もうすぐ夫の誕生日
彼は永久に歳を重ねることはないし
51歳のまま時は止まった
私があと数年で
彼より歳上になるのか
皆の記憶の中の夫は
老いることはなく
美しい思い出となるのだろう
昨年の夫の誕生日は
実はここ数年誕生日プレゼントは
同じものなのだったのだが
私からは夫が1人でよく行く
温泉の回数券
あれが最後の誕生日プレゼントと
なったのか
なにか特別なものにしたら
よかったのだろうか
でもそれもなんだか違う気がする
あれが最後の誕生日になるなんて
思いもしなかったよ
だって夫は昨年は
会社に行って
忘年会にも何度も行って
コンスタントに抗がん剤も出来て
ハイパーサーミアもして
旅行も沢山
元気な冬だったのだ
それが今は写真の中の人
となってしまった
この春
突然の悪化だった
私はそう思っていた
思い込もうとしていた
でも夫は
実は
もう自分には
そんなに時間がないと
分かっていたのだと思う
私には最後まで
そんなこと言わなかったけれども
夫が4月16日に亡くなって
GW明けくらいのことだ
一通の封筒が郵送されてきた
夫の字で書かれた我が家の住所
ハイパーサーミアを
していた病院からの通院証明書だった
2023年冬から
せっせと夫は高速道路で
1年以上
ハイパーサーミアに通っていた
その間ずっと
3ヶ月に1度くらいのペースで
次回の通院の時に夫が
受け取るようにしていた
保険会社に
提出する通院証明書
それを
今年の3月の
ハイパーサーミアのあとに
彼は初めて
通院証明書の郵送を
病院に依頼していたのだ
きっと夫はあの時
すべて分かっていたのだと思う
もう己が
この病院にハイパーサーミアで
通うことは2度とないということを
遺された私が病院に申請したり
病院まで高速道路を運転して
取りに行かなくていいように
体調キツかったんだな
本当に取り乱さない人だったな
それが彼の優しさであり
プライドであり
愛情であったのだろう
喪ってから
気づくことがあまりに
多すぎるんだ
私が夫の歳を超える頃には
娘は大学生
どんな大人の女の人に
成長するのだろうか
そしてその頃の私は
この淋しさや悲しさを
思い出さなくなっているのだろうか