「Gのレコンラジオ」最終回に出演した富野監督が、日本で下船したベルリに気づき号泣するノレドについて、
「その時ノレドは実を言うと忙しかったのね。一生懸命勉強してる最中だったから」
「(大騒ぎして気が晴れて)アイーダのいるアメリアまでブーンと行って、きっとそっちで勉強するのかなあ」
と話していたことが凄く気になったので、このノレドの「勉強」についてちょっと書きます。

結論から先に書くと、富野監督はノレドにハンナ・アーレントを重ねていたんだな、という事です。

アーレントは富野監督が2009年頃から 、次回作つまりGレコのテーマに挙げてきた政治哲学者の名前です。
G-アルケインも元々の設定ではG-アーレントという名前だったそうです。

彼女はユダヤ人で1906年ドイツに生まれ、キルケゴール、ハイデッガー、フッサール、ヤスパースらに師事。
ナチスの迫害が始まったドイツから亡命するユダヤ人を支援した後、自身もフランス、さらにアメリカへ亡命。
普通の人間がナチのような悪をなし得る事に衝撃を受け、全体主義の起源を分析しています。
そして全体主義の問題は「個人性を殲滅するシステム」、つまり思考の欠如を生む仕組みにあるとしています。
Gレコで激しく戦った人々が、最終話で穏やかな表情を見せるのは、その裏返しの表現でしょう。

ノレドは被差別階層クンタラの出身を帽子や額で示していますが、帽子はユダヤ男性のキパに似ています。
またベルリ同様、自分で見聞きして自分で考える子で、時にアイーダやベルリに意見しています。
そして歴史政治学を学び、もしかしたらアメリアに留学して、未来を創る可能性を監督に期待されている子。
アムロが「僕の好きなフラウ」の母性に帰るのに、ベルリが逆に旅立つのは、彼とノレドの自立の表現でしょう。

暴力やイデオロギーに思考を支配されないために、自分で考えよう!政治や経済を学ぼう!ということですね。

レコンラジオで触れられた宗教の起源やタブーの発生にも話を続けたい所ですが、とりあえずこの辺で。