いまね、バンドメンバーと家に戻る帰り道に、
自転車乗ったおじさんからミルクティわたされたの。

知らない人から渡された飲み物は飲んじゃいけませんって聞いてたから
私は丁重に拒否したの。
そしたらバンドメンバーいちピュアなギタリスト
やーしずが、おもむろに受け取ったの。
受け取りがてら「なぜ?」って聞いたの。

そしたらおじさんが
「話せば長くなるんですが」

「さっきそこで軽く人を轢いてしまって」
「轢いたと言っても当たった程度なんですが」
「その轢いたやつがイチャモンつけてきまして」
「警察呼ぶぞって言うから、仕事前で急いでるけど警察待ってたんですよ」
「待ちがてら話を聞いてたらそいつがニートだって言う話で」

「寒いのでコンビニでほうじ茶を買って、そいつ甘いもの好きそうだったからミルクティを買ったんです」
「そしたら『絶対受け取らない』って言われまして」

言いながらおじさん去っていった。
ミルクティはやーしずのカバンのポケットに納まった。

我々はそのあとコンビニで各々好みの缶チューハイを買い、
飲みながら道玄坂をくだった。
全員違うのを買ったので、全員飲み比べした。
わたしは自分のが一番うまいと思ったけど、
それは全員そう思っていた可能性がある。

やーしずはきっと家に着く頃にミルクティを思い出し、
新妻にお土産として渡すだろう。
エピソードも添えて、一緒に渡すかもしれない。

ニートの彼が拒否したミルクティは
新婚ホヤホヤの優秀なデザイナーの妻のデザートか朝食になりそうです。