中国語の学び方 相原 茂 | So-Hot-Books (So-Hotな読書記録)

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書評と読書感想文の中間の読書日記。最近は中国で仕事をしているので、中国関連本とビジネス関連本が主体。

<My Opinion>


相原茂氏の著書2冊目。この本は中国語中級者にとってはかなり有益なのではないだろうか。何十年も中国語を勉強してきた日本人だからこそ言える、中国語学習の方法論が具体的に提示されている。blogにはメモしないが、最終章にあるコミュニケーション論の観点からの日中文化比較もかなり面白い。学習の参考になった箇所を下記にメモしておく。


<Memo>


●音を頭の中でころがす


he(第二声)と言った時に、さんずいの“河”という漢字を頭の中で思い浮かべていませんか?それはまずいのです。言葉ですからgou(第三声)と言ったら、ワンと鳴く犬のイメージがパッと出てこなければいけない。he(第二声) 言ったら流れている、あの河をイメージしなければいけないのです。(P12)


こういう経験は皆さんもあると思います。中国人の先生と会話して何か言われてキョトンとしていると、こういう字ですよ、と教えられて、ああそうかとなる。わかった時に頭の中に漢字がポンと出てくる。これ、おかしいでしょう。皆さん、普段に日本語を聞いていて頭の中に漢字が出てきますか?平仮名が出てきますか?要するに文字が浮かびますか?(P21)


私はよく言うんですが、「漢字が消えたら中国語も一人前です」。音を聞いて、文字を飛び越えて、即意味にゆく。そしたら中国語も一人前です。(P21)


著者の指摘と同感だ。日本語で「川」と言ったときに、私であれば子供のときに良く家族旅行した水上の川や、よく釣りにいった多摩川等が無意識に浮かんでくる。「川」という漢字そのものは全く浮かんでこない。しかし、中国語では面白いように漢字が頭の中に浮かんできてしまう。漢字をイメージせず、無意識に中国語で会話できた時、著者の言う一人前の状態になれるのだろう。



● 中国語発音よければ半ばよし


発音がいい人は中国語が達者になること、請合います。皆さんも、身の回りの誰彼を思い浮かべてみてください。例外ないでしょう。それほど発音は大事なんです。(P13)


ともかく、一度自分の中国語の発音を客観的に、突き放して聞いてみてください。日本人の発音は、当人の想像以上にあいまいでメリハリのないものになっている場合が多いのです。そして、一旦自分で気がつけば矯正は簡単です。いまからでも決して遅くありません。(P15)


これは勉強に限らず音楽でもスポーツでも共通することだが、映像や音声で自分のアウトプットを確認するということはとても効果的な訓練だ。自分が脳内で捉えている意識と実際のアウトプットには往々にして「差」が存在する。その「差」を直視することは精神的に辛いこともあるが、それだけに有用だ。


私も定期的に教科書を朗読してそれを録音し、自分で聞いて、そして最後に講師に聞いてもらうということを実践している。典型的な日本人なまりがいつまでも取れず、録音を聞くたびにがっかりするが、それが真の姿なのである。最初は心理的に負担だったが、自分の発音に聞きなれるとそれほど苦ではなくなる。発音についてはこのように地道な作業で一つ一つ克服していくほかないと思う。


中国語の標準的な音は日本人の耳には本当に美しく聞こえる。中国語に関しては発音がきれいであれば、しゃべる方も聞く方もとても幸せな気持ちになることができる。著者の指摘は的を得ていると思う。


●上級への道


・単語の内部構造に目を向ける

身につけるべきは、文法ルールではなく、「語彙力」なのです。---中略---単語を暗記することではなく、単語の内部構造、つまり語の組み立てを理解する力を身につけてほしいのです。例えば“毕业”なら「業ヲ畢ワル」ですから「動詞-目的語」という構造です。“散步”も「歩ヲ散ラス」で「動詞-目的語」構造です。“毕业”や“散步”を全体で「卒業する」「散歩する」と理解するのも大事ですが、もう一方の目でこの単語の内部構造を見極めてほしいのです。---中略---「語彙力」というのは、次のような二つの力が必要なことがわかります。


① 熟語を構成している個々の漢字の意義がわかる
② 熟語を構成しているここの漢字の意義間の関係=構造がわかる


この二つの能力を鍛えることにより、未知の単語に出会っても慌てなくなります。(P127~129)


・目に見えないリズムを会得する

「中国語 発音よければ 半ばよし」というのが入門期における私のスローガンでしたが、中級から上級にゆくにあたっても、もう一度発音やリズムの重要性を強調しておきたいと思います。但し、ここで強調したいのは、個々の発音の正しさではなく、それにもとづいた一段上の中国語のリズムやらテンポです。生きたことばとして発せられる躍動感ある中国語。そのリズム、テンポ、抑揚、ストレス、息つぎといった音声や韻律面をしっかり体で受けとめ、体得してほしいのです。不思議なもので、私たちは、ほんの一言、二言、外国人の日本を聞けば、それでその人のレベルが想像できます。あれと同じことです。個々の音は正確でも、どこか音の流れ具合が微妙に違う、リズムでしょうか、イントネーションでしょうか、速さでしょうか、音のメリハリでしょうか。目に見えない、こういう感性が中級を超えるもう一つのポイントです。(P135)


目に見えないリズムについては前述の「中国語発音よければ半ばよし」にあるとおり、ネイティブとのギャップを客観的に把握し一つ一つ差を埋めていくしか方法はない。

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