意気揚々と
ハイパーサーミア治療のために
張り切って出かけた夫だったが

今日は診察や画像診断
医師との話のみで
ハイパーサーミアは今日は
出来なかった

それでも
最短で空いているところに
スケジュールを入れてもらえたので

来週から早速ハイパーサーミアを
始められることになった

夕方
私に電話で
そんな経緯を報告する夫

『今日やりたかった…』と
いつも私には明るく振る舞う
夫にしては珍しく少し凹んだ声

『大丈夫大丈夫!
4日待てばハイパーサーミアが
出来るんだから!
4日なんて誤差の範囲だよ!』

私には
夫を励ますしか出来ないから

抗がん剤とハイパーサーミアに
賭けている夫の気持ちが
痛いほど分かるんだ

大丈夫!大丈夫!

まるで
自分に言い聞かせるように
夫に繰り返す


夫が大学病院に行っている
そんな同じ日に

私はいつものように仕事をして
午後からは
子供会のクリスマス会の
打ち合わせに向かう

同じ役員の人たちは
夫の病のこと
誰一人知らない

和気あいあいと
楽しく過ごせる仲間だけれど

私は絶対に夫のこと
言わないつもり

娘に夫の病気のこと
変な形で伝わるのは
避けたいから

学校関係の人に今は言わない
そう決めている

感染症や胃腸風邪で
学級閉鎖も出ている
娘の学校

飲食やゲーム大会などの
大規模なクリスマスは
止めようとなり
昨年同様、お菓子を配るだけの
クリスマス会となった

私は内心
ホッとする

抗がん剤治療中の夫のため
リスクはなるべく避けたいから

今年も
簡素なイベントになってしまい
子供たちには申し訳ないけれど

私は心のなかで
安堵のため息をついた

そんな金曜日の昼下がりの出来事