私がまだC県I市に住んでいた時の話。小雨がしとしと降るそんな夜のこと。大学から家に帰る道が川の氾濫により通行できなくなった。友達と二人、回り道になるけれどいいか、と聞かれ、二つ返事でOKした。
林の中の舗装されていない階段をマウンテンバイクを抱えて傘を指して歩く。少し上った高台から一本道が延びていて途中に池があってその上に橋がかかっていた。しかし川の氾濫のためか橋と水面の距離がほぼ0mで水面に道があるといった感じだった。しかも池の真ん中の小島にひとつだけポツンとある街灯は切れかかっていて薄暗かった。自転車に乗って一気に通り抜けたのだが、強風と高波(?)により自転車が左の池に落ちてしまう。友達は渡りきっていたが身動きも声を出すこともできなかったという。自転車を拾おうと手を伸ばしたが沈んでいくのを目で追うのがやっとでさらには足を滑らせ左足が池に落ちた。とたんに池の中から下に引っ張る強い力が。街灯につかまって腰くらいまで引きずり混まれながら渾身の力を振り絞って地上に生還したのだが恐ろしいものを見てしまった。左足首にヒトの手。池の中から伸びる無数の白い手を。腰や肩にまとわりついてくる白い手を。自転車そっちのけで走った。声がでない、いつの間にか友達はいなくなっていて雨も晴れ、月が出ていた。池から伸びていたのは左手、白い靴下にはハッキリと左手の砂の跡が残っていた。無我夢中で30分くらい走って家に帰り落ち着いてから靴下を脱いでみると、靴下の中にもハッキリした内出血が見てとれた。これは右手の逆手。しかも両足に( ̄□ ̄;)!!
腰と肩にも手形の砂がついていた。あの時池の中から伸びた手を15年たった今でもしっかり覚えている。足をつかんだあの手を。指の付け根にあった水かき(?)を。あの池の名前はあるのだろうが知らない。通称カッパ池。興味がある人は行ってみて( ̄▽ ̄;)?

あの日の翌日、通称カッパ池にいってみたんだ。水位が減ってちゃんと橋になってた。自転車は池のほとりにあったよ。だけど前輪は電信柱に衝突した後みたいにひしゃげてハンドルが前後に曲がってた。あれは人の力じゃ無理だと思う。池にも入ってみたけど膝までないくらいで底についたし前の日腰まで引っ張られる水位は絶対ない。友達に聞いてもその事だけは話してくれないし、数日後に引っ越して電話もメールもつながらない…