たような、甘くてやわらかくて、愛おしくて、そのまんまずーっと包まれていたい甘酸っぱい味。全部口に含んだら、すぐに溶けて消えた。雪を食べたみたいだ。



外の光が、見たくなった。愛おしくなった。ほんものの虹が見たい、と思った。

庭にホースを持っていって、人工的に作ってもいいから、それでもいいから虹が見たいと、思った。

もう長い間昼と夜は逆転している。いつも、明け方に寝る。

人の活動を見たくなかった。人が何か生活し活動し、世の中に貢献している事実を受け入れたくはなかったのだ。

今、もう明け方の5時。あと1時間。あと1時間で、2年ぶりの太陽。


あたし、まぶしすぎて、目がつぶれないかしら。

ドキドキ。ドキドキ。



1時間、どうしようもこうしようもないので、囲まれているものたちの中から、ゴミ袋がないか、探してみる。本気で。…はいつくばり、モノやゴミの山の中を荒らしまわる。ジタバタジタバタ…何も、ない。ない。


前向きな姿勢で、コンビニへと向かってみる。ゴミ袋を買おうと思ったのだ。こんな前向きな行動のために、自分を動かすのなんて、本当にリアルに2年ぶり、かもしれない。


ああ、自分が一番、びっくりだったのだ。