ました。岡本敏子×よしもとばなな イースト・プレス

「岡本
 いろんなことを考えるのは結構ですけど。
 おかしいのよ。今そこに彼が帰ってきて抱き合えるのに、
『どこへ行っていたのよ。あの人と何かしてたんでしょう』
 とか、そっちのほうを実在にすることはないの。
 バカじゃないのと私は思うよ。今そこにいる二人が
 向き合っているほうがずっと実在なんだから、
 そのことを大事にすべきじゃない。ほかのことなんて、
 やきもち焼いている暇はないの。」
「岡本
 知って、相手をきゅうきゅうとっちめたから
 どうだっていうのよ。私、本当にわからない。
 自分の前にいなかったときのことを、なんでそんなに
 実在にしたがるのか。」
「よしもと
 でも、それは相手よりも自分の中の何かなんでしょうね。
 わからないけど。」
「岡本
 今、自分がここにいて、彼がそこにいて、
 向き合っているんだからそれでいいじゃない。」

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