義父はバブル時代をバリバリ働き、出世してお偉いさんになった。
お中元・お歳暮の時期は、送られてきた箱で山が出来たそう。
缶詰類は保存がきくからって、押し入れにしまったのね。
そして、忘れられ、錆びついた高級缶詰🥫
気が付いたら、30年も経ってた、と義母は言うのだが、
「じゃあコレどうするの?置いておいても意味ないよね、今すぐ捨てて」
「いつかやるから、私がやるから、置いておいて!」
同居を始めた当初だから、もう10年以上前の話。
義母は、ストックが埋まっていることで、安心するらしい。
それが、たとえ、食べられなくなった食品だとしても
今思えば、あの執着具合は、認知症の始まりだったのかも。
それで、義母がいないときに、夫と嫁で、缶を開けて、異臭を放つ中身を新聞紙にくるんで捨てた
一気にやるとバレるだろうからって、数回に分け、2年ぐらいかけて。
それも、5年ぐらい前の話。
そうそう、今より小規模な”勝手に捨て活”は、その当時から始まっていたのね!
あの当時から、収納の中の様子がちょっと変わったぐらいじゃ気が付かなくて、
ストックが埋まっていりゃ、それでよかったんだよね。
缶詰が一気に30個消えても、違うものをさりげなく配置して、誤魔化せたんだから。
今思えば、あの当時から認知症が…(以下省略)
食べ物以外の贈答品も、多かったようだ。
箱に入った食器、漆器、花器、壺も、いくつか出てきた。
しまい込まれていた箱は染みが出来ていて、開けると、古ぼけた薄紙に包まれたままの器。
これは、明らかに、もらい物だよね。
リサイクルショップに、運びました
買い取り不可で戻ってきたもの、3点。
ひとつは、漆塗りの花器。
ひとつは、古い木箱だったのに、まさかの引き出物で、名前が入っていた、夫婦花瓶。
ひとつは、”こけし”。全体的に、カビていたからかな?
でも、このこけし、底に書かれた『奥瀬鉄則』は、作家名だよ。
作家さんの経歴が書かれた紙も入っていて、調べてみたら…あれ、これは、良いものでは?
よく見たら、いいお顔をしているよね?
入っていた箱と紙の黄ばみ具合よ…
「これは、飾ろう」
夫が、乾拭きして、飾った。
「だからさ、こういう良いものだって、ずっと箱にしまって、カビさせて!
あー勿体ない。こういうの、モノを大事にしてるって、言わないよね?」
「モノをしまうだけで、大事にしてないよね
ホンっと、モノを大事にしてない
」
「大事なことだから、3回、言いました」
「そうだ、大事なことだ!」
このこけし、『おかえりこけし』と呼ばれている。