(今回は、ただのコラムや小説だと思って流し読みくだされば♡)
17歳の時、
「これを、大人の色気、というんだろうな」
と初めて思った、ある大人の男性がおりました。
そして、あれ以上の方に出会ったことは、
この20年まだございません。
その人は、
予備校の英語の先生でした。
浅黒い肌に
鍛えてるらしい筋肉質な身体
いつも白シャツでボタンが2こ空いてる
ネックレスなし
椅子にかけられたジャケットはネイビー
いつも少し先の尖ってる焦茶の革靴で
ウィングチップの爪先が
座って足を組んだ先で遊んでいた
いつも教卓の左側に椅子を置いて
そこに腰掛けて、足を組んで、
左手はポケットに入れたまま
ゆっくり歌うように英文を読んで
ゆっくり解説する
ほとんど板書がないから、先生はほとんど座っていた
腕時計がシルバーのブルガリでフェイスは黒
右利き
タバコとコーヒーの混じったような香水はたまに立つたびに少し香っていて
(ブルガリのブラックという香水らしいと、卒業後にどこかで聞いた)
声が低くてゆっくり話すから
無伴奏チェロ組曲を聴いてるみたいで
めちゃくちゃ授業が難しくて、しっかり聴かないといけないので一番前の一番近くの席に陣取っているのに、
声が心地良すぎて私はいつも寝てしまい
睡眠学習みたいになっちゃうから、寝てるのに授業は聴こえていて、わかってるけどわかってなくて、結局身にならないから授業を全部録音していた。
「かなっちいつも寝てるのになんで質問答えられるのか不思議なんだけど」
と同じクラスの子から言われたことがあったけど
なぜなのか未だにわからないw
芸術作品みたいな人だと思った
こんな大人にはどこにもお目にかかったことがなかった
親戚のちょっとえらい人にも
学校の誰かにも
どこにも、こんな人はいなかった
先生は聞くところによると
京大と東大をどっちも卒業したという異色の経歴を持っていて、予備校の特進クラスだけを受け持っていた。
そこにギリギリ滑り込んでいた私は
先生がどこからか引っ張ってきた死ぬほど難しい学術論文を和訳するだけのその授業に、文字通りついていくだけで必死だった。
that が何を指すのか訳すには
その前の2ページ全部を読まないとできない
wrong を、
「まちがっている」と訳したらダメで
「ふさわしくない」と訳したらokとか
ニュアンスが違うと全部バツを食らった
先生に習ってからは
入試問題がとても簡単に見えた
知らないうちにめちゃくちゃできるようになっていたのは、先生の授業だけだった
卒業後にお邪魔した先生のお家は、
一部屋全部図書館みたいになっていて
ISBNのように背表紙に番号が振られていて
蔵書管理がされていた
日本語の本の方が少なかった気がする
趣味はワインと音楽
やたら音のいい大きな機材が置いてあって
クラシックとジャズが多かった
海の見える綺麗なお部屋は
そこだけが異空間のようだった
イタリア人みたいな雰囲気の先生は
完全に日本人離れしていて死ぬほど色気があった
言葉が全部素敵だったから
色気とは知性ありきなんだとわかった時だった
17歳の時も
24歳の時も
私の中ではダントツで一位に君臨していたし
20年が経過した今もなお、
この人を超える色気の男性には会ったことがない。
私は当時の先生の年齢と同じくらいか、
もう追い越したと思うけれど
今なら当時の先生を
「カッコつけたヤツwww漬物でも食ってろw」
と笑って友達になれるぐらいには
なったかしら
なれてないだろうなぁ
あんな色気は、私にはまだ出ていない。
読んでくださってありがとうございます
あでゅー




