その女の人は、僕とおなじ駅で降りた。

開閉扉が開いたとたん、折りたたみ自転車を抱え、風のように駆けていった。

たぶんあれって、鳥居みゆきのまねだったんだと思う。子どもたちはドンビキかげんに、シートに座って見ていた僕は、思わず吹き出しそうになった。電車の中で、鳥居みゆきって。わりと美人なのに、ちょっと変わった人なのかもしれない。

それにしても折りたたみ自転車につけてたべあベア・ブリックはイカしてた。

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ビートルズ好きの僕としては、これから家に帰ってさっそくネット検索しなくちゃ。





わたしは猛烈に後悔していた。

やっぱり、ウカれて自転車なんて電車に持ち込むべきじゃなかった。

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引越しを機に買った白い折りたたみ自転車。

荷物は業者に任せ、わたしはからだひとつで買ったばかりの自転車に乗って、新しい住まいへと新しい街を眺めながら走る。

そんな柄にもないロマンティズムのせいで、わたしは今、苦手な小人たちに囲まれている。

遠足なのだろうか。小さなリュックを背負った小人たちの群れは、わたしが車内に持ち込んだ自転車をベタベタさわったり、しきりに「ねぇ、なんで自転車持ってるの?」と質問攻めしてくる。

わたしは子どもを小人だと思う。オトナにはわからない、ぜんぜん違う世界で生きている理解しがたい小さな生きもの。

いつもだったらそんな事考えもしないけど、わたしはふと、小人に迎合してみようと思った。ムシしていてもしつこそうだし、引越しというフレッシュな気持ちがそうさせたのかもしれない。

開閉扉に身をあずけて車窓を眺めていた美わたしは、サッと振り返りると、髪の毛を掻き毟り、うすく顎をあげて白目をむいた。昨日テレビで見た鳥居みゆきのまねだ。小人たちはきっと、おなかを抱えて笑うはずだ。―――――が、小人たちは笑わなかった。

判で押したようにキョトン顔の小人たちの青みががった目に、「恐怖」の2文字が浮かんでいた。

「え、違うの。怖がらせるつもりじゃなくって。おもしろくない、これ?」とわたしがその場を取り繕う間もなく、小人たちは「きゃー」「わー」と絶叫し、蜘蛛の子を散らすようにいっせいに逃げ出した。

冷房で冷えた車内。温度がわたしの周りだけさらに5℃は下がった、気がした。