「どうした?ボーっとしちゃって」




「えっ、何でもないよ!大丈夫だよ」




隆史の声で我に帰る。




何を考えてたのかなんて言えるワケない。




言ってしまったら終わってしまう。




今の私達が壊れてしまう。



過去の思い出は美化されるもの。頭ではわかってる。でも時々無性に昔が恋しくなる。




「あ、あのさ、いつ渡そうかと思ってたんだけど、今渡しちゃうね!」




ホントは後にしようと思ってたけど、バッグから包みを取り出す。




「はい、バレンタインデーのプレゼントっ」




「おっ!ありがと!開けていい?」




「うん!開けてみて!」




隆史の手で、リボンがほどかれ、丁寧に包み紙が剥がされる。薄い水色にグレーのストライプのネクタイと黒い革にシルバーのバックルのベルト。




「あっ、いいね、コレ!あ、でも、そんなに俺のこと縛りたいの?」




「えっ、そんなんじゃナイよ!」




「あははは!冗談だってば!」




まあでも、深層心理に「束縛したい」てのがあったのかもね。




「お!トリュフうまそう!」




甘いものが好きだもんね、隆史は。




「帰ってから食べるよ!ありがとね!」




ぎゅっ。




突然のハグ。




抱き締められると心がじんわりする。




「あ、そろそろ行く?」




身体を離して隆史が言う。そういえばもう三時間ぐらい経過してる。




「うん、そうだね、時間無いしね」




「ちょっと早いけど、飯でも食いに行く?」





店を出て車に乗り込む。




しばらく走って、




「あのさ、ここらへんに新しいパスタ屋ができたらしいんだけど…確か昨日買った雑誌に載ってたはずだから、悪いんだけど、後ろからとってもらえる?」




「いいよ。どのへん?」




「俺のコートの下かなぁ?」




えーっと、えーっと雑誌雑誌…




後部座席を探す私。




「あっ!あった!」




雑誌を持ち上げる。




と、下から可愛らしい小箱が出てきた。




何だろ?コレ?




リボンのかかった箱。




まさか…コレ…!?




そのリボンに書かれていたのは、誰もが知っているチョコレートブランドの名前だった。