はじめに
本手記を書くことで海外グライダー遠征を検討・準備されている方のご参考になりますと幸いです。
筆者も先人の体験談・手記を大いに参考にさせていただいたので、その一つとして残せられればと思います。
本手記は筆者の主観、経験に基づくものであり、あくまでも1つのご参考としてお付き合いください。
(自分で確認・担保した最新の情報で準備・フライトされることを願っています!)
前提情報(筆者紹介・経歴等)
- グライダー歴: 12年(内、海外駐在による4年間のブランク期間あり、ブランク明け3年目)
- 遠征前の総飛行時間/回数: 320時間/1100回
- 保有Badge・実績など: Silver C, 関東でOut & Return 100km, △100km経験あり。
- 海外遠征経歴: 2016年ナロマイン(オーストラリア)、2024年オマラマ(ニュージーランド)
- 今回の遠征では金章課目(距離300kmと獲得3000m)達成を狙う!=Task Speedを速くすることが目的!(できればダイヤモンド章の距離500km, △300kmにも挑戦してみたい。)
準備編
1 遠征先選び: 2024年のタコモールへの遠征者が△300km以上のタスクを連日飛ばれていたのに触発されたのと、タイミング良くTocumwal Soaring CentreのCFI(チーフフライトインストラクター)のIan Downes氏にお会いする機会があり、生の情報が知れたのでタコモールに訪問することとした。
*板倉でタコモールの紹介をするIan氏(左)と聴講する筆者(右)
2 時期の検討: オーストラリアのベストシーズンは12月から1月ごろ。(広くは11月から3月まで期待できるが、前後になるほどサーマルトップが低くなる認識。) 昨年のオマラマ訪問時は5日間しかフライト日が確保できず、雨天もあり存分に楽しめなかったため、今回は長くフライト日を確保したい。フライト日は社会人として休みの取りやすい12月25日から1月3日までの10日間とした。
3 クラブへの連絡、手続きなどの準備:
3.1 Booking: https://tocumwalsoaring.com/の”Glider Hire”のページより希望の機種と日程を確認し、空きがあれば借用機体の”Reservation”を行う。CFIのIan氏とメールでのやり取りを行い、宿泊先の確保もお願いできた。滑走路そばにロッジがありそこにも泊まれるらしいが満室のため、今回は提携先のHome Stay Facility(1泊AUD135)を予約した。また機体はLS3(フラップ付きクラブクラス)をBookingした。*個人的にASW20Lを購入し、フラップ機での操縦練習を行いたかったため。(Discus等のスタンダードクラスに乗り慣れている方はDiscus-b, LS4, LS7がおすすめ。Siteには記載ないがPW5も借用できるらしい。)
*年末年始は人気でBookingがすぐに埋まるようです。筆者は9月に申し込みましたが、ちょうどキャンセルが出たタイミングで運良くBookingできました。早めのコンタクトをお勧めします。
3.2 GFAの手続き: オーストラリアにてPICで飛行するパイロットはGFA(Gliding Federation of Australia)のメンバーシップ登録が必要。サイト(https://gfa.justgo.com/)で事前に登録しておく。
3.3 その他: Ian氏に問い合わせてWay PointのCup fileを共有いただいた。(https://soaringweb.org/TP/Tocumwal/files.html)
4 移動手段の確保: タコモールはメルボルン空港から車で北へ3時間程の場所に位置している。空港でレンタカーを借りる必要がある。日本からは直行便で10時間程の道のり。経由便を使えば安く行けるがそこは予算と時間の天秤であろう。
5 事前のトレーニングや借用機体及び地形の理解:
5.1 事前のトレーニング: 借用機体は慣れていないと折角のチャンスが慣熟フライトになってしまう、、、今回は借用予定のLS3には事前に乗れなかったが、同世代のフラップ機であるASW20Lを滝川で練習してから遠征に臨んだ。
*話が逸れますが、10月の滝川では滞在5日間で16時間もASW20Lに乗ることができました。連日ウェーブ、コンバージェンス、サーマルと異なる飛行環境を経験でき、とても良い滞在でした。(北海道は梅雨がないと聞いて驚きました。本州の梅雨シーズンも滝川はソアリングコンディションとのこと。)
*滝川スカイパークから西23kmの徳富ダム(トップダム)とASW20L(AS)の翼端。10月のこのフライトは5h以上と獲得1000m以上でした。日本国内でも銀章フライトは十分チャンスがあります。もちろん海外での挑戦もありです。(筆者も学生時代にナロマインで初5hと獲得1000mを達成しました。しっかりと準備してチャンスがある所に身を置くのが大事。グライダーは天候に左右されるスポーツなので長期滞在が成功の秘訣。)
5.2 借用機体の理解: LS3の搭乗経験者から飛行の注意点を教えてもらったのでここにメモします。関係のない方は読み飛ばしてください。
- 借用機: LS3 (VH-WUG) *速度計はkt表示、高度計はft表示
- Best L/D: 41.8 (flap position 0°~-5°, 49kt~54kt)
- 最小沈下率: 0.6m/s
- Flap: -7°, 0°, +10°(サーマルフラップ), +20°(ランディングフラップ)
- Vne: 146kt (up to 6600ft), 132kt (up to 9800ft), 119kt (up to 13000ft)
- Va: 103kt
- Vt: 103kt
- Flap limit speed: 146kt (from -7° to 0°), 103kt (from 0° to +10°), 86kt (from +10° to 20°)
- Minimum aero tow speed: 54kt (水バラなし), 65kt (水バラあり)
- Minimum approach speed: 46kt
- Stall speed: 35~38kt (水バラなし), 41~43kt (水バラあり)
- Gross Weight: 472kg (Empty Weight: 270kg)
- 離陸: 離陸は、フラップ0°で出発、エルロンが効いてくるのと同時にサーマリングフラップ(10°)へ下げます。ずっと10°だとエルロンが効かず、ずっと0°だと浮かないそうです。
- 着陸: 着陸は、常にランディングフラップ(20°)です。強風でも20°だそうです。なお、20°だと抵抗が大きくなるため、確実に届くパスだと確信してから20°まで下げるように言われています。私はダウンウィンドでギアダウン、ベースでフラップ10°、ファイナルでパス角をリチェックして20°としました。20°でエアブレーキを開けると、かなり沈下率を大きくできます。パス角の調整幅は大きいのですが、フレア前にはエアブレーキ1/3ほどに留めておかないと、沈下率が大きすぎてフレアが難しいそうです。
5.3 地形の理解:
Tocumwal Aerodrome:1200mの滑走路がクロスしている。標高は370ft
滑走路は 09/27 と 18/36 の 2本が運用されています。両方ともアスファルト舗装。
その傍にグライダーオペレーションのグラス(砂)ランウェイがある。
周波数:125.5
Tocumwal周辺 (赤色:飛行場、黄色: Outlanding適地、青色:町の名前。円10km刻み)
周辺空港の周波数
6 持ち物準備
以下、出発前のC’k list形式でメモします。
|
# |
Item |
備考 |
|
1 |
パスポート |
期限チェック |
|
2 |
ETA(電子渡航認証),乗継地のVISA |
期限チェック |
|
3 |
航空券 |
座席、Online check-in |
|
4 |
レンタカー予約書 |
|
|
5 |
国際運転免許(+日本の運転免許) |
|
|
6 |
海外旅行保険 |
|
|
7 |
海外で使える携帯電話(e-SIM) |
アウトランディング時に電話できるようにクラブの電話番号を登録しておく。 |
|
8 |
モバイルWifi |
Optionalだがあると便利 |
|
9 |
充電用変換プラグ |
|
|
10 |
充電ケーブル、延長ケーブル |
携帯、GPS、無線機、PC |
|
11 |
GPS(+マウントと較正表) |
Waypointと現地の地図をuploadしておく。 |
|
12 |
ハンディ無線機 |
Optionalだがあると便利 |
|
13 |
PC |
Optionalだがあると便利 |
|
14 |
GFA membership |
|
|
15 |
日本のライセンスや航空身体検査証明 |
|
|
16 |
ログブック |
|
|
17 |
キャメルバッグ |
現地は気温40℃で日没は20:30。大量の水を飲む必要あり。2L*2準備する。(スポドリ用と水用) |
|
18 |
スポーツドリンクの粉 |
脱水は脅威の一つ。 |
|
19 |
オムツ |
まだ上手く出せなくても履いておいたほうが良い。お守り。 |
|
20 |
帽子 |
|
|
21 |
日焼け止め/化粧水/リップクリーム |
焼けてヒビ割れると集中力がそがれる。 |
|
22 |
サングラス |
|
|
23 |
歯ブラシ |
|
|
24 |
髭剃り(充電器も忘れずに) |
|
|
25 |
食品(クリスマス用、新年用) (ex. 蕎麦、お餅) |
現地は基本自炊になるので、倒れた時も考えて数日分はあると安心。 |
|
26 |
薬 |
慣れない環境で、季節も逆だと大体みんな3日目くらいでダウンします。心当たりがあれば航空身体検査に支障ないものを持っていく。 |
|
27 |
衣類、タオル |
真夏だが肌は見せないほうが、体力温存になる。 速乾性のアームカバーはおすすめ。 |
|
28 |
現金、クレジットカード |
現金はそんなに必要ない? |
|
29 |
洗濯用洗剤 |
粉があれば、どこでも洗える。 |
以上。今晩のフライトでメルボルンに向かいます!






