残務 | 住民票を冥界へ

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煩悩フルで解放です。

欲しいと思ったものは、一つだけだった。
20年の年月、渇望することと諦めることを繰り返しながら、やっと触れることの叶った只一つ。

見つけては、見失い、触れては、遠退き。
気づいた。
はじめから届かない。

欲しがるのは、やめた。
振り返ることも、嘆くことも、もうしない。

それでも地上に只一つ、やり残したことがある。
他の誰のためでもなく、自分のために。
きっと、最後の仕事になるのだろう。
きっと、私はやり遂げるだろう。
泣くのはその後だ。