レコンラジオ最終回ネタ、続きです。

スコード教に関連して「Gレコに宗教を取り入れた経緯」を尋ねられて、富野監督は
「暮らしの中の決まりごとからタブーが発生し、集団の中で宗教が発生した」
と答えていますが、これはGレコに取り入れた経緯ではないですね。

そこで、これもアーレント?と調べてみたところ、彼女の生涯の友人ハンス・ヨナスの名が浮かんできました。
ヨナスもユダヤ人哲学者で、アーレントと一緒にハイデッガーや神学者ブルトマンに師事しています。そして
・近代技術が人間に及ぼす影響
・地球とその未来への配慮に対する努力
・グノーシス思想
を研究しています。あれ?これ、Gレコそのものじゃん、と。

3番目のグノーシス思想というのは、2~3世紀に地中海から中東で勢力を持った宗教です。
その一部は「ナグ・ハマディ写本」やヘルメス・トリスメギストスの「ヘルメス文書」に含まれています。
それらはノレド・ナグやゲル・トリメデストス・ナグ、ヘルメスの薔薇の設計図の名前の由来と思われます。
グノーシス思想が各宗教やイブン=ハイヤーン、薔薇十字等の神秘思想に繋がるってだけかもしれませんが。

グノーシス思想では、至高神の領域での過失や戦闘の結果、劣悪な神がこの世界を創造したと考えます。
そして至高神は人間に知(gnosis)を授け至高神の領域へ導くそうです。これ、リギルド・センチュリーでは。

ヨナスとアーレントやハイデッガーとの違いについては、品川哲彦先生の映画評学会発表 が興味深いです。
後者を読むと、観察者たるクンパ大佐がグノーシス的かつハイデッガーのように見えてきます。

なおスコードはSU Cord、Space Umbilical Cord(宇宙の臍の緒=キャピタル・タワー)の略のようですね。

4/12追記:2009年のイベント で富野監督は、17世紀までの人類のほとんどはものを判断・決定できない人の集まりだった、とアーレントの本にあると述べ、だから宗教が必要だった、信じれば済んだ、と述べています。また、原理原則を信じるな、独自に考えろ、ガリレオの地動説などで物事を観測して判断することを覚えた、としています。この辺の話が、この記事冒頭のラジオでの宗教の起源の話や、スコード教による思考停止、アメリアの天体観測の話に繋がっているのでしょう。
一方「人間の条件」でアーレントは近代性を決定づけた3つの出来事として、新大陸発見、宗教改革に加え、望遠鏡の発明と地球を宇宙の視点から考える科学を挙げ、地球と人間が遠ざかる「地球疎外」が起こったとしています。この辺もGレコに影響してそうですね。